あらすじ
16世紀、スペイン王権との戦いから「低地諸州」(ネーデルランデン)北部のオランダは独立する。商機を求めてアジアや新大陸へ進出。いわゆる大航海時代に新教徒中心の共和国は、世界でも最有力の国家となった。
だが、四次にわたる英蘭戦争、フランス革命の余波により没落し、併合の憂き目に遭う。ナポレオン失脚後は王国として復活し、自由主義的な改革を実践していく。
20世紀以降は、寛容を貴ぶ先進国として異彩を放つ偉大な「小国」となった。
本書は、大航海時代から現代まで、人物を中心に政治、経済、絵画、日本との交流などを描く。
目 次
第1章 反スペインと低地諸州の結集―16世紀後半
第2章 共和国の黄金時代―17世紀
第3章 英仏との戦争、国制の変転―17世紀後半~19世紀初頭
第4章 オランダ人の海外進出と日本
第5章 ナポレオン失脚後の王国成立―19世紀前半
第6章 母と娘、二つの世界大戦―19世紀後半~1945年
第7章 オランダ再生へ―1945年~21世紀
以上
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
17〜18世紀前半までの勢いが予想以上にすごいものだった。今のオランダは小国というイメージだが、この時代においては軍事的にも経済的にも世界の覇権を握っていた。
現代においてもオランダについても興味深い点がいくつか挙げられている。戦後オランダは寛容な国として移民受け入れに積極的だった。しかし近年では否定的な風潮に変わっている。
(後で追記、、
Posted by ブクログ
いやぁ~真面目な著者ですねぇ。
新書というスタイルは専門家が学術書から離れ、一般人を対象にするのだから、少しズッコケて書くのは暗黙のルール。
この著者もできるだけそうするよう努めているのだが、真面目な本質は変えられない。
実に本格的なオランダの歴史書になっている。
日本人がこれだけ他国の歴史に詳しいって、面白いですね。
多分どのオランダ人より詳しいかも知れない。
本人も日本史に関しては、これほど詳しくないんじゃないかと思わされる。
オランダ史のほとんどが網羅されているといっていいでしょう。
ですから、読みにくさは確かにあります。
ぼく自身は、(江戸時代と現代の)オランダ人の国民性の秘密はどこにあるのだろうという点に興味を持ってこの本を選んだつもりですが、そういう点には殆ど触れられていません。
しかし、その国の国民性を理解するのに、その国の辿ってきた歴史を知ることは実は基本中の基本だと気付かされます。
すでに予断を持っている誰かが書いた本を通じてその国を理解するよりも、まったく手垢の付かない状態で提供さえるほうが却って、近道なのじゃないでしょうか。
前回読んだ司馬遼太郎の紀行文も面白かったけれど、そのときに感じたオランダ人気質の元となる歴史的バックグラウンドをこの本によって理解が進んだと思うのです。
Posted by ブクログ
16世紀からのオランダの歴史をまとめた1冊。中公新書の歴史シリーズは3冊目だが、かなり面白く読めた。各国史を読んでいくと他国との違いや国民性までわかってとても興味深い。
オランダ史から私が得た印象は「狡賢い」である。正義であるようで、一方植民地では残忍な統治を行なったり、かと思えばしなやかに問題を解決したりもする。とても好きな国だ。
文章もかなり読みやすい。政治だけでなく文化や日蘭関係など読者の興味を持ちやすいトピックも漏らさず書いてくれている。おすすめの1冊だ。
Posted by ブクログ
ハプスブルク家のスペイン王権は、その狂気をも感じる対応で異端を取り締まりました。スペイン軍に脅威を感じたオランダのウィレムは、フランスを主としたヨーロッパの新しい思想(宗派)もあり、このような強硬路線に対する中で独立という道へとたどり着きます。この独立からナポレオンやナチスドイツの占領を経て、独自の生き残りを模索していくオランダ。大国に翻弄された歴史は最終的に王国という選択にたどり着きます。その歴史を物語として読むことで、なぜ今の形に落ち着いたのかを知ることができると思います。オランダといえば、江戸時代中心に日本とも関係の深い国というイメージがあります。その関わりについても書かれていて面白く読ませていただきました。
彼の国の思想。それがどのような経験を通して培われていったのか。小さな国かと思いきや、登場してくる歴史的な人物は、私たちも聞いたことのある人がたくさん居り、内容の濃さを感じました。
Posted by ブクログ
中公新書の物語歴史シリーズの一冊。寛容の国と言われるオランダのスペインからの独立から現代までをまとめた一冊。ちょうど宗教改革期に独立戦争があり、各宗派が妥協しながら国を作り、かつ新教派が主導権をとったために宗教の自由を重んじるのが立脚点にあった。とはいえあくまで白人キリスト教の枠組みのなかでの自由であるために、奴隷貿易もするし、インドネシアの植民地支配も第二次大戦後まで執着する。それは国土が狭く海外への進出が不可欠であったことも理由だった。必要にせまられ、学びつつ進化して現在の寛容さ、大人の国に成熟していった姿がわかりやすい。