あらすじ
ときどき、こんな人がいるのです。山に入ったまま、帰って来られなくなってしまった人が──。仕事も家族も失い、絶望のうちに山を彷徨う男が見た恐ろしい幻影。少女の頃に恋した少年を山で失った女の、凄絶な復讐。山で見たおぞましい光景が狂わせた、幼なじみ三人の運命。死者の姿が見える男女の、不思議な出会い。闇と光、生と死、恐怖と陶酔が混じり合う、四つの幻想的な物語。
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Posted by ブクログ
恐怖譚を集めた小説だけど、
読んでいる間感じるのは恐怖より「美しさ」のほうが
圧倒的に多かった。
女性の足首の白さ、飛び立つ蝶の眩さ、
全てが目の前に浮かび上がるような鮮明さと
鳥肌が立つような妖艶さを持ってこのお話の世界を構築していた。
Posted by ブクログ
ときどき、こんな人がいるのです。
山に入ったまま、帰ってこられなくなってしまった人が。
これはとてもすき。
自然って癒しとか優しいだけではない。不気味でおそろしい場所でもある。だけどその自然をただ忌避するのではなく、自然が畏敬の対象であることを改めて感じさせてくれる幻想的なはなし。
一番すきだったのは「四」。
そこでの朝の光についての文章がなるほどと思った。
わたしはそれまで朝の光と聞くと元気さだとか温かさを思い浮かべていたけれど、ここでは刺すような光だと表現されていた。それを自分で常に感じるほど山を近い存在として感じていたわけではなかったけど、なんとなくわかる。
不気味だけど美しい本だと思います。ぞわぞわする。
自分は現実と夢の間をみたことがない?
Posted by ブクログ
高知の山奥に泊まったときに、旅の供として選んだ。山にまつわる恐ろしい話は私自身も聞いたことがある。すべてを包み込むような優しさと、すべてを呑み込んでしまうような恐ろしさで、山は人を狂わせる。。。おもしろかった。
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「山へ還りなさい」
山での死にまつわるホラー?
山にはやっぱり、何かが棲んでる。
じんわりとくる恐怖に包まれる。
昼間なのに、夜の世界。
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職場の不祥事の責任を負わされて辞職し、妻にも子供にも愛想をつかされてしまった男。
故郷からの一本の電話を機に、幼い頃の約束を果たすためにふるさとに向かった主婦。
自殺した友人の葬儀のために田舎に戻った青年。
死者が見えるという不思議な能力を持ち、彼らに「山に還りなさい」と諭して、いわば成仏させることを使命としている若い女性。
(解説より)
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最初、苦手な感じかも……と思いつつ読んでたら、面白かった。
この四つの話を最後にまとめる話も面白かったし……
とくに、三と四の話が好きだな。
Posted by ブクログ
あさのあつこさんの本は今まで読んだことなかったんですが、
ホラーっぽいので店頭で手にとりました。
この年でバリバリの青春ものを取るのはなんだか気が引けてしまって。
血肉が飛び散る等の表現があるので、
好き嫌いが分かれると思いますが、
私は大丈夫でした。
全体に何とも言えない薄気味悪さがあって、好きです。
しかもその雰囲気に無理やりさがなく、自然なところがさすがだと思いました。
Posted by ブクログ
1話目はよくわからなかった。山月記の李徴みたいな話。
2話目、3話目は過去に自分が犯した過ちを大人になってから思い出す話。
別の短編のようで繋がりがあるところが良かった。
Posted by ブクログ
この本を読んだら、なんとなく緑繁る山には行きたくなくなってしまう。そんな妖しさを秘めた4つの物語を収録。
物語の中には高校時代に習った中島敦の『山月記』を彷彿とさせる場面や種田山頭火の「分け入っても 分け入っても 山の中」という俳句が頭をよぎるものがある。
『バッテリー』や『ランナー』など青春小説のイメージが強い作者の別の魅力が垣間見られる作品。
Posted by ブクログ
