あらすじ
古タイヤの溝掘り職人であるジャックの日常はある日狂い始める……。ディックの自伝的作品にして主流文学の代表作を、新訳で刊行。『戦争が終り、世界の終りが始まった』改題。
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Posted by ブクログ
ディックの自伝的かつ主流小説。自伝的なのは、カルトとの関わりの部分?それともチャーリー目線でのフェイ(妻)との関わり?
ディックにありがちなキーキー小うるさくて性格は悪いけど、見た目は標準以上でなぜか男を惹きつける女ー主人公ジャックの妹。フェイーと、フェイの夫のチャーリー、フェイの不倫相手そして後々の再婚相手のナット、そして主人公のジャックが主な登場人物。
ナットはなんだかどっちつかずで、優しいけどつまらなさそうな決断力のない男。フェイと別れそうで別れなくて、押されてついていった遊園地で自らの滑稽さに気がつき、人生を諦めるというか、認めるシーンはとても良かった。とても現実的で、そして彼はなんだかんだ言っても、不倫の末嫁に愛想を尽かされて出て行かれて離婚しても、フェイになぜか惹かれてしまう自分に嫌気が差しつつも、前向きで、なんというかおぼっちゃま的というかのんきだ。どう考えても、チャーリーの方が好きだけど。女を殴るのは良くないけどね。
と言いつつ。主人公は、やはりジャック。
終盤、ジャックが自分の信じていたことが違っていた…と気がついてもなお前向きに捉える姿勢は開き直りのようにも思えたけど、盲信から目覚めて、さしたるショックも受けずに順応し、じゃあどうやって生きていこうか?と切り替える、もがき始めると決めるシーンはとても良かった。
かくありたいと思う。
フェイ、チャーリー、ナットは一見社会的に成功していて、あるいは学があって、資産があって。でも、道徳的に正しい行いをし続けたのは(あるいは道を外れなかったのは)ジャックのみ。心の平穏を保ち続けて、人生を諦めていない。高潔さとはこういうことを言うのかな、と思ったりした。
ここまで書いて、人生を諦めるナットと、人生を受け入れるジャックの対比として読むとより面白いかもなと思った。