あらすじ
12世紀初頭に誕生した「テンプル騎士団」は、もともとエルサレム巡礼に向かう人々の保護のために設立された。しかしその後、軍事力、政治力、経済力すべてを持ち合わせた超国家組織に変貌を遂げる。彼らは、後世に影響を与えた数々の画期的な制度(管区、支部といった巨大ネットワークを張り巡らせる組織作り、指揮命令系統の明確な自前の常備軍、銀行業の始まりともいわれる財務管理システムなど)を形成した。西洋歴史小説の第一人者が、その成立過程から悲劇的結末までの200年にわたる興亡を鮮やかに描き出す。 【目次】はじめに/第一部 テンプル騎士団事件――前編/第二部 テンプル騎士団とは何か/第三部 テンプル騎士団事件――後編/おわりに/参考文献
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Posted by ブクログ
歴史への興味に加えて、ゲームのヒーローとして登場する「聖騎士」のような存在として騎士修道会に関心があった。ましてや著者は『傭兵ピエール』をはじめとする西洋歴史小説の名手である佐藤賢一とあっては読まないわけにはいかない。
本書はテンプル騎士団がフランス王の手により逮捕され、教皇により解散させられた事件から始まる。建物の壮麗さから逮捕事件へと至り、歴史の謎を解くミステリー仕立ての物語は読者をテンプル騎士団への興味を掻き立てられる。
テンプル騎士団は十字軍国家における聖地巡礼者の道を警備する目的でわずか12人で発足した。その後、イスラム教徒との戦いを期待された彼らは、土地の寄付を受けて勢力を拡大し、軍事・農業・商業・運輸・銀行業を手がける超国家的な国際機関へと成長した。著者は「中世の国連」と例えていたが、自前の常備軍を持ち、ついには十字軍戦費に充てる徴税や一国の財政を請け負ったというのだから、教会や国王ですら従わせる力を備えていたと言っていい。十字軍の終焉と共にテンプル騎士団は存在意義を失った。その膨大な資産は中央集権を進めるフランス王の標的となった。
修道士でありながら戦士である矛盾を抱えた存在。加えて東西を駆け回り王侯貴族や教会をお得意様とする中世一の大銀行であり物流業者。知れば知るほど面白そうではないか。今後も類書を読んでいきたい。
Posted by ブクログ
聖地にやってくる巡礼を守る騎士たちが大きな組織になっていく過程が面白い。人間だけでなく荷物や金も安心して預けらる組織って当時としては画期的だろうな~。戦う修道士的な騎士団なので戦いかたが無謀だったりイメージ通りな部分もあったり面白かった。フィリップ美男王にちょっと興味が出たなー。フランスの王様って割りと面白い人が多いな~。
Posted by ブクログ
神殿騎士のたぐいはファンタジーの中でも時々見かける職種(?)だが、十字軍で活躍したことをかろうじて知っているくらいでその起こりや消滅に関しては何も知らなかった。帯の「軍事、経済、政治。すべてを掌握した最強の組織。」の言葉に惹かれて購入した。
読み始める前は帯の文言は過大だろうと思っていたが、特に経済的な影響力に関しては目を見張る物があった。
気候すらも大きく異なる異教徒、異文明の地に拠点を維持し戦い続けるために発展した、後方(ヨーロッパの領土)での支援・輸送体制は中世の枠を超えており、近代的である。この輸送販売網の構築には、これも中世を超えた人材登用が効いているのかもしれない。封建制度とは異なる各支部間の強いつながりも面白い。
ヨーロッパの広い地域でネットワークを張り、旧来の領地とは異なる思想で運営された組織は魅力的だし、それが本当にあっけなく崩壊するところやその財産が大航海時代へと続いていくのも興味深かった。