あらすじ
ドラッカーも絶賛!
「これはマズローの最も重要な、不滅の作品だ」
本当の自己実現とは何か?
欲求階層説は、そもそも何を示しているのか?
その真意はマズローのオリジナルにふれなければ理解できない。
アドラー、フロムらと並ぶ心理学の巨人、
その神髄がこの本にある!
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Posted by ブクログ
マズローというと、「自己実現」という概念や「欲求5段階説」が
有名です。人間の欲求は、生理、安全、所属、承認、自己実現とい
う5段階からなっており、それらの欲求は低次から高次のものに進
化する、というものです。自己実現を頂点にしたピラミッドの図で
描かれ、色々な場面で引用されるので、聞いたことのある方も多い
ことでしょう。マズローがいなければ、「自己実現」という言葉は
これほどまでに広まらなかったと思います。
しかし、マズローその人の著書となるとほとんど知られていません。
広く名前が知られているのに、原典は読まれていない。古典と呼ば
れるものはたいがいそういうものですが、マズローの場合、その主
著が何であるかさえほとんど知られていませんから、受容のされ方
に問題があったとしか思えません。
かく言う井上も、マズローの著作はこれまで未読。いままでずっと
わからなかった「自己実現」という言葉の意味が、ようやくわかり
かけてきた気がするので、マズローでも読んでみようかと思い立ち、
以前に購入したままになっていた本書を手にとったという訳です。
原書の出版は1965年。本書は、そこに経営者や学者達のインタビュ
ーを追加し、多面的な視点からマズローの理論が考察できるように
工夫された新版の翻訳です。ただし、400ページ超ですし、断片的
な論考を集めた体裁のため、体系だっていないのが難点です。
それでも、やはり部下や会社のマネジメントに携わる人、働くこと
の意味について悩む人には読んで頂きたい本です。マズローは、企
業(役所等も含みます)に、個人の自己実現を追求する場としての
可能性を夢見て本書を書いています。つまり、本書は、組織の人間
的価値に対する問いかけなのです。そして、その問いかけは、現代
においてこそますます重要になっています。
格差社会と言われますが、それでも今の日本は、多くの人が自己実
現を目指す欲求段階に到達している希有な社会です。それはまさに
マズローが夢見た社会です。その時、企業はどうあるべきか。そう
やって見ると、本書がまさに予言の書としての輝きを持ってきます。
大部のためひるんでしまいますが、読み始めると面白くてやめられ
なくなります。是非、読んでみてください。
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▽ 心に残った文章達(本書からの引用文)
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仕事生活、すなわち生活のために収入を得る手段を正しく管理すれ
ば、そこで働く人間は成長し、世界はより良いものとなる。
重要で価値ある仕事をやりとげ自己実現に至ることは、人間が幸福
に至る道であると言ってよいだろう。(中略)洞窟にこもり、たえ
ず自己と向き合うことで自己救済を果たした者は、私の知る限り一
人もいない。(中略)私の知る幸福な人びとは、いずれも、自分が
重要と見なす仕事をりっぱにやりとげている人びとである。
自己実現者から見れば、仕事は「使命」「召命」「義務」「天職」
といった宗教的意味合いの言葉で呼ぶにふさわしいものなのである
権威主義的な経営管理の下では、労働者の尊厳が踏みにじられると
いう点に関しては、だれもがある程度気づいているようだ。このよ
うな場合、労働者が尊厳や自尊心を回復しようとして、敵意むき出
しの破壊行為に出たり、陰に回って陰湿な手口で報復したり、とい
った事態が生じる。
自己実現者は他人の喜びによって自分の喜びを得る人間である。
組織は、人間が全身全霊を傾ける舞台となる豊かな土壌である。そ
れにもかかわらず、大半の組織は人間の潜在能力が開花することを
許さず、むしろその芽を摘んでしまっている。
一般的に言って、自己実現に近づけば近づくほど、さらにいいリー
ダー、いい上司になりうるということである。(中略)いい上司、
いいリーダーは、他人の成長や他人の自己実現を喜べるような心理
的特質を備えていなければならない。言い換えると、彼は保護者も
しくは父親のようでなければならないのだ。
いいリーダーは優秀な農夫と同じで、必要以上に人を鍛えたり、型
にはめたり、無理強いしたりすることがない。人が成長するのに適
した条件を整え、人々に種を与えるか、もしくは、初めから人々の
内に埋まっていた種を発芽させたら、後は必要以上に干渉すること
なく、その成長を見守るのである。
動機づけ理論によれば、不平がやむことなど決して期待してはなら
ないのである。期待すべきは不平のレベルが次第に高まっていくこ
と、すなわち、低次の不平から高次の不平へ、そして最終的にはメ
