あらすじ
九死に一生を得た福子は津波から助けた少年と、乳飲み子を抱えた遠乃は舅や義兄と、息子とはぐれたシングルマザーの渚は一人、避難所へ向かった。だがそこは、“絆”を盾に段ボールの仕切りも使わせない監視社会。男尊女卑が蔓延(はびこ)り、美しい遠乃は好奇の目の中、授乳もままならなかった。やがて虐げられた女たちは静かに怒り、立ち上がる。憤りで読む手が止まらぬ衝撃の震災小説。『避難所』改題。
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Posted by ブクログ
東日本大震災の話。
椿原福子、山野渚、漆山遠乃。
3人の女性の視点で、被災の瞬間から避難所生活、その後までが細やかに描かれていく。
僕は楽しい本を選びがちだが、読書による擬似体験で「想像力」を養う、というのはとても大切なことだと感じた。
僕は阪神・淡路大震災で27歳のとき、1週間ほど小学校で避難所生活を送った。
そのときの避難所には、作者の垣谷さんが本作を書くきっかけになったという「仕切り」などなかった。
その当時の僕は、「仕切りはない方が・・・」と説かれればそんなもんなのかと思っただろうし、「プライバシーの確保に仕切りは必要」と訴えられたら、それはそうだろう、と思ったことだろう。
どっちやねん、という感じだが、今なら、本作が「避難所」から「女たちの避難所」に改題され、しんどくなるほどしっかり書かれている福子の夫に対する不満、遠乃の舅や義兄に対する憤り、彼女たちの置かれている理不尽な状況がよく分かるようになった。
フォロワーさんとのやりとりがなければ、本作を手に取らなかったと思うので、まずはそこに感謝したい。
「想像力」と、それが自分に欠けているのではないかと自戒する気持ち、他者への「配慮」、それらを、自分が追い詰められているときに持ち続けることができるかどうか。
自問させられた作品であった。