【感想・ネタバレ】5分後に起こる恐怖 世にも奇妙なストーリー 闇巣喰う町のレビュー

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ネタバレ

Posted by ブクログ 2021年01月24日

どの町にも存在する暗がり。校舎の中に、家の中に、神社の中に。これは、そんな闇から生まれた恐怖の物語。 物語達は人々を飲み込み、陥れた、絶望の淵へと引きずり込む。気付いときには、もう手遅れなのだ。
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世にも奇妙なストーリー、第三弾。第一弾、第二弾は特殊な環境に置かれる町そのものにスポットを当て...続きを読むた作品だったが、この度から特定の町で起こった出来事という縛りがなくなっていた。そのためなのか、広義での怖い話、となっており、様々なパターンの怖い話が詰め込まれていて非常に楽しめた。
また、怖い話ばかりではなく、不思議な話であったり、読んでいて切なくなるような話もいくつか見られた。 お気に入りの話は「置き土産」「ラブレター」「キミヒロくん」 「置き土産」は怖さと気持ち悪さが同居した作品だった。近所の人が引っ越す際、語り手の家族に破格で一軒家を譲ってくれる。一軒家に引っ越し、家を整理していると階段下にある収納スペースの奥から緑色の大きな甕が出てくる。厳重に蓋がされているその隙間から、酒のような甘い香りが漂ってくるが、気味が悪いので開けようという気にはならない。父親は中身が気になる様子だが、家を譲ってくれた人の忘れ物のようなので、勝手には触れない。対処に困るので、先方に電話し連絡を試みるが、なんど電話しても繋がることはなかった。その内、父親の不審な行動が目立ち始めた。父親が何をしているのか察しはついているのだが、追及はできない。もやもやした思いを抱えつつ日々を過ごしていると、ニュースで甕の中身を間接的に知ることとなった。 真相を知って、まずこみ上げたのが吐き気だった。甕に封印を施して、怨霊が外に出ないようにしていたが、何かのはずみで封印が解かれ、一家に災厄をもたらす話かと思ったが、もっと厭な話だった。甕の中身が何かに関して詳細は省くが、どうしてそんなことになったのだろう。新しい会社が大当たりしたので引っ越したというこの家の元の持ち主が行った事業というのはその甕の中身を世に売り出して大儲けしたのだろうか。 それにしても、一つだけこの家にその甕を置いて出て行ったのは何故?こんな大事なものを忘れていくとは思えないし、そうなれば、故意か。だとしたら、元の持ち主は何を考えて、誰に対してこれを残したのだろう。この甕の中身に憑りつかれたようになっている父親は、同じものを作り出そうとしている様子。ある意味呪われたような状態なのかもしれない。「ラブレター」は読み始めからもう、嫌悪感が募りまくる話だった。幽霊が怖いではなく、人間が怖い話。一人の男性を好きになった女性が綴った、愛の手紙。はじめの数行は普通のラブレターという風だったが、徐々に書き手の異様さが顔を覗かせ始める。男性の気持ちを一度も確かめることなく、『運命の相手』、『私たちは両想い』などという言葉を多用し始め、あなたが何も言わなくても私は分かっている、と独善的な愛を語る。世の中にはストーカーといって一方的に相手の事を調べて、愉悦に浸る人間がいるけど、とても信じられない!と憤慨する一方で、自分独自のルールで私は違うと言い切る。自分がやっている事が社会から見てどうなのかという認識と、自分が現状どんな人間なのかという認識が全く正しく行われておらず辟易。半分ぐらい読んだあたりでおなかが一杯になった。読めば読むほど嫌悪が嫌悪を呼ぶ話だったが、頑張って読み進めていくと、最後の悲惨な出来事に絶句した。運が悪かったという言葉では補いきれないほど最悪の出来事だった。でも、こういうことは現実に起こりそうで、そこも非常に怖かった。「キミヒロくん」は自己責任系の怖い話。不幸の手紙のような要素もあり怖かった。小説家を志す語り手は、フリーの編集者と出会い、出版社に売り込んでもらうための原稿をいくつか書き上げる。しかし、一切の妥協を許さない厳しい編集者は優しい言葉ではあるが、もう少しヒットするような話を書くようにと暗に示してくる。一生懸命ネタを考えはするのだが、なかなかいい案が浮かばない。困窮した語り手は、兄に何か面白い話はないかと打診した。すると、今兄が働いている美容院に急に女の子が入ってきて、柳下という従業員に手紙を渡し去っていった。突然の出来事に思わず受け取ってしまった手紙だが、初対面で手紙を渡していくその様に気味の悪さを覚えた柳下はその手紙を破棄する様に兄に伝える。手紙の内容が気になった兄は破棄する前に中身を盗み見てみると、どうやら不幸の手紙の類のようだ。時代錯誤のような手紙に白け、特に何もすることもなく手紙を破棄した。その時は、変な人間の単なるいたずらだと歯牙にもかけなった語り手とその兄だったが、その後その手紙の所為としか思えない出来事が起こる。 とても不気味な雰囲気をまとった話だった。突如もたらされた不幸の手紙の存在自体も気味が悪く、そしてその手紙の文面の通り兄が呪われてしまったのも怖い。だが、それ以上に語り手のスマホに留守電として残されていた兄からのメッセージが恐ろしい。目に見えぬ何かに迫られ恐慌状態に陥る兄。電話の向こうで錯乱し、悲鳴を上げ何とか逃れようと足掻く兄の声とは別に、ひたすら「キミヒロくん」と囁く何百、何千という声、声、声。一つ一つの囁きは小さいが、幾重にも重なり耳元で虫が這いまわっているかのようにざわつく。その様を想像しただけで鳥肌が立つ。「キミヒロくん」の正体が全く分からないだけにいろいろな想像をして、余計ゾッとする。 オチも自己責任系によくある展開だが、一部信じる人が出てきそう。 今回は取り上げなかったが、「運命の像」という話もなかなかおすすめ。こちらはラストが秀逸だと思う。 どの話もサクサクと読めるが、しっかり怖い。ホラーを気軽に読みたい人におすすめの一冊。

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