あらすじ
医者「なぜ患者さんは治療方針を決められないのか」
患者「なぜお医者さんは不安な気持ちをわかってくれないのか」
人間心理のクセがわかれば、溝は埋められる!
「ここまでやって来たのだから続けたい」
「まだ大丈夫だからこのままでいい」
「『がんが消えた』という広告があった」
「本人は延命治療を拒否しているが、家族としては延命治療をしてほしい」
「一度始めた人工呼吸管理はやめられない」
といった診療現場での会話例から、行動経済学的に患者とその家族、医療者の意思決定を分析。
医者と患者双方がよりよい意思決定をするうえで役立つ一冊!
シェアード・ディシジョン・メーキングに欠かせない必読の書。
「行動経済学では、人間の意思決定には、合理的な意思決定から系統的に逸脱する傾向、すなわちバイアスが存在すると想定している。そのため、同じ情報であっても、その表現の仕方次第で私たちの意思決定が違ってくることが知られている。医療者がそうした患者の意思決定のバイアスを知っていたならば、患者により合理的な意思決定をうまくさせることができるようになる。また、医療者自身にも様々な意思決定におけるバイアスがある。そうしたバイアスから逃れて、できるだけ合理的な意思決定ができるようにしたい。患者も行動経済学を知ることで、自分自身でよりよい意思決定ができるようになるだろう。」――「はじめに」より
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Posted by ブクログ
「行動経済学」とのタイトルではあるが、患者やその家族との医師の関わり方について、指針を示すことに紙面の多くを割いている。
患者とのコミュニケーション技術に関するノウハウを書き並べるのではなく、過去の論文や研究に基づいた書き方には非常に説得力があった。
盲目的・マニュアル的に患者及びその家族の診療にあたってはいけない、と再認識させられる内容であった。
特に終末期は、しばしば合理的とは思えない判断をしてしまうことは普通であり、むしろ当たり前かもしれない。
患者は合理的な判断をいつでも出来るわけではない、ということは全ての医療従事者が知っておくべきことであり、その点において行動経済学は医療(治療方針決定や予防行動など)との親和性は高いと言える。
そして、患者の判断は常に合理的ではないという事実は、ともすれば医師のパターナリズムに逆戻りする危険性を示しており、活用も悪用もできると感じた。
コミュニケーションがうまくいかなかった場合に、どこに原因があったのかをチェックする意味でも、この本に取り上げられている行動経済学的特性は、頭に入れておいて損はない。
大事なのは、そういった特性を誰しも持っているのだと、知ることなのだろう。
ヒューリスティックスをうまく使えるのはソーシャルワーカーや看護師の方かもしれない、と言う説は、本当にそうだよなと思ったし、尚更コメディカルとの連携が必要だと感じた。
公衆衛生を整備するためには、内容云々よりも、啓発をいかにうまくやるかにかかっていると感じた。
やるのは、政府か?インフルエンサーか?企業か?
栄養士や看護師、医療職は対個人のアプローチはできるが、全体的な促進には、大規模な取り組み方が必要で、真に健康を目指すのであれば、所持しているコンテンツだけでなく、「伝える力」も必要であろう。
その点において、メディアはいい意味でも悪い意味でも強大で、協力していきたい存在だ。
人間の「あるある」を分析し、定義しているのが行動経済学なのだろうか。「ライフハック」を「ナッジ」と呼び、学問的に捉えている。
GRID(やりぬく力)というのは、行動経済学的に大多数の人が持っている現在バイアスを克服してコミットメントするためのテクニックだ。であれば、裏技的な本は売れるに決まっている。
参照点を変えることで、見方が変わる、と知っていれば、今の自分の判断を、参照点を変えて捉え直す過程を追加し、合理性を上げられるかもしれない。
全体的に、再読したい書籍だった。
Posted by ブクログ
【内容】
医師と患者の診断。
その食い違いをバイアスを通して説明立ててくれる。
バイアスに対抗するため、ナッジを使った行動変容を促す。
【感想】
現場で起きているバイアスは考えていたよりも多いし、重大だ。
・死に直面する医療の対応
・癌に対するチョイスの返答
普段味わうことのない事態に対面したとき自分ならどのように対応すべきか。
考えさせられる。
「医療に明確な答えはない」
まさにその通りであり、それだからこそ最善を模索すべきである。
【読んでほしい人】
患者を診る医師にはもちろん読んでおいてほしい。
もちろん、患者になる可能性のある私達も読むべきである。
医療従事者が読む場合は★4くらいの評価です。