【感想・ネタバレ】タネが危ないのレビュー

あらすじ

手塚治虫『火の鳥』初代編集者となり、我が国で唯一、固定種タネを扱う専門店三代目主人が、日本農業を席巻するF1(一代雑種)技術が抱えるリスクを指摘、自家採種をし、伝統野菜を守り育てる大切さを訴える。

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Posted by ブクログ

ネタバレ

すっごくおもしろい本だった!
ホームセンターで売られている野菜のタネのほとんどが、そのまま育てても種が出来ないものだとは知らなかった!
大量出荷されている野菜のほとんども、雄しべが退化して種が取れないので、今農家は自家採取せずに毎年タネ屋からタネを買うのが当たり前なんだとか。
日本で流通している野菜なら遺伝子組み換え作物もないから安全、と思っていたら、知らないうちにすごく不自然なものを口にしていたんだなぁと知って驚いた。自家採取できる固定種で家庭菜園して、ホントにおいしい野菜っていうのを食べてみたくなりました。

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2012年04月30日

Posted by ブクログ

ネタバレ

男性の精子減少の原因は「タネ」にあり?

タネには「固定種」と、「F1種」がある。

固定種とは、地域で何世代にも渡って育てられ、自家採種を繰り返すことによってその土地の環境に適応するよう遺伝的に安定していった品種。昭和30~40年代ごろまで伝統的に使われていた。味がよいが、サイズや生育速度にばらつきがある。

F1種(first filial generation)とは一代雑種、または交配種とも呼ばれ、異なる性質のタネを人工的に掛け合わせて作った雑種の一代目。味は固定種より落ちるが、生育が早く、収穫後の日持ちがする。サイズの揃いがよい。

戦後から高度成長期にかけて食糧事情を改善するため、より多く、より早く、均一な作物(ばらばらのサイズだと量り売りせざるを得ず手間がかかる。均一な大きさだと一本単位で販売できる)に対するニーズが高まったため固定種からF1種へのシフトが起こった。現在世の中に流通している野菜や花の種のほとんどがF1種である。

さて、ここから本題だが、そのF1種の作り方に問題があると著者はいう。

F1種は「雑種強勢」を利用しているので、自家受粉しないようにする必要がある。昔は雄しべを一つ一つ摘み取っていたのだが、手間がかかり過ぎるため、現在では花粉を持たない「雄性不稔」のものを見つけ、それをかけあわせに使っているのだ。この雄性不稔が曲者で、人間で言ったら精子がないことに相当するのだ。

これは科学的に立証された話ではないので仮説の域は出ないのだが(本人も仮説だといっている)、潜在的リスクを意識する上で傾聴に値する話だと思う。

つまり、こういうことだ。

1940年代には精子1ccあたり1億5千万の精子がいたという。それが今、平均値は4千万以下で約4分の1に減少した。さらに、成人男性の2割が不妊症といわれるレベルの2千万以下だという。

1940年代以降、固定種に代わってF1種が市場に流通するようになった。いまでは人間が摂取する食物がほとんどF1種のものになった。F1種は雄性不稔性をもつ。雄性不稔性の食物を大量摂取することで人間の精子減少に影響を与えているのではないか。

これに対する遺伝子組み換え産業や分子生物学者のいう反論はこうだ。

「人間が食べたものはすべて体の中で胃から小腸へ行って、低分子のアミノ酸に分解され、それが血管を通じ全身の細胞に再分配されて高分子のたんぱく質に組み立てられる。だから、遺伝子組み換えされた植物を食べても、消化吸収されて血液を通って全細胞に向かう。遺伝子もみんな高分子のたんぱく質だから、低分子のアミノ酸に分解されてしまえば消滅してしまう。低分子のアミノ酸は細胞の中のDNAやRNAで高分子のたんぱく質に組み立てられる。だから遺伝子組み換えされた野菜を食べても、人間の細胞や遺伝子が異常になるようなことはない。」

これはDNA研究の第一人者、フランシス・クリックのセントラルドグマで分子生物学の基本原則である。高分子の遺伝子やたんぱく質を食べても、それがそのまま人間の体や動物に作用するわけがないという考え方である。

ところが、その節はBSE(狂牛病)の発生によって崩れた。BSEはプリオンと呼ばれるたんぱく質で構成された物質が原因という見方が主流になっている。アミノ酸にまで分解されるのであれば、狂牛病の牛肉を食べてもまったく害はないはずだが、現実に人間が感染してしまった。もちろん、BSEがどのような経緯で人間に感染したのか諸説さまざまあるが、遺伝子の動き、人間が吸収する食べ物がもたらす影響はなお分からないことだらけなのである。


だからといって、安全な固定種だけにせよ、といっているわけでもない。固定種だけでは膨大な人口を抱える人類の食料需給を満たすことはできないからだ。著者はせめて自家菜園くらいは固定種をつかったらどうかと提案している。F1種の内在しているリスクを知った上で、これからの「タネ」のあり方を考える必要があるのだろうと思う。

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2012年09月23日

Posted by ブクログ

ネタバレ

つい最近、有機農法というものの実態の一つには、字面から直感するものだけではなく、法律のスキマをつくようなものがあると知った。農薬的な働きをする薬剤を使用しているが、その薬剤は農薬として認定されていないので無農薬農法、みたいな。

『菌類が世界を救う』によれば、植物は菌類と相互依存の関係にあり、なかには先行投資ともいえる菌類の奉仕によって成長する植物もあるという。生命の本能的利己主義とは相容れない観測結果について、その意味するところを完全には把握できていないという。
遺伝子組換え操作は、植物と菌類の共生に似たようなやり方で行うと、本書からは読めた。F1と遺伝子組み換えの差異はどこにあるのだろう。

世界には問題が多すぎて、考えるのも嫌になる。だとしても、知ることは面白い。
本書に対する星4の評価は、本書の内容を正しく咀嚼できない読み手の知識不足に起因する。誤解、読み間違いもきっとある。

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2022年09月19日

Posted by ブクログ

ネタバレ

タイトルの通り、タネは現在危ない状態にある。
不自然な交配をして作られるF1種、遺伝子組換をされた種。
昔から受け継がれている在来種(固定種)の存在が、そういったものに脅かされているといっても過言ではない。
利便性や利益だけのために、「食」すらないがしろにしていいのだろうか。
ある種苗業者は、商品としてF1種を取り扱っているが、自分や家族の分は、固定種を栽培して食べているそうだ。
このことからしてもF1種は恐ろしいものだと考えるべきである。
F1種とは、一代交配種のことで一世代限りであり、雄性不稔を利用して作られたりしている。
雄性不稔というのは、「植物の葯や雄しべが退化し、花粉が機能的に不完全になること」であり、「動物に当てはめれば、男性原因の不妊症」だという。
そのようなものが人間に良い影響を与える訳がない。
人の不妊症の原因になっている可能性だってある。
また、F1種がどのように作られているかを知るにつけ愕然とした。
遺伝子組換種については、現在日本で出回っていないがその日が近いうちに来るかもしれない著者は警鐘を鳴らしている。

F1種というものがどういうものなのか、とてもよくわかった。
ただ、前半部分の著者の自慢のような、本題から少し逸れた話題が余計だった。

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2013年01月29日

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