あらすじ
【第28回小説すばる新人賞受賞作】「お前絶対ぶっ殺すからな!」女子高生・小峰りなは、夜道で背中を切られながらも、逃げる人影に叫んだ。退院後、りなは犯人を探すが、糸口は「ラメルノエリキサ」という犯人が残した謎の言葉のみ。そんな中、新たな通り魔事件が起こる。二つの事件を結ぶのはりなの元カレで!? 完璧な母親に苛立ち、犯人への復讐に異常なまでの執念を燃やす少女が疾走する青春小説。
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Posted by ブクログ
16歳の女子高生・小峰りなのモットーは、どんな些細な出来事でも自分にとって不愉快であれば、絶対やり返すということ。
付いたあだ名は『復讐の申し子』
そう、彼女は復讐に取り憑かれているのだ。
ある日、りなを襲う通り魔事件が発生。
何者かが、夜道を歩く彼女を背後から切り付けたのだ。
りなは犯人を追いかけるも
激しい痛みと怒りで意識が混濁し、逃げられてしまう。
犯人が残した唯一の手掛かりは
『ラメルノエリキサ』という謎の言葉。
怒りに燃えるりなは、退院後、自らの手で犯人を捕まえ復讐するため、独自の捜査を始める。
そして、彼女がたどり着いた事件の真相とは…。
第28回小説すばる新人賞受賞の、痛快青春ミステリー。
いやぁ~、面白かった!
一人称で語られる自らのルールに従い生きる主人公の物語といえばハードボイルド小説だが
あとがきにもあるようにこの作品も
まさに女子高生ハードボイルドと呼ぶべき痛快さで、
主人公、小峰りなの魅力で溢れている。
ユーモラスでリズミカルな文章、スピーディーに転がる物語展開、
誰にでも必ず復讐するという
過激で、不謹慎極まりないストーリー。
主人公の小峰りなも攻撃的かつ身勝手で
普通なら不快になっても仕方ないキャラなのだけれど、
いやはや、コレが面白いし魅力的なんだから仕方ない(笑)
(宮部みゆきが絶賛したのも確かに頷ける)
彼女のモットーに共感できるかどうかはともかく、
いつか復讐するその日に向かって
わきめもふらず猪突猛進する彼女の姿にどんどん惹かれていく。
完璧な母へのコンプレックスから
完璧な母の作る完璧な家族をぶち壊したいという欲求を密かに抱くりな。
完璧な母であるための装飾品としてしか娘を捉えられない、
本気で娘を愛せない母親。
そして、妹であるりなの復讐癖をなんとか止めさせようと奮闘する完璧な姉。
この家族三人の関係がどうにも切なく、
特に大好きな姉に本心を言えずに
一人傷ついていくりなの葛藤は、
思春期だからこそのアンビバレンツな感情がひしめき合い、
はるか昔に思春期を経験した僕自身も激しく共感してしまった。
そんなこんなで、いろんなことをぐるぐると思い悩む
実はナイーヴなりななのだけど、
ひとつ特筆すべきことがある。
彼女は、どんな時も決して暗くはならないし、
自己憐憫に陥ったりはしないのだ。
大好きな姉に嫌われたと感じ、心の動揺が隠せない時も、
私は私が好きだから自分を大事にするんだと、
あくまでも、自分を真っ直ぐに肯定していこうとする。
この心根に僕は激しく惹かれたし、
スゴい女の子だなと感動すら覚えた。
自らのルールに従い、一直線に進む
りなだが、
作者の渡辺 優は思春期の少女らしい弱さや脆さや寂しさや
心の揺らぎをすっ飛ばすことなく繊細に描いているので
ミステリーというより、青春ストーリーとして秀逸だし、
とんでもないストーリーの中に
一本筋が通っているりながいて、
傍若無人な彼女が
ときおり見せる『弱さ』にこそ、
読む者はどんどん惹かれていくのだろう。
懐かしの北欧バンド、Pineforest Crunchの『Barbie』をBGMに描かれるクライマックスは
実にエモーショナルで、
青春の残像、恋の残り香が胸を刺し、
何度も読み返したいほど、切なく僕の胸を撃ち抜いた。
周りになんと言われようとも
好きなことを好きと言えたり、
自分自身を肯定できるということは
何よりカッコいいってことを
小峰りなは僕に改めて教えてくれた。
『悲しみよこんにちは』
彼女がそう言える日が来ることを、
いい女になった彼女にまたいつか会える日を、
僕は心待ちにしている。
Posted by ブクログ
完璧なママに育てられた、二人の姉妹の妹の方が主人公。
復讐癖があり、小さい頃に飼い猫の手を2歳年上の女の子に折られると、その女の子を階段から突き落として腕を折り返した。
この度、帰宅地中で右腰を後ろから斬られる。その時に「ラメルノエリキサのため…」という言葉を聞く。
復讐に燃える主人公。2件目の犯行、三件目の反抗が発生。ラメルノエリキサが、「フラメルのエリクサ」を指すと導き出し、魔術研究の教授の講義を聞き、自分が処女だと知っている元カレの弟が犯人と辿り着く。
ボコボコにしてる途中で、不治の病の母親のためだったと知り、殺すのをやめる。