あらすじ
宮部みゆき氏推薦! 衝撃の誘拐ミステリ!
静岡県警浜松中央署の日下悟警部補のもとに、少女誘拐事件発生の一報が入った。身代金の要求額は一億円。運搬役には母親が指名された。静岡県警は総力を挙げて解決に乗り出すが、混雑する《浜松まつり》会場や何台ものタクシーを駆使した犯人の策謀に翻弄され、事件は最悪の形で幕を閉じる。一億円は奪われ、少女は遺体で発見された。捜査本部を設置した静岡県警は、辣腕銀行員として恨みを買っていた父親の身辺、身代金を抱えて奔走した母親の証言、事件中に爆発炎上した車の残骸などから犯人特定へ肉薄するが――。乱歩賞作家が放つ、驚愕必至の誘拐ミステリ。
※この作品は過去に単行本として配信されていた『人さらい』 の文庫版となります。
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Posted by ブクログ
小泉孝太郎主演でドラマ化もされている「静岡県警×誘拐ミステリ」シリーズ第2弾。第1弾の『真犯人』とはまた違った趣で、誘拐事件でこんなにバリエーションを持たせられるのがすごい。捜査員たちの地道な捜査により事件が解決へと導かれるのもとても好み。
祭りの混雑と何台ものタクシーを駆使し、刑事たちの監視をすり抜け人質の母親から身代金を掠め取った犯人のトリックを暴くことに結構な紙幅が割かれているが、知らない駅名や地名が頻出し、何とも分かりづらかった。トリックが明らかになる場面は、この作品の犯人が明らかになる場面と並んでクライマックスだったのだろうけれど、期待されているであろうほどの驚きを抱くまでに理解が及ばなかったのが残念。映像化されたらもっと楽しめそう。
ただ、犯人の、深い悲しみに根ざした執念が引き起こした誘拐事件はあまりにもやるせなく、ひどく感情移入させられた。さらわれた子供の両親の業の深さを思うと、同情よりも因果応報の言葉が浮かび、重い読後感。