あらすじ
あなたは目をつぶって100メートルを走れますか? ベストセラー『目の見えない人は世界をどう見ているのか』の著者が、リオ戦士たちの「目で見ない」世界に迫る。
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Posted by ブクログ
いい試みの一冊だった。
障害者と健常者の違いをハンデと称し、その差を埋めて同じにすることを平等とする、そんな一般認識に一石を投じる。「同じ」にすることを強調するのでなく、「違い」に注目する。注目するだけでなく、その違いの先にさらなる可能性を見出そうとする試みが、明るい!
本書では視覚障碍者を取り上げる。視覚障碍者によるスポーツは
「私たちの多くがいつもやっているのとは違う、別バージョンの「走る」や「泳ぐ」」
だという。さらに、
「それを知ることは、障害のある人が身体を動かす仕方に接近することであるのみならず、人間の身体そのものの隠れた能力や新たな使い道に触れること」
と考えることがすごい!見えないことで発揮される他で研ぎ澄まされる感覚を「能力」とする発想が前向きだ。
その発現をルールの定められたスポーツの場に求める。そのルールは敵味方とも平等だし、ハンデではないのだ。なんなら、その同じルールの下で、つまり、「視覚を使わない」という“ルール”で視覚障碍者も晴眼者も同じ土俵で戦えばいいのかもしれない。
そこまで本書は突っ込んでないけれど、究極はそういうことじゃなかろうか? 条件さえ満たせば、ブラインドサッカーにJリーガーが完全目隠しして同じピッチに立つということだ。それが究極の平等なのかも?という可能性を垣間見せてくれた。
ブラインドサッカー、水泳、陸上、ゴールボールのパラリンピック選手との対話がメインの本書。視覚に頼らない「能力」を有する彼らの発言が実に前向きなのが何より素晴らしい。彼等には我々に見えていないものが見えている。
スキルを高め、判断力を磨くために、ブラインドサッカーの、つまり視覚に障碍を持つ加藤健一選手が、
「視野を広く持ち、次にどうなるか予測を立てておくことが必要」
と言ってのける。これに快哉をとなえずにいられようか。天晴だ。