あらすじ
平穏な時間。それ以外に欲しいものなんて何もない――。山崎由実はすべてを捨てて家を飛び出し、知らない町の古びた薬屋に辿り着いた。店主の平山タバサは、由実を薬局の手伝いと家事全般の担い手として住み込みで雇ってくれた。見ず知らずのわたしを、なぜ……。謎めいたタバサの本心はわからぬままだが、由実は次第に新しい生活に慣れてゆく。誰しもがもつ孤独をたおやかに包み込む長編小説。
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Posted by ブクログ
この本の中には確かに街があり、その世を隔てた小さな街の秩序に代々従いながら生き続ける人たちがいます。薬屋のタバサはその街で、街の人達や店を訪れる人達の生から死までを預かりますー
そして代々引き継がれてゆく薬屋の仕事ー
短命な薬屋の嫁達ー
タバサの子を産み終えた「わたし」もまた、、、
心地よい読後感ではないものの、不思議な世界への読書体験でした。
Posted by ブクログ
行ってはいけないと自分のどこかが止めている。
ただ、心を少し離れるともっと深いところにあるふと顔を出すどろどろとした澱が体から出して欲しいと叫んで、行ってしまう。
どうにもならないことがこの世にはあるのだと言われた気がする。
幻想的でいて不穏で引きずられそうなのに、逆らいたくない。
怪しい小説に出会いたい方は是非。
Posted by ブクログ
子どもを二人生んだ山崎由美という女性の視点から描かれる物語。
由美は二人子どもを産み、一人は亡くし、もう一人を捨てて、この町にやってきた。
何かに耐えられなくなったからだが、それが何かは読者にはわからない。
店と家事の仕事をする代わりに、彼女は平山タバサを店主とする薬局に身を寄せる。
薬屋として代々町の人々の生と死の現場尾立ち会ってきたという平山家。
いったい彼は何者なのか。
彼の処方する薬はどういうものなのか。
そして、この町は、異界なのか。
異界、とすれば、これは「高野聖」の男女反転ヴァージョンか?
あるいは「砂の女」の?
ただ、母性の問題が底に感じられるところは、そういった先行作品とは違っている。
平山家に嫁いだ女性たちは、みないつの間にか、どこかからやってきた人ばかり。
おまけに短命だ。
由美もまたタバサの息子を産み、こういう平山家の女に列するのだが…。
少年になった息子が彼女につきつける「約束」とは何か。
ずっと平山家にいたという老女のマサヤさんも謎の存在のままだ。
物語の序盤に、由美にかけた「ころんでしまうよ」という言葉は、果たして助言か、呪いか。
何の構えもなく読んで、横っ面をひっぱたかれた。
ホラーといってくれれば、そう思って読んだのに。
Posted by ブクログ
夢と現実の間を行き来するような、不思議なトーンの小説。非現実的である一方、ファンタジーというには生々しく、それで結局何なの、というフラストレーションもないではないけど、独特の読後感が味わいどころか。
Posted by ブクログ
生きている現実と0.5mmずれた世界をみているような空気感。
産まれでるいのちと、死にゆく魂がふわふわと漂っていく。
登場人物の一人一人が、幻なのか、実体があるのかわからなくなる。
さらさらとした不穏な描写が文学の力を感じさせてくれた。
Posted by ブクログ
何か『かもめ食堂』のような自分探し人情ほっこり話となぜか思って、すぐぼんやりとさぼる由実にいらつき、タバサと寝たところからえ?結局恋愛系なの?と評価が★2の勢いになったが、だんだんオカルトじみてきてラストで結構良い意味で置いて行かれました。
ネット検索してみたけれどラストの解釈をされているものが見当たらなかったので、シミズ的解釈↓
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【前提】
・由実は過去2人子供を産んでおり、1人は死亡、もう1人を残して逃げた
・逃げた先は行方不明者がよる町と呼ばれるところの薬屋
・この町は外に出なくても生活できる
・マサヤという老女だけど年齢不詳な幻のような女性はかつて薬屋に勤めていた
・薬屋の主人は代々身元不詳の女性と結婚して生まれた長男が薬屋を継ぐ
・タバサの薬を飲むと予定が立てられる(飲んだ当人も周囲の人も不安がなくなる)
【以上を踏まえてラストを解釈】
・この町は運命共同体で『タバサ』他各々の立ち位置担当のものは常にいる
→担当者自体は代替わりする
→あくまで担当が同じなだけで同じ人ではない
・また代々やってくる身元不詳の女に類するものも常にいる
→役目が終わると代替わりする(由実がマサヤの立ち位置になる)
→そう考えるとマサヤがタバサの母とも言えるがそれはルリなので
マサヤは先代タバサの後妻(ルリ死亡により代替わり)
(※現タバサの先妻かもですが幼タバサと遊んだことを踏まえて)
→池を埋めたのは由実が子を産む前にルリのように死ぬと
また代替わり要員をまたないといけないため
・タバサの薬でスムーズに代替わりする
・日吉サイクル担当は息子がいるのでOK
・3人の老女(脇田・原田・山田)担当は、
マサヤを追い出そうとした母親の娘2人(母親本人は町の外に引っ越す)と
助産院で生まれた子供(母親は出産後逃亡)に代替わりすると推測
→町の住民はそれを知っている(ので葬式をしない)
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てな感じでどうかしら。
作者の方はそこまで考えてないと思いますが、自分的にまあまあ納得できる解釈となります。
Posted by ブクログ
捉えどころのない感じでふわふわと読み進めていたが、最後一気に、え?えっ! ってなる。
あれは一体なんだったんだろうと、ある意味後味が残る作品。
Posted by ブクログ
何だか、病んでいる人の心の世界に入り込んだ気分。
ずっと平らな印象で、何というか、全ての登場人物に感情がない感じ?
タバサと山崎さんには愛を全く感じないし、妊娠した喜びや困惑も、淡々としすぎている。
とても現実味のない話でした。
パラレルワールドなのかも。
Posted by ブクログ
全てを捨てて知らない町の古びた薬屋に辿り着いた山崎由実。謎めいた店主の平山タバサと町の住人。孤独の本質を問う長編小説。
例えれば小川洋子作品のような、不思議な世界観のお話。モヤモヤ感とふわふわ感が同居しながらも、チクッとした痛みを所々で与えてくる。
Posted by ブクログ
池、もしくは沼のような小説。ジャンルもミステリなのかファンタジなのか、はたまたホラーなのか判別不能。終始、謎めいた作品でした。
あらすじ(背表紙より)
平穏な時間。それ以外に欲しいものなんて何もない―。山崎由実はすべてを捨てて家を飛び出し、知らない町の古びた薬屋に辿り着いた。店主の平山タバサは、由実を薬局の手伝いと家事全般の担い手として住み込みで雇ってくれた。見ず知らずのわたしを、なぜ…。謎めいたタバサの本心はわからぬままだが、由実は次第に新しい生活に慣れてゆく。誰しもがもつ孤独をたおやかに包み込む長編小説。
Posted by ブクログ
完全にタイトルと装丁買い。
最初は私が誰で、タバサの性別もいまいちわからず…。
なんだろう。少しずつ主人公の氏名がわかり、なんだかとらえどころのない、夢のような日々が描かれている。幻なのか現実なのか…境界線を行ったり来たりしているような感じ。
そして、ラスト。
これまでぼんやりゆっくり物語の時が流れていたのに、展開(?)が一気に早まったような気がして、ついていけずに終わってしまった。
私とタバサの過ごした時間は夢だったのか、現実だったのか…。