【感想・ネタバレ】指揮官の決断 満州とアッツの将軍 樋口季一郎のレビュー

あらすじ

ユダヤ人「命のビザ」救出劇はもう一つ存在した!

リトアニアの外交官、杉原千畝(ちうね)が逃げてきた約六千人ものユダヤ人難民に対して特別ビザを発給し、その命を救った救出劇は多くの人に知られている。
しかし、その二年半前、満州のハルビン特務機関長だった樋口季一郎が、ナチスの迫害からソ満国境の地まで逃げてきたユダヤ人難民に対し特別ビザの発給を実現させた「オトポール事件」は歴史の中に埋没してしまった。

そのユダヤ人救出劇から5年、北方軍司令官となっていた樋口は札幌・月寒の軍司令部にいた。
彼の指揮下にあるアッツ島には無数の米軍上陸部隊が押し寄せていた。樋口は現地軍に対して一度は「増援部隊」を送ることを伝えた。しかし大本営の決定により、増援部隊の派遣は中止となる。樋口は涙を流しながら、その命令を現地に伝えたという。

アッツ島は玉砕。かつて満州の地において多くのユダヤ人を救った男は部下の命を助けることができなかった。オトポール事件の立役者は「日本初の玉砕戦の指揮官」という汚名をかぶることとなってしまう。

本書は運命に翻弄された元陸軍中将、樋口季一郎の生涯を追ったノンフィクションである。

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Posted by ブクログ

アッツ島の玉砕・キスカ島の撤退時に北部軍司令官として指揮を執った樋口李一郎中将の人生を綴る本です。

樋口中将の人生には3つの大きな出来事が起こりました。上記のキスカ・アッツでの戦いに加えて、杉浦千畝よりも先にユダヤ人の命を助けたこと、ポツダム宣言受諾後にソ連軍を交戦したことです。

本著はこれら3つの出来事に対して樋口中将がいかに決断したか、中将の人生を紐解くことで、人柄の面からアプローチして理解しようとするものです。

日本の上級指揮官は当時の教育・人事もありますが、優れた戦略眼を持った人物は少なく、それが原因となって必要以上に命が失われた側面もあります。そのなかで樋口中将は人命を大切にする優れた戦略眼を持つ指揮官だということがわかります。どのような教育や経験を経て重大な決断を行うに至ったかを注目して読むことを勧めます。

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2014年08月24日

Posted by ブクログ

オトポール駅のユダヤ人救出劇。アッツ島玉砕命令とキスカ島奇跡の撤退。占守島攻防戦。指揮官たるものの悲哀。今も昔も、人物はいるもんだ。淡々とした筆致で迫ってくるゼネラルヒグチ奇跡の物語。

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2014年09月22日

Posted by ブクログ

組織人としていかに生きるかという視点で読んだ。与えられた役割の中で何をなすか。満州やアッツでの決断。戦後の占守島での決断。人間性、教養を磨くのが一番。日々の実践で人間を磨いていく。

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2012年08月26日

Posted by ブクログ

戦前の陸軍のキーマン達との交流、オトポール事件(ユダヤ人救出)、アッツ島玉砕、撤退戦を潜り抜けた陸軍将軍樋口季一郎の評伝。

「栄光」も「苦しみ」も墓場まで持っていくタイプの人物であるが故に、評価されるべき人である事は絶対に間違いない。
捕虜虐待・虐殺であったり、部下を見殺して自分の保身を中心に考えた悪役達が、帝国陸軍の固定概念としてしまいがちである。本人は、烈しく苦労しているのだが、周りの人達を不快にさせない生き方には、当たり前であるが感動的である。
戦争という異常事態の中にある軍隊の中にでも、(軍隊も当然社会であるのだから一定の確率でいるはずであるが)、粛々と正々堂々と生き残った人がいる事を知る良書。

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2011年01月13日

Posted by ブクログ

樋口季一郎中将が関った幾多の事件について、また彼の生涯についてを綴ったものである。
色々と伝わっている話しに関して、“話しの尾鰭”を検証する部分―可能な限りの史料を掘り起こしている著者に敬意を表したい―も混じっており、真摯に「“事実”を読者と分かち合おう」というような筆者の姿勢が非常に伝わる綴り方である。そういう姿勢で伝えられる数々の事実が、非常に興味深い。
本書を通じ、北海道にも縁の興味深い人物の事績を知ることが叶ったのは大変幸いだ。多くの人に薦めたい一冊である。

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2010年08月27日

Posted by ブクログ

満州とアッツの将軍 樋口季一郎 指揮官の決断
著:早坂 隆
文春新書

陸軍の特務将校 樋口季一郎の生涯の記録です

・杉原千畝に先立つ、ユダヤ人特別ビザ発給事件 オトポール事件
樋口 「参謀長 ヒットラーのお先棒を担いで弱い者いじめすることを正しいと思われますか」
東条英機は頑固者で、こうと思ったら一歩もあとへ引かない性格の持ち主であったが、筋が通ればいたって話の分かる人である

