あらすじ
新海監督が映画の準備稿に書いた「タカキの手紙」も初収録! もの悲しく美しい新海ワールドを映画とは異なる視点で描いたもうひとつの『秒速5センチメートル』
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Posted by ブクログ
7月8日頃に読み始め、結構あっという間に読み終えた。改行が多いせいもあるが、分かりやすいからである。
映画「秒速5センチメートル」は監督自身によるノベライズがある。だが、これは別人によるノベライズ。まあ、「雲の向こう、約束の場所」をノベライズした人だから、ある程度安心感はあるが。
内容は、これまた別の角度からの「秒速5センチメートル」である、ということだ。「桜花抄」は明里の視点から語られ、「コスモナウト」は貴樹の視点から語られ、「秒速5センチメートル」は明里と貴樹の双方からの視点で語られる。その意味では整合性が取れている。「桜花抄」を明里の視点で描くとは、思い切ったことをしたなぁ。そのおかげで、二人のキスの意味が最もよくわかった。
「コスモナウト」では貴樹の視点から語られる。これも映画とは正反対のものだ。おかげで花苗の思いが閉ざされる経緯がよくわかる。
そして「秒速5センチメートル」はようやくこの時期での明里の生活や思いがよく分かるようになっている。彼女がどのようにして結婚へと導かれていくか、その間に貴樹のことをどのように思っているか、そして二人の踏切上での擦れ違いもよく分かってくる。
そうした意味では、原作の映画や原作者によるノベライズをさらに補完しているものだと言えよう。分からないことが満たされるという意味では満足のいく出来だ。
でも、そもそもの貴樹と明里の別れと再会、その理不尽さともどかしさは相変わらずである。だからこそ、この物語は切なく心に残るのだろう。