あらすじ
なぜ各社がこぞってスマートスピーカーの販売に乗り出したのか?――人工知能の研究開発者が語る、第3次人工知能ブームの終焉の可能性とディダクション(演繹法)による第4次人工知能ブームの幕開け。人工知能の次の5年、10年、20年を正しく理解できる決定版!
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Posted by ブクログ
本書は、人工知能の開発に携わる一人の著者に対して、データサイエンティストとしてデータ分析などをTVや雑誌で解説しているもう一人の著者が、現状の人工知能ブームの実態に対して、対話する形で進められる一冊。
人工知能が何でも人間のやることを代替えできる万能の技術のような論調が多い中、人工知能の可能性と限界について開発者の立場からその実態を冷静に論じている。
結局、人工知能(ディープラーニング)も従来の統計学手法の延長線上にある技術で、やっていることは物事を「分類」すること。
現在のディープラーニングは、分類するための特徴量を人間が指定する必要が無いことと、特徴量が高次元の場合にも対応できるようになったことが従来の技術と一線を画するようになったところ。
ただし、人工知能は「意味」を理解することはできない。この「意味付け・理由付け」をする技術が次のブレイクスルーを生む、と本書では言っているけれど、それは後30〜40年先ではとのこと。
また、人工知能に仕事を奪われるのではなく、仕事をする必要がなくなる、という観点も合点がいった。
仕事を人工知能がやってくれるようになっても、経済を回すためにはお金が消費する必要があるので、お金を使ってもらう存在が必要。いろいろ課題はあると思うが、将来的には労働時間は劇的に短くなる方向だと感じる。
技術的な解説はほとんどないが、人工知能の現状と今後の可能性を把握する上では、類書と比較して実態に即した内容となっている。
Posted by ブクログ
■Q1. 人工知能とDeep Learningの関係は?
2018年時点では、人工知能とはDeep Learningのことである。Deep Learningは分類ができるものである。人間の知能の根底には分類がある。
2018年時点では、人工知能はある分野に特化して人間に勝っている。人工知能を作るにあたって、必ずしも人間の脳を模倣する必要はない。
■Q2. Deep Learningが現時点で強い領域、現時点の弱点、将来期待される領域は?
[現時点で強い領域、弱点]
2018年時点では、画像認識の精度がすごいが、何でも認識できるわけではない。認識できるのは「名詞」であり、「動詞」が認識できるのはまだ先のこと(動画認識が必要)。また、雰囲気のように実体のないもの(数字や文字では表せない何か)は表現できないことが現時点での弱点である。
[将来展望]
第3次人工知能ブーム=Deep Learning →第4次人工知能ブーム
(2018年現在) (10年以上後、2030年代~2045年頃)
- 今ある学習データの枠は超えられない →手元にないデータに対する解析ができるようになる
- 誤認識の理由を説明できない →理由をセットにして提示してくれる(Deduction)
★ブレークスルー:Deduction, 意味の理解、理由の説明
※所感:どうやって実現するのかは想像がつかない(だからこそブレークスルーと言っている)
[将来的に期待できる領域]
・この先10年(2020年代)は、誤認識が起きても人間がフォローできる分野での開発と実用化が進む。現在の技術=Deep Learningで実現される。防犯対策における顔認証や、医療業界における画像診断のように、人間の認識率がもともと低い分野の正解率を高める用途では、すでに実用化に入りつつある。一方、自動運転車やロボットタクシーのように誤認識が安全にかかわる分野では、技術が完成しても法整備などがネックとなる。
・2030年代は、現在分かっているDeep Learningの問題点が解決されたうえで、人工知能が活用される。製造業や農業などの製造生産現場向けのロボットが巨大産業化する。
・2045年頃には、これまでは人工知能に作業を任せるだけだったのが、人工知能が仕事そのものを奪うようになる。まず、意味を理解する人工知能=強い人工知能が登場する。意味を理解する(Deductionと同義)とは、ある対象がない状態を想像して、その対象がある状態との差分を表現できることである。これにより、人工知能が対応できる範囲が作業から仕事に昇華する。その後、シンギュラリティが来る。
※所感:人工知能≠Deep Learningかもしれない。何者になるかは今はまだ分からない。
■Q3. 自分がこれから備えるべきことは?
新しいものをゼロから生み出すことができるのは、まだ先のこと(Deduction, 意味の理解が必要)。
しかし、新しいものを生み出すための補助手段としてはどんどん導入されていき、作業がどんどん自動化されていくので、キャッチアップしていく必要がある。
※所感:人工知能を研究開発の遂行に活用したり、人工知能を製品に適用したりすることが考えらえる。
このためには、コツコツと勉強することが大切。明日からでも、例えばPythonとDeep Learningの勉強を始めて、知識のキャッチアップをしていくこと。実際に雰囲気に触れて、何ができて何ができないのかを把握し、ビジネスへの導入を考えていくこと。
■Q4. 子供がこれから備えるべきことは?
・21世紀の仕事は、人工知能を作る仕事と、自分自身を売り込む仕事の二つに収斂する。
・第4次人工知能ブームに備えて、統計学を学ぶ。統計学科で統計を体系立てて四年間きっちりと学ぶ。統計学科はアメリカや韓国では普通にあるが、日本では滋賀大学が2017年に設置した一つのみ。
■その他のメモ
・ビジネスにおける人工知能の導入は、ニーズから掘り下げていったほうが良い。聞きかじった事例から入ると、まず成功しない。(p.138)
・グランドチャレンジを見ると、10~20年先の方向性が見えてくる。(p.171)
・人工知能のDBとしてブロックチェーンが向いている。一か所に集めたくない個人情報を分散・セキュアに管理できるため。日本はブロックチェーン技術の最先端にいる。(p.180)