【感想・ネタバレ】コリーニ事件のレビュー

あらすじ

67歳のイタリア人、コリーニが殺人容疑で逮捕された。被害者は大金持ちの実業家で、事務所を開いたばかりの新米弁護士ライネンは国選弁護人を買ってでる。だが、殺されたのはライネンの亡くなった親友の祖父だったと判明する。知らずに引き受けたとはいえ、少年時代に世話になった恩人を殺した男を弁護しなければならない――。苦悩するライネンと、被害者遺族側の辣腕弁護士マッティンガーが法廷で繰り広げる緊迫の攻防戦。そして裁判で明かされた、事件の驚くべき背景とは。刑事事件弁護士の著者が研ぎ澄まされた筆致で描く、圧巻の法廷劇!/解説=瀧井朝世

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Posted by ブクログ

ネタバレ

ドイツ人作家にしか描けないミステリだった。ミステリの核となる法律は、ナチスの命令に従うしかなかった当時のドイツ人を救うという目的もあったのではないかと思うが、そんなことは被害者にしてみればどうでもいいことである。被害者にとって重要なのは、害を与えた人がきちんと裁かれたかどうかなのだから。そういう難しさ、やるせなさをきちんと描いてくれるこの作者の作品は、やっぱり好きだと実感した。

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2025年11月09日

Posted by ブクログ

ネタバレ

中編ほどのページ数で、わずかな登場人物。それでいて、ちょっと何かを触れるとネタバレになりそうなくらいの緊張感を含んだ良質のミステリー。

これは素晴らしい!しかもこの本が売れたことで、本国ドイツでは現実が動かされ始めているという。

こんな本、日本では絶対出ないだろうなぁ。書ける作家は要ると思うが、大手出版社は絶対躊躇する(統一教会がらみですらもあの朝日が汚れるんやで)やろし、まして現実が動くなんて根性座った政治家も法律家もちょっと見当たらへんなぁ。

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2022年08月25日

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ネタバレ

法律論を、マッティンガー vs. ライデンの痛快な法廷劇に仕立てつつ、戦時の罪について現在とつながった話として問い続ける。

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2022年05月28日

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ネタバレ

法廷もの。しかも過去と現代を行きつ戻りつするのにすごく読みやすくておもしろかった。
映画化されてますね。顛末をわかっていても観てみたくなります。
「やがて来る者へ」というイタリア映画に第三帝国時代のドイツの蛮行が描かれています。
併せて観るとコリー二の無念さがより浮かび上がってくると思います。

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2020年08月24日

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ネタバレ

主人公・ライネンは、弁護士になってやっと42日。
初めて殺人犯の国選弁護人になったが、容疑者、いや、犯人は犯行を認めるものの、動機を明かさない。
犯行に至るまでのどんな背景が事件にはあったのか、そして、なぜ犯人は動機を明かそうとしないのか。

何を書いてもネタバレにかすってしまうので、感想を書くのが難しいなあ。
これから読もうと思う人は、この先を読まないでね。


いまだにドイツに影を落とし続けているのが、ナチス時代に行った数々の非道。
犯人であるコリーニがなぜ殺人を犯さなければならなかったのか。
それもまた、現在に残るナチスの影のせい。
ナチの生き残りが作った戦後ドイツの法律が、ナチの犯罪をなかったことにする。

余談だが、この小説の出版がきっかけで、ドイツはナチの過去再検討委員会を立ち上げたという。
小説が政治を動かしたのだ。

閑話休題。
犯人は結局最後まで多くを語ることはなかった。
作者としては、その存在が、訴えたいことのすべてだったのかもしれない。

そもそもなぜイタリア人の犯人は、ドイツに暮らし続けたのか。
ずっと癒えない傷を忘れないためにそうしていたのか。

犯人の心のうちにあったものは、恨みだったのだろうか、それとも今は亡い人たちを慕い続ける思いだったのだろうか。
生涯独身を貫いた犯人は、愛する人を持つことはなかったのだろうか。
自分自身を生きることはできたのだろうか。

多くの疑問が頭の中をぐるぐる回るけれど、簡単に答えを出すことではないとも思う。

「わたし、すべてを背負っていかないといけないのかしら?」
「きみはきみにふさわしく生きればいいのさ」

それほど長い作品ではないのに、ずっしりと重い読後感が残された。

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2019年12月21日

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ネタバレ

国選弁護人を引き受けた事件の被害者は親友の祖父だった―。それだけでも十分ドラマ性があるのに、後半の思わぬ展開に、読み終わって呆然としてしまった。語り口も淡々としていてそんなに長い小説でもないのに、じわじわ迫ってくる筆致がすごい。この小説がドイツの政治を動かしてしまったということのもうなずける。
そして小説で政治が動いてしまうドイツという国もすごい。そのことは日本でもよく問題になるけど、責任の取り方というかそれに対する責任の捉え方が、本当に全然違うんだよなぁ…