タ不平へと高まっていくことだけである。(中略)われわれは「現
在の不平は、動機づけのレベルが向上した結果生じたものだろうか」
と問う姿勢を身に付けるべきなのである。
自分の能力を最大限に発揮できるということは自己実現に近づくと
いうことであり、欲求が充足されて幸福感を味わえるということで
ある。(中略)こうしたレベルに達すれば、人間は自分のやりたい
ことをやれるようになる。自分のやりたいこととは、すなわち、自
分の能力を最大限に発揮できること、何よりも楽しいこと、社会に
とって望ましいこと、達成感や楽しさ、義務を果たしているという
実感をもたらしてくれることである
人間は自分が社会に提供できることだけでなく、他者が社会に提供
していること-このことに関しては、自分よりも他者の方が優れて
いる-をも正当に評価しなければならない。言い換えると、他者が
自分とは異なっていることに感謝しなければならないということだ。
人間が成長し、精神の健康度を増すにつれて、競走を勝ち抜く手段
として進歩的な経営管理がいっそう求められるようになり、権威主
義的経営管理を続ける企業はますます不利な状況に追い込まれるよ
うになる。
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●[2]編集後記
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今、野草にはまっています。きっかけは、若草染めのワークショッ
プに家族で参加した時に、皆で採った野草を天ぷらにして食べさせ
てもらったこと。ヨモギ、クワの葉、ドクダミ、ハルジオン、ノビ
ルなどを食べたのですが、これがとっても美味でびっくり。学生時
代、タンポポの葉はよく食べましたし、多くの野草というか雑草が
食べられるものであることは知っていましたが、正直、こんなに美
味しいものだとは、今まで知りませんでした。
おまけに野草は多くの場合、薬効成分があります。ドクダミもヨモ
ギも健康にとても良い成分を大量に含んでいるそうです。特に、ヨ
モギは、食べるだけでなく、風呂にすると良いとも言います。これ
は野菜を買っている農家の方から教えてもらいました。その方は鳥
インフルエンザの予防として、茶がらでのうがいとヨモギ風呂を励
行しているそうです。
調べてみると、ヨモギには殺菌・消炎効果があり、ヨモギ風呂は特
に呼吸器系の病気や皮膚病、アトピー等のアレルギーに効くそうで
す。血行促進、保温効果、美肌効果もあり、まさに万能薬の感があ
ります。そういえば、子どもの日の菖蒲湯のセットにはヨモギが入
っていましたが、やはり意味があったのですね。
わざわざお金を出さなくても、世の中にはこんなにも美味しくて、
身体にも良いものがどこにでも生えているのです。なのに、食用は
もとより、入浴用等の使い方にしても、ほとんど一般化していませ
ん。それが不思議でなりません。もしかしたら、私達は、売られて
いるもの以外は価値がないと見なすような思考回路を知らず知らず
のうちに身につけてしまっているのかもしれません。それはとても
一面的で不自由なものの見方だと思うのです。
野草の愉しみを知ると、大袈裟なようですが、普段見ている風景が
変わります。今までは見過ごしていた足下に咲く野の花が、急に愛
しくなり、リアルに感じられるようになります。本当にちょっとし
たことで、毎日の生活は変わるのだなと改めて感じ入っています。
Posted by ブクログ
欲求階層説で有名なマズローが経営について語った手記をまとめた著作でもともと1965年の初版が再発掘され、編集されたもののようである。構成としても手記を中心にまとめられているため、まとまりがなかったり、難解な部分も見受けられ、個人的には全体としての理解がうまくできなかった。
印象的だったのはマズローがドラッカーらの経営管理原則が過度に一般化されており、適用すべき人間を限定していない、と批判していることだ。マズローは進歩的経営管理の方針として数々の仮定を設けている。いくつか重要なものをあげると、
・人間は信頼できるもの
・権威主義的な支配・被支配の関係は存在しない
・シナジーがある(ひとりの利益は全体の利益となる、全体の利益はひとりの利益でもある)
・諸個人が十分に(心理的に)健康で、組織もしかり
これらはマズローの理想とした、自己実現者で構成された文化ともいえる。私の勝手な解釈だが、企業の各個人が互いに尊重されており、共通の目標を持ち、柔軟にリーダシップをとったり協調できるような風土が確立されているような状況を指すのではないかと思う。今でこそ、業績主義の目標管理に偏らず行動や価値観を評価に含める人事が強調されているが、当時このような理屈が展開されていたことは驚きである。
マズローはどのようにしたらよいかについて最後に「健康心理学的なものを目指す活動、つまり管理者を含む全社員の成長を促進する活動を第九の副社長に管理させるのが望ましい」、「広範囲にわたる哲学的・心理学的・心理療法的・教育的訓練が中心」とだけ言及している。言ってみれば従業員のものの考え方を変えるための教育を様々なアプローチで行うということなのだろうか。