樋口の学歴はかがやかしい
・淡路島 尋常小学校
・三原高等小学校
・大阪陸軍地方幼年学校 KD ドイツ語で士官候補生
・東京 中央幼年学校
・第一師団歩兵第1連隊
・陸軍士官学校
・陸軍大学校

陸軍の仮想敵国はロシアであるが、海軍の仮想敵国がアメリカという不思議、もともとベクトルがあっていない

特務機関員は外国語の達人、複数の言語を使いこなす
ドイツ語 ロシア語 フランス語 ポーランド語

ウラジオストック とは、ロシア語で、東方を支配せよという意味
ロシア人は一人一人は良いのだが、国家となるとあんなに危険な国はない

八紘一宇 日本書紀にある言葉で、八紘とは、四方と四隅、一宇は、一つの家を意味する

ポーランド公使館付武官というポストは、当時、対ロシア研究における最重要ポストとして位置づけられており、特に将来を嘱望された人物が代々その任についていた

クーデター史
1931(S06)十月事件
1932(S07)515事件
1935(S10)相沢事件 相沢は樋口の部下だった
1936(S11)226事件
樋口は東条と同じく、統制派のメンバーと目されていたが、ロシア通であったために、皇道派の将校もよく樋口のもとを訪れていた

樋口と石原莞爾は、盟友だった

アッツ島 大本営の方針で見殺しをせざるを得なかったことを生涯背負って生きている
キスカ島 米軍にパーフェクトと言わしめる采配
占守島 終戦後にソ連兵が攻撃してきた

樋口の持論のひとつは、「死ぬまで勉強」であった

目次
序章
第1章 オトポール事件の発生
第2章 出生~インテリジェンスの世界へ
第3章 ポーランド駐在~相沢事件
第4章 オトポール事件とその後
第5章 アッツ島玉砕
第6章 占守島の戦い
最終章 軍服を脱いで
あとがき
樋口季一郎年譜

ISBN:9784166607587
出版社:文藝春秋
判型:新書
ページ数:256ページ
定価:900円(本体)
発売日:2010年06月20日第1刷発行

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2023年12月08日

Posted by ブクログ

アッツ島の戦いで援軍が送れなくなることを部下にどんな想いで伝えたのかと思うと考えさせられた。高級軍人でありながら部下想いでそして家族想いであった樋口季一郎の人間性が伺えました。この本からの気付いたことは明治から昭和にかけて数多くの優秀な軍人たちがいるが共通することは上を見ずとも信念に従って独断できる人だなと思う。
オトポール事件はそれが象徴される例かなと。ソ連から戦犯にされそうだったがユダヤ人が守ってくれるのを知り、最後は人間性やなとも思う。
キスカ島の撤退だって陸軍や海軍と連携できたこともすごいが、まずは人命を大切にする樋口季一郎だからこそ実現できたことだなと思う。
そんな人間性から占守島の戦いも勝てたのではないかと私は感じる。自分も人の上に立つ時がくれば樋口季一郎みたいになりたい。

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2021年05月28日

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樋口季一郎将軍。
日本人はもっとこの将軍のことを知らなければならない。
北海道に住む人は特にそうだ。

樋口将軍がいなければ、北海道はソ連の手に落ちていた可能性が極めて高い。
そして、もしソ連の手に落ちていれば未だソ連の属国として存在していた可能性が非常に高い。

浅田次郎、池上司と占守島での戦闘を描いた小説は多いがこの戦闘がなければ、ソ連は楽々北海道に到達し、東ドイツや北朝鮮状態になっていた可能性を考えると、樋口将軍への感謝がやまない。

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2025年01月20日

Posted by ブクログ

陸軍中将の樋口季一郎は、ソ連通の情報将校であった。ハルビン特務機関長時代にユダヤ人難民を救出。玉砕したアッツ島守備隊を所管する北部軍司令官でもあった。

その経歴をみても、永田鉄山を刺殺した相沢三郎の上司だったなど興味深いものがあるが、本書を読むと陸軍の良識派であった事がある。

著者は、樋口を讃美する事なく迫ろうとしており、そのスタンスには好感がもてるが、巻末に参考文献一覧がないのは残念である。

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2012年01月29日

Posted by ブクログ

ネタバレ

オトポール事件、アッツ島に関係した樋口季一郎という人物の歴史。関係者やご遺族とのインタビューや、公式文書などから上手く、樋口の人物像を描き出していると思う。旧日本陸軍といえば、今の感覚で行けばあまり、通常の人と感じられない人が多い中、この人はまっとうな感覚を持っていたのだろうなあと感じました。

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2011年10月02日

Posted by ブクログ

2011/10/02 23:53 面白くはなかったが、この人を知ることが出来たのは良かった。でも題名は疑問。

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2011年10月02日

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