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2019年10月26日

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ネタバレ

鳥肌が立つ。
この小説を読み私が体感したものの一つ。
ドイツの法廷劇であり、筆者の淡々とした語り口が、読者とほどよい距離感が保たれており、ページを進めずにはいられない。そして、扱うテーマがとてつもなく奥深く過去の暗い歴史へといざなわれる。読者は自らこの重みを受け止め、対処せざるを得えない。物語の登場人物と、語り手の距離感がそうさせるのだと思う。
この重厚なテーマをこのページ数で語ることが、著者のすごいところ。ドイツの戦争との向き合い方について、我が国でも参考にするべきことがあるかもしれない。

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2019年07月13日

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ネタバレ

禁忌と同じタイミングで読んだため、すこしキャラクターが混じってしまった。
基本的にこの人の作品では、警察、法曹界野の人たちは常に善良に自身の仕事と向き合っていて、嫌な人間がいないところが良い。
被害者の二面性、被告人の救われなさ、さすが弁護士、と感心した。おまけに、これは自分自身の話でもあるなんて。すごい。

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2019年02月10日

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ネタバレ

2013年日本刊行、シーラッハの初長編作品とのこと。
『禁忌』は読んだことあったけど、あれよりもこちらの方が前だったとは。

やっぱりこの文体は好き。
どこか不穏でぴりっとした緊迫感が終始漂う。
決して奇をてらった表現や独特な言い回しがあるわけではないのだが、何がどうしてこの著者特有の雰囲気が生まれているのだ。
すごく物語世界に没入させられる。
訳者、酒寄さんの力量、推して知るべし。

ある夜ホテルで一人の大物実業家ハンス・マイヤーが元自動車組立工の年老いたイタリア人コリーニに殺される。
そこには強烈なまでの憎しみがあった。
殺害後自ら警察を呼ぶが、その後は黙して何も語らない。
新米弁護士のライネンは、コリーニを弁護することを決意するが、その後殺された実業家が幼なじみの祖父であることがわかり心が揺れる。
だが、原告側弁護士であり、この道の大先輩であるマッティンガーに「依頼人への責任」を諭され、全力を尽くすことに。

最終的に明らかになる真実は、その題材とミステリを絡ませる趣向は数多くあるため、そこまで意外ではないのだが、著者自身の家系の来歴やハンスの孫ヨハナが語る「わたし、すべてを背負っていかないといけないのかしら?」の名言、現実のドイツ政界をも動かした糾弾姿勢でくるまれたこの物語は、その月並みとすら思える展開に比して奥深い。

今年『珈琲と煙草』、『神』と2作も出版されている著者。
改めてミステリベスト10を賑わすことになるのか。

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2023年11月04日

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ネタバレ

事件が進むにつれ、一見残忍に見える犯人が、法の僅かな落とし穴によって如何ともし難い苦痛を味わっていることに気づく。重厚な後味を残す一冊でした。

所々、表現が長ったらしく退屈する文があったので星4にしました。

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2021年02月24日

Posted by ブクログ

ネタバレ

200ページぐらいの本なのだが…日本では、こんな本は書けないんじゃ無いかと思うかな。
無益な戦争、ナチス時代を背景にした悲劇。そして法律の落度…歴史に翻弄される人々…中々難しい本だと思う。

小説には、内面的な描写はあるけど、なんだろう著者の描写は、読者側が読んで想像するような書き方が、とても印象的だったので、深読みしてしまった…嫌いじゃないし、著者が何となく答えを教えてる、ちっとな文章と中々良かった!

読んだ事の無いタイプの本。外国作品は、登場人物ごちゃごちゃになるので、あんまり読まないが、この作品は数人だけで読みやすくて良い。

気になったら読んでみてください!

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2019年02月24日

Posted by ブクログ

ネタバレ

冒頭、当番弁護士の感じが日本と同じだー、と面白かった。ドイツから学ばせてもらったんだったか。
話自体も面白かった。孫との関係は正直要らんかなと思ったけど(映像化が意識されていそうなのは苦手)。ざ・ドイツ、というお話と思う。そんな法改正がなされるのも凄いと思うけど、その後に検討委員会が作られるのも凄いと思った。日本では前者だけで終わりそう。

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2021年05月05日

Posted by ブクログ

ネタバレ

前情報なしで読み始めたので、そんな話だったのか!と驚き、あとがきで作者の出自を知ってさらに驚いた。
知らないまま読めてよかった。
知ったうえで読み返すと、最後のヨハナとライネンのやり取りがますます胸に迫る。
淡々とした語り口なのだが、続きが気になってスルスル読めてしまう不思議な魅力を感じた。他の作品も読んでみたい。

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2021年02月06日

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