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Posted by ブクログ
あのヒュウゴの少年時代の物語。タルシュ国密偵アラユタン・ヒュウゴ。やたらと気になる存在だったあのヒュウゴ。
バルサやチャグムにとって、敵対する関係のはずなのに、完全な敵ではない。
ラウルを説き伏せた能力の持ち主。
なぜ、あんなにもヒュウゴという人物が心に残ったのか、本作の上橋さんのあとがきで納得。ヒュウゴのこの少年時代の物語は、ヒュウゴが登場した時点で出来上がっていたとのこと。だから、ヒュウゴがあんなにも、登場人物の中でも際立つ存在となっていたのだ。
本作は守り人シリーズのスピンオフみたいな位置づけなのだろうけど、もはやひとつの物語として完璧に出来上がっている気がする。
ヒュウゴが家族全員を奪われるという辛く厳しい体験から、どのようにしてタルシュの密偵になっていくのか。ヒュウゴの心の変化がありありと伝わってきて、その心情描写に舌を巻く。
リュアンとヨアルとの交流は本当に胸熱で、なんなら守り人シリーズで一番というほど涙が込み上げてくるし、ならず者として生活を送らざるを得ないヒュウゴの状況も痛いほどよくわかった。
上橋さんは人間の醜い面、守り人シリーズでいえば、暴力に酔って快感を得てしまう人間の残虐な一面も隠すことなく、フラットに描く。そこに特別な感情はなく、「人間ってこういうところがあるんだよ」と諭されているようで、どんなに「暴力はダメ」と言われるより、心に響くものがある気がする。
国が滅ぼされるって何なんだろう。生き残った者は侵略者に頭を垂れてはずかしくないのか。いや、見えていないのだ。なぜ、どこかに生き残っているはずの帝は侵略者により苦しめられている民を救わないのか。そう、自分には、見えていないのだ。色々なものが・・・・
と顔をあげ、前に進むヒュウゴがまぶしかった。
あと、バルサの15歳の頃のお話も収録されていたけれど、ヒュウゴの話の感想で力尽きたので、こっちの感想は割愛・・・(笑)