あらすじ
【第1位『このミステリーがすごい!2011年版』海外編】十七歳の兄と十五歳の弟。ふたりは森へ行き、戻ってきたのは兄ひとりだった。家政婦ハンナに乞われ二十年ぶりに帰郷したオーレンを迎えたのは、過去を再現するかのように、偏執的に保たれた家だった。夜明けに何者かが玄関先に、死んだ弟の骨をひとつひとつ置いてゆく。一見変わりなく元気そうな父は、眠りのなかで歩き、死んだ母と会話している。これだけの年月を経て、いったい何が起きているのか? 半ば強制的に保安官の捜査に協力させられたオーレンの前に、町の人々の秘められた顔が、次第に明らかになってゆく。迫力のストーリーテリングと卓越した人物造形。著者渾身の大作。/解説=川出正樹
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Posted by ブクログ
私たちには、天才を見ることができるのだろうか。
否。
太陽を見ようとした瞳が焼き払われてしまうように、
その光り輝く才能を見測ることはできない。
ただ、その放たれた光によって照らしだされた新しい世界を、
その恵みによって育てられた果実を、
享受するだけだ。
確かに、この作品はその光の一片であり、輝く果実だ。
長年行方不明だった少年の骨が、
その父親のもとに届きだすことによって始まる極上のミステリーであるとともに、
容疑者でもあり事件を追う帰ってきた兄、
判事だが夢遊病を発症した父、
異能者ともいえる家政婦と、
個性際立つ登場人物たちの過去と現在と未来がからみあう見事な人間ドラマであり、
心かき乱される恋愛小説である。
楽しいのは、
次々と登場する女性たちがそれぞれの強さを持ち合わせていること。
好みが分かれるだろうが、
私が魅かれるのは、
手品も車の運転も酒もビリヤードも得意な家政婦ハンナ。
その多才ぶりと、洞察力と賢さは印象深い。
操られるマスコミ、警察内部の対立、
明らかになる過去、暴徒、舞踏会とストーリー展開も素晴らしい。
幼い恋が実ると思わせられるラストも。
同じ作者の「キャシー・マロリー」シリーズでいらいらさせられたのとは大違いだ。
シリーズ化されているということは読者に受けているということだろうが、
私にはその良さは理解できていない。
やはり天才の才能とは、凡人には見測れないものなのだろう。
Posted by ブクログ
20年ぶりに故郷に帰ってきたオーレン・ホッブス。20年前にオーレンと共に森に入った弟のジョシュアはそのまま行方不明に。ジュシュアの骨が帰ってくる。ジョシュアの骨以外に別人の骨も。否応なく捜査に関わることになったオーレン。オーレンのためにアリバイを証言した2人の女。オーレンと肉体関係にあったホテルの女主人イヴリン・ストラウブ、オーレンに恋するイザベル・ウィンストン。発見されたジョシュアの遺体と謎の女性の遺体。現場に残された黄色いレインコート。元警官のウィリアム・スワンの捜査。かつてスワンをはめたロス警察との裏取引を主導したイザベルの義父アディソン。保安官ケイブル・バビットと対立しながら捜査をする州捜査官サリー・ポーク。かつてジョシュア、オーレンと乱闘騒ぎを起こした副保安官デイブ・ハーディ。
Posted by ブクログ
敬愛する杉江松恋氏の昨年のベストワンなので、読むことに。
最初は文学的な香りのする文章に二の足を踏んだものの、
徐々に暗示的な描写や台詞がたまらなく面白くて惹き込まれた。
人物描写や人間関係が濃密に描かれているのがいい。
この狭い田舎町にこんなに多くの奇人変人曲者達がいて、
誰もが亡くなったジョシュに関係していて、
誰もが異様な程怪しく、そして森に秘密が隠されているなんて、
昔ハマった「ツインピークス」のよう。
ひょっとしたらこれは「バ○ミス」(※)なのかと
中盤を過ぎてもただひたすら疑念は増すばかり…。
そんな感じで、後半までフーダニットを楽しめる。
が、ラストでは「バ○ミス」との期待は見事裏切られ、
ラスト100ページは場面展開も加速し、 一気にゴールへと突入する。
ストーリーには直接関係無い小遊び的な設定も多々あり、
暗示的な文章と共にその辺が私にとっては魅力的なポイントだった。
それと、悪い癖で、また見つけてしまった。
「」の括りがおかしかった箇所が1点と、
ジョシュのカメラの機種が 「キャノンFTb」となっている点。
(正しくは「キヤノンFTb」。)
「キユーピー」や「シヤチハタ」、「富士フイルム」など
発音と表記が違う企業はわりとある。
ミステリーとしては珍しく再読したくなる素敵な小説だった。