話がつながって最後にネタ明かしがあるのかと思いきや、結局よくわからず少し残念。ただただ山が人を狂わせた、というだけなのか。
1.蜥蜴の尻尾切りで長年勤めた銀行を首になり、家族をも失った男が深い恨みと絶望を抱えながら山に迷い込むと、不思議な舞を踊る女たちの集団に出会う。気が付くと男は、その中の一人の女に看病されているのだが、女の様子も、至る所から蛇が這い出てくる屋敷の様子もなんだか変。男は牛の頭を食らい、女を食らい・・・。
2.小学校の時に恋心を抱いていた少年が自分のせいで山に取り込まれて帰ってこれなくなってしまった。時が経ち、小学生の娘を持つ彼女は、未だに山から出られない少年からの電話を受ける。現在の生活の大切さを冷静に見つめる一方で、しごく当たり前に復讐を成し遂げる。
3.仲の良い3人の少年グループ。ゲーム感覚で山で行方不明になった老人を探しに出かけた三人は、縊死した老人、黄色い蝶の幻影に生涯悩まされ続けることとなる。しかし、一番恐ろしいのは・・・。
4.死んだ人が見える少女。幼い頃から、そのことは人に言わないように、そして、普通にしているようにときつく言い含められている。部屋の隅に座る縊死した叔父。彼に鏡を見せると・・・。
そして彼女は街で自分と同じ能力を持った軽薄そうな男に出会う。二人は死んだことに気づかない者を山に返してまわるのだが・・・。
終話 この物語の”作者”のつぶやき。
終話を読んだとき、ああ、皆川博子っぽいなーと思って久しぶりに読みたくなった。
それにしても、人は死んだら山に帰るのだろうか?山というもの自体にあまり馴染みがない私としては、なぜみんながみんなそんな恐ろしい場所へ帰らねばならないのだろう、という違和感。
Posted by ブクログ
山にまつわる四篇のストーリー。
山に畏敬とも畏怖ともわからない境界があやふやな異界と捉えたもの。
怖いと云うよりエロかった1話から始まるのが少しとっかかり辛いけれど。
シックスセンス的な叙述トリックミステリは面白かった。
閉鎖空間に色々な想いを巡らせるのは楽しいものだ。
Posted by ブクログ
「山」を神秘的で畏敬な存在と捉えた四話の怪綺談。不思議な怖さがありますね。一話目は、繰り返される踊りのフレーズが印象的でした。「左手がひょい 横に流れて 斜めに下がる 右手を翳して」これだけで不気味な感じですよね。背筋がぞぉ~としてきます。気に入ったのは四話目ですね。哀しい話なのに結末に心が温まります。死者を山に還す責を負っていた久美子さん、良かったですよね。
Posted by ブクログ
青春小説の名手であるあさのあつこさんが描く山を舞台にしたホラー。
私の妻の実家が、まさに物語の舞台のような山奥にあり、夜に煙草を吸うため外に出ると、漆黒の闇にそびえる姿と表現不可能な音に、何度となく恐い思いをした。
生命の源は海にあるというが、死者が還る場所は山なのかもしれない。
Posted by ブクログ
怪しくって夏っぽい。4つの短編で構成されているがどれも奇妙で妖しい。昔から人が山になんとなく畏怖の念を抱く感覚をうまく捉えて文章にしているかんじ。
11/06/30 20:26
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Posted by ブクログ
トレッキングとか流行っているけど、『山』、ってそういうもんじゃないって、しみじみ感じる。子供の頃よく感じていた闇への恐怖に近いかんじかな。山も同様に恐怖の対象。おもしろかった!
Posted by ブクログ
あさのあつこは『バッテリー』シリーズを夢中で読んで好きになりました。その後、『The MANZAI』とか『カールズブルー』とか読んで、気に入っております。
今回は初めてホラーを読みました。
これ、面白かったです。
『バッテリー』の舞台になったような田舎の土地で、緑に喰われそうな山の森でのホラーです。
主人公が、日常からいつの間にかホラーの世界に入ってしまうところが、凄く良いかんじです。
そこに、廃村になるような村の寂れたかんじが背景に良く顕れていて、物語に入り込めました。
最近この人もいろいろなジャンルを書くようになって、出す作品も増えてきております。新しい作品を見つけるのがかなり楽しみです。
今後も期待!