【感想・ネタバレ】贖い : 下のレビュー

あらすじ

7月1日東京・杉並。小学校の校門に男児の切断された頭部が置かれていた。2日埼玉・和光。林で、中学生の少女の刺殺死体が発見された。3日愛知・名古屋。ス-パーで幼児が行方不明になる。これらの事件を追う捜査員の姿を丹念に描き、事件の背景、犯人の動機を重層的に炙り出す五十嵐ミステリーの新たな金字塔。ベストセラー『誘拐』で活躍した星野警部が、新たな相棒とともに難事件に挑む。

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Posted by ブクログ

ネタバレ

親友だと信じていたのに、いじめられたら、その人から死んでくれ、と言われたら…
3つの殺人事件は、星野の地道で粘り強い捜査で、かすかな繋がりを見つけ、それを手繰っていくことで、稲葉秋雄に行きつく。稲葉は、誰に聞いても評判のいい人間。
実は20年前に事件で亡くしていた息子は自殺だった。
いじめによる自殺
その加害者達は、同い年。加害者たちが謝罪することもなかった為、20年計画で殺人事件を練っていた。
加害者たちの子が、事件で殺められる。
その加害者たちは稲葉の息子の名前を聞いても、何も思い出さない。自分たちがいじめ、自殺に追いやった本人なのに。

加害者は覚えていないだろう。
自分の経験からも、そう思う。
でも、自分より、子がそうされた時の相手を、忘れることは絶対にない。そして、子がされたことのほうが、憎しみが湧く。
だから、同じような目にあわせてやりたい、という発想は共感できる。子どもは関係ない、とのレビューもたくさん読んだ。残念ながら、私はそう思うことはできなかった。
自業自得。

この本で、星野は刑事をしているが、前は警視庁の特殊犯罪捜査の交渉人だったらしい。前作の『誘拐』を読みたい。

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2023年05月21日

Posted by ブクログ

ネタバレ

復讐だからって人を殺していいという訳では無いけど、復讐をする側の気持ちがわかる
何の罪もない子どもが3人も殺されたのは悲しいけど、親の因果が子に報う
いじめた側が誠意を持って謝罪していれば起こらなかった殺人
父親のせいで殺された3人の子どもと、信じていた親友に裏切られて自殺に追い込まれた子どもが可哀想でならない

ゲームの中の言葉の引用ですが、
「……ただこれだけは覚えておいて。
あなたが罪を犯したとき、その責任を取るのが、あなただとは限らないということ。
思いがけないことで、あなたの犯した罪を償わされることもあるのよ。
それは、その時に悔やんでも遅いから。」

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2023年03月01日

Posted by ブクログ

ネタバレ

3つの事件が繋がった時、それぞれの刑事の捜査がクロスした時、頁をめくる手が震えそうになった。心臓がギュッとなった。稲葉という人がとても怖かったけどその逆、とても悲しい人だと思いながら読み進めました。稲葉を死刑になどさせない、死なせるなんてことには、しない。星野警部の闘いは稲葉が本当の意味で『贖う』まできっと終わらないのだろう。

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2018年09月10日

Posted by ブクログ

ネタバレ

20年という歳月について考えてみる。
その長さと重さについて考えてみた。
稲葉さんの息子さんが自殺してから、その原因となった3人にある復讐をしようと決め、機会をうかがっていた20年。
例えば、今わたしの前にいる人の人生の中から無造作に取り上げた20年という時の流れは、いったいどんな形と色をしているんだろう。

犯人もその動機もすべて分かってからも、ラストまで気が抜けなかった。
稲葉さんの苦しみと彼ら3人に対する怒りと憎しみの深さが恐ろしかった。稲葉さんは息子を救うことができなかった自分もずっと許すことができず、自分をも憎み続けてきたんだろうと思う。
心理的に残酷極まりない練りに練った復讐のための計画も、そのための下準備も、未来に自分が犯すであろう犯罪によって傷つく人たちへの贖いの積み重ねも、そのすべてが悲しい。

事件自体はとても辛いものだったが、それぞれの刑事がいい味を出していたので読んでいて本当に楽しかった。現実にもこういう刑事がいて、正義のために、そしてわたしたちの平和のために、こうしている今も頑張ってくれているのかもしれない。
きっとそうだと思う。

