あらすじ
「山積されたスキャン写真の最後に読影した脳スキャン画像はひどく奇妙なものであった。それまで私が記載してきたスキャン画像の中でもまさしくもっとも異常なものに思えた。この画像のかわいそうな持ち主はサイコパスであるか、少なくともこれとかなり一致する画像特徴を有していることを示していた。このスキャン画像の主が誰かに気づいた時に、なにかの間違いであろうと思いこまないではいられなかった……。しかし間違いではなかった。あろうことか、このスキャン画像の持ち主とはなんと私であった」(原書「解説より」)。
「人間の生物学的要因は,その行動にどの程度影響を与えるのであろうか?」
サイコパスとは,「精神病質(その人格のために本人や社会が悩む,正常とされる人格から逸脱したもの)である人」と辞書に記されており,共感性の低さ・自制心の欠如・大胆さなどに関連する先天性のパーソナリティ障害と言われている。本書の著者,神経科学者のジェームズ・ファロンは,サイコパスの脳の構造上のパターンを探していたところ,なんと自分が精神病質の脳の持ち主であることが判明。本書は,その後自らを研究材料に,精神病質と犯罪性との関連性を研究した結果を書き下ろしたものである。
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Posted by ブクログ
サイコパスの定義、サイコパス脳の著者の生い立ちという内容には面白みを感じなかったが、半分を過ぎた辺りから興味深くなっていった。
最初から欠けているものを、何が欠けているのか認識できる人はそういない。
著者はサイコパスならではの理性的な認知で、冷酷なまでに自分の特徴を見極め、共感性が乏しく、倫理感や道徳心を人間関係において発揮できないことを認識していく。
周囲の人間に自分の人物像を包み隠さず語ってもらったことや、心理検査報告書が散々な内容でも、著者は実際のところ「私は気にもならない」という。
サイコパスの当事者視点で語られる内容は実に面白かった。