あらすじ
2010年より急速に普及したスマートフォンは日本人の生活に深く浸透し、街中を歩けばスマホを使う人を見かけないことのほうが珍しくなった。しかし、その使用に付帯するリスク、とりわけ子どもたちによる長時間使用の危険性や、成績に及ぼされる影響についてはあまり知られていない。本書は7万人の子どもたちを対象に、数年間にわたって行われた大規模調査の結果を基に、スマホやアプリの使用がもたらす影響を解明し、スマホ使用のリスクを正面から論じた、現代人、とりわけ全保護者必読の一冊である。 【目次】はじめに/第一章 スマホを使うだけで成績が下がる!?/第二章 睡眠不足が成績低下の原因か/第三章 スマホが先か、学力が先か/第四章 LINE等インスタントメッセンジャーの影響/第五章 テレビやゲームの影響/第六章 どれだけの生徒がスマホ等を長時間使用しているのか/第七章 勉強中のスマホ使用の実態/第八章 メディア・マルチタスキング/第九章 スマホが脳発達に悪影響を与えている?/第一〇章 スマホの依存度評価/終章 スマホにまつわる雑感/参考資料/おわりに
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Posted by ブクログ
スマホが中学生の学力にどのような影響を与えるのかをまとめた本。
内容は個人的にはかなり衝撃的な内容だった。
スマホが学力を下げる要因の1つだというのは想像できるが、スマホを使うことによって、学習時間や睡眠時間が削られることで下がると思っていた。
しかし、そうではなくて、スマホを使うこと自体が学力を下げてしまうという結果はすごい衝撃だった。
スマホだけでなく、ゲームやテレビもそうだが、使用すると前頭前野が抑制されてしまい、学習効率が下がってしまうのが原因みたい。
個人的には子供のころにゲームから思考力だったり、知識だったり、学べた部分があるのでゲームはやってもいいと思うが、スマホの使用は絶対に制限しようと思った。
この本を読んで思ったのは、一部の地域(兵庫県小野市、仙台市、宮城県)では、スマホ使用に関する教育?が始まっているみたいだが、国からは何もアクションがないのはなぜだろうという疑問。
もちろん、こんな本1冊で国が動かないのは当たり前だと思うし、国が動かすのには膨大な労力がかかるのはわかっているが、著者は有名な教授だし、結果もちゃんと出ているのに。
エビデンスが足りないからなのか、著者が国に働きかけていないのか(読む限りそんなことはないと思うが)、大人の事情があるのか、そういう社会に対する著者の対応ものせてほしかったなと思う。
また、著者は研究者なので仕方ないかもしれないが、この結果を受けて、スマホの使用に関して家庭でどのように向き合っていったらいいのか、アドバイスみたいなものももらえるとよかったと思う。
信じる信じないは個人の自由だし、スマホがないと今の子供たちは学校生活が大変だから使わせているという親もいると思うが、この本を読んで子供とよく相談してスマホとの向き合い方を決めてほしいと思う。
子供がいる人には絶対に読むべき本だと思う。
Posted by ブクログ
・LINEはスマホ仕様の経年変化データと比較して、使うのをやめたことによる成績向上よりも、使い始めたことによる成績低下の影響の方が強いようです。
・ゲームの影響と同じく、テレビを長時間視聴する児童・生徒の言語知能の発達に遅れが見られること、前頭葉を中心に大脳皮質の発達に遅れが見られることを明らかにしました。長時間のテレビ視聴には種々のリスクがあることは肝に銘じておかなくてはいけません。
・生徒たちの家庭での時間の使い方を想像してみましょう。部活を行い18〜19時に帰宅したとします。そうすると夜就寝するまでに、平均4〜5時間しかありません。
LINEを使用する人はマルチタスク(テレビをみながらスマホを操作し、かつゲームをする)をする傾向があり、それが学力等の低下につながっているとの指摘があります。
・ゲームやテレビは長時間の使用で学力が低下するばかりでなく、健常児の言語知能や脳発達に悪影響を及ぼします。
・ゲームに慣れた途端に前頭前野が活動しなくなるばかりか、安静時よりも活動量が少なくなる前頭前野の「抑制現象」が生じたのです。どのようなゲームでも前頭前野に強い抑制がかかりました。こうした抑制現象はテレビ番組の視聴中にも生じました。
・今回私たちが見つけた事実は非常に深刻なものです。「文化的な生活」は手に入りますが、「健康な生活」や「成績の向上」からはほど遠くなります。
統計的(科学的)にはNGの内容
スマホ等使用中止による学力向上(グラフ3-1)は偏差値換算で1以下(0.1σ)で有意差検定もありません。この本の内容を気にしてお子さんにスマホをやめさせるのは僕にはお勧めできません。学術論文なら査読で×の内容。また、この調査では「勉強意欲が高まってスマホをやめた層と勉強が嫌になってスマホの時間が増えた層の比較になってしまっているのでは?」という異議(スマホの使用不使用が原因じゃないのでは?)に反証できません(対照群のコントロールが不十分)。また、100歩譲ってこれが全部統計的に有意であるとしても偏差値が1も上がらないのにスマホをやめさせるか、という問題もあります。スマホの使用中止には負の効果(SNSで友人と連絡がとりにくくなるなど)もあるでしょう。親子でよく話し合った方がいいです。