あらすじ
これまでのような「分析」「論理」「理性」に軸足をおいた経営、いわば「サイエンス重視の意思決定」では、今日のように複雑で不安定な世界においてビジネスの舵取りをすることはできない――「直感」と「感性」の時代――組織開発・リーダー育成を専門とするコーン・フェリー・ヘイグループのパートナーによる、複雑化・不安定化したビジネス社会で勝つための画期的論考!
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Posted by ブクログ
この時代のビジネスで活躍するために必要なことが、個人的には非常にわかりやすくてまとまっていたと思う。
読んでから分かったのだがここでいう美意識というのは、ただ見た目などの表層的なものにとどまらず、内面の道徳感などの美しさも含んでいた。
アート・サイエンス・クラフトという概念があり、AIの時代ではサイエンスの強みが出せなくなってきた今、美意識が非常に重要になる
Posted by ブクログ
正しいかどうかはさておき、この本を読んだ感想や思考の整理の場とします。
これまで、企業では市場分析や顧客分析から論理的に儲けられることの説明をして、ゴーサインがが出たものを商品やサービスにする事が正しいとされてきた。しかし、多くの場合いずれレッドオーシャンに突入することをこの本を読む前から感じていた。みんなが同じプロセスで考えていたら完全に同じでなくても、似たような答えに辿り着くことは容易に想像できる。
顧客にこれが良い!と提案する形のビジネスのあり方っていうのも面白い。今後はその視点でもビジネスを見てみようと思う。
近年、企業の価値の比重が、MVVやパーパスなどのソフト面に移動してきているように感じていた。商品でも同じ。うる覚えだが、「アップルはストーリーを売っている」というようなことが書いてあったかと思う。それを持つことで得られる属性がある。物そのものの価値もさながら、ソフト的な価値も提供している。
これまで考えていたことに横串を通すような内容でとても面白かった。何か、野中先生の失敗の本質や、三つの過剰にも何か通ずるところも感じた。
Posted by ブクログ
面白かった。
本書は、先の見えない不確実な時代において、「論理」や「数字」だけでは十分な経営判断ができなくなっているという現実に警鐘を鳴らしている。これまで通用してきたサイエンス偏重の経営スタイルには限界があり、今後は「美意識」=アート的視点が必要になる、というのが本書の主張である。
「正解がコモディティ化」している現代においては、論理的な思考だけでは差別化ができなくなった。その結果、企業はスピードとコストでしか勝負ができず、競争は“消耗戦”に陥ってしまう。このような状況から抜け出すために必要なのが、「何が価値あるものか」を見抜く力、すなわち“美意識”であるという視点は非常に示唆に富んでいる。
本書で語られる美意識は、単なる芸術的センスのことではない。論理では判断できない場面において、「これがよい」と感じられる直感的な判断軸のことを指している。カントの「美しいとは普遍的妥当性がある」という言葉にもあるように、美意識には主観と客観の間をつなぐ役割がある。まさにその感覚こそが、これからの複雑なビジネス環境における意思決定を支える要素なのだと感じた。
経営とは「サイエンス(論理・理性)」「アート(感性)」「クラフト(実践知)」の三つの力で成り立っているという考え方も印象深い。PDCAのフレームにあてはめると、「Plan=アート」「Do=クラフト」「Check=サイエンス」と整理されているが、特にPlanの段階でアート=感性が必要であるという点は見落とされがちである。
一方で、本書が見逃していないのが、「アートがサイエンスに負けやすい構造的理由」である。現代の企業や組織ではアカウンタビリティー(説明責任)が重視される。その結果、「説明できるもの」「再現できるもの」が正当化されやすく、数値化しにくいアート的判断は軽視されがちである。たとえ優れた直感に基づく意思決定であっても、言語化や根拠の提示が難しいため、会議の場やレポートの中で説得力を持たせることができず、サイエンスに押し負けてしまう。
この構造が、企業の中で「論理優位」の意思決定文化を生んでいる。その結果が「分析麻痺」であり、判断が先延ばしになったり、実行力が低下したりする事態を招いている。著者は、このような構造を打破するためには、経営の中心にアート=美意識を据え、左右の両翼にクラフトとサイエンスを配置する新しいリーダーシップモデルが必要だと説いている。
Apple、ユニクロ、無印良品といった事例を通じて、アート的な視点がどのように実際の経営に活かされているかが紹介されており、理論だけでなく実務にも役立つ内容となっている。「選択と集中」ではなく「選択と捨象」という考え方もユニークで、ビジネスの本質を見極める姿勢に通じていると感じた。
また、「イノベーションの先にあるストーリー」が企業価値を支えるという視点も重要である。技術や機能は模倣されても、そこに込められた世界観や理念はコピーできない。実際にAppleの製品が模倣されても、その人気が根強いのは“ストーリー”がしっかりとあるからだと納得した。
さらに、美意識を持つことで、目の前の「常識」や「ルール」を疑う力が身につくという点も見逃せない。異なる価値観や文化に触れること、美しいと感じるものを大切にすることが、自社や社会の中で「本当にそれは正しいのか?」と問う力につながっていく。これは、組織の慣習に流されない判断力を持つためにも重要である。
総じて本書は、「論理と感性をどうバランスさせるか」という問いを立て直すきっかけとなる一冊である。論理的に正しいだけでなく、「それは本当に良いのか、美しいのか」と問う力を持つことが、これからの時代に求められるリーダーシップであり、経営判断の質を高める鍵になると強く感じた。
Posted by ブクログ
科学的思考に基づいた経営は急速に陳腐化していき、これからの企業間競争を勝ち抜くのは芸術的思考=美意識に基づく経営である。というのが本書の主軸を為す主張である。
日本的な美意識を中心とする組織の例として、古くは千利休と織田信長・豊臣秀吉の関係、新しくはマツダにおける前田育男氏の存在感などを挙げている。
美しさや善良さを根本に据えた視座の高さに欠けている昨今の多くの日本企業が、法令違反を連発するのは必然であると喝破する。
Audibleで視聴したが、全ては流石に頭に入らなかった。斬新な語り口で経営について論じており、良い本であった。今度は書籍で読みたい。
Posted by ブクログ
著者の山口さんの本は4冊目となるが、読むたびに
美意識を高めることの重要性を再認識する。
アート、芸術は学んで何になるの?と思う人が多いと思うが、そもそも法律や勉強の順位が正しいものなのかということを考えると内にある美意識・軸をもって判断することが大切だと思う。
特に例としてだされていたオウム心理教の事件が高学歴の人ばかりであり、勉強というわかりきった正解で生きてきた人だからこそ社会における理不尽さを目の当たりにし、わかりやすい序列がしかれている教祖の教えに従ってしまったというのは、
偏った考えの危険さを表しており、だからこそ美という目にみえない正解のないものから倫理を鍛えることが大切だと思った。そう思うと日本の義務教育や現代のsnsでの興味のありそうな記事しかでてこない、知らないというのは危険で怖く感じてしまった。私自身は社会にでてから無駄なことの大切さを感じていたがこの本でより多面的に経験することがAIでなく人として生きる限り大切にしていきたいと感じた。アートとサイエンスのバランスを意識しつつアートを通して美意識を高くもてる人でありたいと思った。