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2020年11月20日

Posted by ブクログ

ネタバレ

息子が、同級生のいじめにより自殺し、それを防げなかったと悔いる父親。息子の復讐のためとはいえ、20年もの間、ここまで己を律し、ストイックに生き続けることができるのだろうか。
父親にその思いを遂げさせてあげたい。読み進むうちにその思いは募るが、しかし彼の犠牲になった子供たちに罪はない。
真相が明らかになるにつれ、題名の『贖い』が心に重くのしかかってくる。
追われるもの=犯人の心のありようと共に、追うもの=刑事たちのそれぞれが持つ心の闇を描くことによって、重厚な作品となっている。
それぞれの葛藤を抱えながらも、遂に犯人に辿り着く。
星野刑事と犯人との息詰まる心理戦は、どちらに心を寄せたらいいのかと思いながらも、圧倒されるばかり。
これを機会に、星野刑事が登場する一作目を再読してみよう。

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2018年09月21日

Posted by ブクログ

ネタバレ

下巻について。
上巻までは面白かった!
下巻はちょっと苦しかった…話がどうこうではなくて、犯人とその家族、子供の身に起こったことを考えるとしんどい。最終的に行き着いた20年以上前の事実は現代的な問題ではあるけど、読者である自分ももしかしたら加害者になっていたことはなかっただろうかと、今までの自分の人生を思い返すと息苦しくなる展開。この点では辻村深月さんの「噛み合わない会話と、ある過去について」に収録されている「パッとしない子」にも同じ感情を抱きました。

個人的に、春馬山捜査班(埼玉チーム)の恋愛トークは必要だったのか疑問!ここだけ文章テイストも違うぞ。作者さんのイタズラか、編集者の工夫か?犯人を思う妻の「愛しています」の発言も、下巻で出す必要あったか?結局妻も騙されているという点では、犯人が自分1人で罪の全てを贖うという決意からのものだとは思うけど、子供が亡くなった真相を知らないでいたほうが良いのか悪いのか、私には分からなかった。

上巻は事件の登場人物が出揃って、下巻はそれぞれが交差して結末に向かう。

ちなみに私が購入した本の帯には「この男の実行力、前例なし。」と書かれてますが、それ必要か?!実行力云々の話ではなかったような…
あと一つ疑問なのは、警察が加害者側の証言台に立つことってできるんでしょうか?

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2025年01月06日

Posted by ブクログ

ネタバレ

上巻と比べて、早く読み終わったw
面白いのは間違いないんだけど、やっぱり★は3つかな?w

というのも、(エンタメすぎてシラケる最後の展開wは別として)ラストにむけての流れが(個人的に)しっくりこなかったんだと思う。
確かに、犯人は本来はまっとうな人だから、犯行を躊躇することはあるだろう。
とはいえ、直接的に関係ない被害者3人は殺してしまったわけだ。
なら、張本人である3人に対する行動は、もっと早く実行してもいいのでは?と思ってしまうのだ(もしくは、ほっぽらかしにするか)。
あれでは、まるで良識が実行を躊躇させている内に捜査の手が及んでしまったので、慌ててそれをしたようだ。
そもそも、あの場でうまく逃げられない可能性だってあったわけで、その辺りはちょっと納得がいかないw

最後まで読むと、やっぱりこれは、(いい意味で)“たんなるエンタメ小説”だと思うのだ。
なら、たんなるエンタメ小説らしく、犯人の方からアクションを起こして、派手にドンパチな展開を読みたかった気がする。

納得がいかないといえば、星野警部や鶴田の口から何度か出てきた、「人として、絶対してはいけないことをした」というのも素直にうなずけない。
確かに2人は警官だから、法に反した犯人をそう言うしかないだろう。
でも、なら、人を自殺に追い込むようないじめをすることは、「人として、絶対してはいけないこと」ではないのか?
この話は、たんなるエンタメ小説なのだ。
たんなるエンタメ小説だからこそ、3人が自分の家族や社会から軽蔑や非難され、過去の行いを悔やみながら自ら死を選ぶ、そんな胸のすく絶望を描いてもよかったんじゃないだろうか?

少なくとも自分は、そんなエンタメ小説が読みたい!(爆)

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2019年10月26日

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