あらすじ
旅先の妻の表情。大地震後の不安な日々。職場の千絵ちゃんの愛らしさ――。次第に細部をすり減らしながらも、なお熱を発し続ける一つ一つの記憶の、かけがえのない輝き。覚えていることと忘れてしまったことをめぐる6篇の連作に、ある秋の休日の街と人々を鮮やかに切りとる「文化」を併録。芥川賞作家による会心の小説集。
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Posted by ブクログ
以前勤めていた会社の、もう二度と会うことのない同僚を想う、というシチュエーションは、好きな小説でもある保坂和志の「コーリング」を思わせる。「コーリング」はふと思いを馳せる事がコミュニケーションたり得るか、というテーマだったように思うが、こちらは、関係が絶たれてから、孤独の中で記憶が劣化し、本当の意味で関係が消滅していく事をテーマにしているように思った。特に、元妻の合成写真を作り続ける章など。だから、すごく暗いし救いのない気分になる。しかし、その分、最後のサービスが利いてくる。過去を思い返す事が多く、その都度複雑な気分になる自分としてはこういう話は好きだ。
あと、出てくる地名がいちいち自分に関係する地名でびっくりした。宇都宮、神田川、青物横丁など。これは単なる偶然だけど、たまたまその場所を知っているだけで、同郷の人に偶然あったかのように、感情移入できるもんなんだな、と思った。
Posted by ブクログ
自分の過去についてゆったりと回想するお話。とりとめもない思考がつらつらと描かれている。人の脳内を覗けるこういう感じのお話は結構好き。嫌な登場人物が出てこない。離婚や会社の倒産や決して明るくないイベントを経験しながらも、市瀬の記憶は人々の明るさと共に思い出される。彼はきっと大丈夫なんだろうなと思う。
Posted by ブクログ
主人公は離婚した20代の男性。短編連作で一編ごとに年齢を経ていく。
最初は小さな会社の人間関係を描く会社小説なのかなと思ったが、男性は会社を辞め孤独感が強まる。
最初の短編と最後ではまったく雰囲気が違うように思う。
これちょっとどうなの?と思われる言動や行動もあるのだが、女性が読んだらどうなんだろう。
男性で、柴崎友香や絲山秋子風な作風の人が出てきたなあという感じがした。
Posted by ブクログ
人の記憶がいかに曖昧か、って一言でまとめるとそんな感じになってしまうのがもどかしい・・・
完璧に共有される過去なんて存在しないもので、ある事実それ自体は変わらずとも、それぞれの主観で捉えたその事実はもう既に裸の事実とは異なってしまう。そのそれぞれの事実を共有し続けられる、あるいは2人の事実を作っていくことが、共に生きてゆくこと、つまり結婚なのかなと思いました。離婚し独り身の主人公を通して、より引き立たせられた2人で生きてゆくことの幸せを感じました。
Posted by ブクログ
映画で出てきて気になった小説。
以下は気になった文の引用です。
「当時は混乱していて、自分で言っていてもこの一連の心の動きがよくわからない。」
「妻のことが頭から離れることはなく、ずっと頭にあり続けるというのは、むしろそこにあるのだかないのだかよくわからなくなってくる。静かな頭痛がずっと続いている、というか、自分で自分の頭痛が切れぬように何かを意識し続けているような状態がずっと続いているのだったが、植物に触れると、その痛みのようなものが一種晴れたように思った。」
Posted by ブクログ
全部お前の話かよ!だらだら進むから短編かと思ったら
え、花束みたいな恋をしたに出てたのか
「会社で働いている時みたいに、いろんなリスクとか、効率とかを考えて、間違えないように進む道を決めるよりも、自分の毎日を生きるのは自分しかいない、自分たちの毎日は自分たちだけのものなのだから、そのなかで生まれた意志を、それがたとえ馬鹿げていて危険も、生まれた以上は大事にしたい」
なるほど
最後まで読んだ
わかんねえて!
もう少し前だったらこの本かなり共感したと思う
暇すぎて昔出会った人のこと未練がましくずっと考え続けたり、ちょっと出会っただけの異性を貴重なものとして依存したり、1日の中で見かけた人のことずっと考えちゃったり、見かけた取るに足らないものを忘れちゃいけないような気がしたり
ぜーんぶ人生暇すぎて
誰かの言葉を求めてすがるようにしてた頃、手に取る本とか行った場所に運命的な、読んだ意味行った意味をとにかく求めていた頃、何にでも意味を持たせていた頃と今とずいぶん変わったなと思う
暇じゃないわけじゃないけど
大人にはなってないけど若かったのかもな〜だし多少歳をとったせいなのかなあ
昔聞いた曲が昔ほど響かない
やっぱり心が弱ってる時期はある意味感性が豊かになってるんだよなあ
うーんいいのか悪いのか、しんどかったからいい訳ないんだけど
Posted by ブクログ
『長い一日』が微笑ましくて良かったので、同じ作者の二冊目を読んでみた。
味わい深くはあるが、最後の方は読み疲れてしまった。短編7編を収め、うち6編は連作。離婚したあと妻の記憶に囚われたまま呆然と生きる男の日常を綴る。連載ではないため重複が多いこと、男の内面の進展がごくわずかなもので、読んでいる方もうつうつとしてくる。
その心情には共感できるところも多いが、しかしこういう感受性を誇っているとうつ傾向が常態になりそうという危機感も覚えた。
最後の一編は連作よりずっと年寄りの男の話なのだが、30歳頃に離婚した男が喜びの少ない人生を送った果てのようにも思えてうら寂しい。