あらすじ
月桂樹の館で暮らす男の子ジェームズ。ある日館を逃げ出したジェームズは、フィルチングの町で、決して使うなと言われていた金貨でパンを買ってしまう。それがとんでもない事態を招くとも知らず……。物の声を聞く能力をもつクロッド・アイアマンガーと、勇敢な召使いのルーシー。世にも奇妙で怖ろしい運命に見舞われた二人の未来に待つのは? 堆塵館に何が起きているのか。著者本人によるイラスト満載。『堆塵館』で読書界に衝撃を与えた三部作第二部。/解説=深緑野分
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Posted by ブクログ
舞台はルーシーの故郷、穢れの町へと移り、辛い現実を、さも当然であるかのように受け入れている人々に対するルーシーの勇気ある行動が気高く、まるで革命を起こす中心的人物であるかのよう。
ルーシーに負けず劣らず、クロッドの成長も清々しいものがある。かつてはアイアマンガー一族であることに、なんの疑いもなくひっそりと暮らしていたクロッドが、ルーシーと出会ったことで、世の中を見つめ直し、自分に出来ることを見いだしながら、
「自由でなくちゃおかしい。」とまで言うようになったのだから。こんなに行動的じゃなかったのにね。
こうした二人の成長も含めて、物語の展開に入り込んでしまうのは、どんな境遇であっても、挫けずに出来ることを探しながら、生きられるだけ生きてやるぞといった気持ちに、理屈抜きで共感させられる、私もこういう生き方をしたいといった、憧れの気持ちもあるからだと思いました。
ただ、それにしても、二人の再会と別れの繰り返しには、本当にやきもきさせられる。久々に再会したときの台詞のやり取りが素敵で、ホロリとした分、尚更である。要するに、早く第三部が読みたいということですね。
Posted by ブクログ
いやあ、なんだろう。
ゴミがあふれかえり、汚物にまみれ、ネズミが逃げ出し、虫が湧く。
そんな世界の話なのに。
クロッドもルーシーも決して美形でもなければ清潔でもないのに。
彼らの愛は美しいと思う。
ロンドン中のごみの処理を一手に引き受けるアイアマンガ―一族。
しかし、彼らにとって金の生る木であるゴミに執着しすぎて、ついにごみの山に飲み込まれてしまった堆塵館。
物に執着しすぎて、物と人間の区別すら曖昧になる。
前巻で堆塵館から逃げ出そうとして果たせなかったクロッドとルーシー。
その生死すら定かでないまま巻は終わったのだが、この巻で二人は物に変えられ、離れ離れになっている。
クロッドは殺人鬼・仕立屋によって、ルーシーはゴミと一体化した人間・ビナディットによって人間に戻され、運命は二人を再びめぐり合わせる…のだけど、この事態を引き起こしたアイアマンガ―を止めるため、自分のするべきことをするために、二人は再び離れ離れに。
一族に取り囲まれてしまったクロッドと、雪崩のように押し寄せるゴミと業火に包まれたルーシー。
ふたりの運命は!?
ってとこでまた、次巻に続く。
ロンドンから離れたところに、ロンドン市民が見えないように、隔離され、押し込められていたゴミが、その臭気が、毒が、ロンドン市民を侵し始める。
その穢れをこれ以上拡散させないようにロンドンが決定したことは、穢れの町を焼き払うこと。
ゴミは出すけれども、後処理は見えないところに任せるロンドン市民は、現代の私たちと同じである。
そして抑えることのできなくなった穢れを、焼き滅ぼして清潔と言い張るのはまるで…。
この話が一体どのように終わりを迎えるのか。
あと一巻で終わってしまうのがもったいない。
こんなに穢れに満ちた世界なのに、離れがたいと思わせる筆力。
ああ。
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アイアマンガー三部作その2。
解説の深緑さんが想起する作品群を列挙してくれている!ディケンズ、エンデ、マーヴィン・ピークの<ゴーメンガースト>シリーズ、レモニー・スニケット<世にも不幸なできごと>シリーズ、ジャン=ピエール・ジュネ&マルク・キャ呂『ロスト・チルドレン』、宮崎駿『天空の城ラピュタ』、大友克洋『スチームボーイ』『大砲の街』、ダール『ぼくのつくった魔法のくすり』…うひひ。
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英国の話だけど、何かフランス革命を連想した。月桂樹の館はバスティーユ、クロッドがオスカル、ルーシーがアンドレ?クロッドのように誕生の品を同等に扱うのは少数派なんだろうな。いざ、ロンドンへ。アイアマンガーよりロンドンの方が容赦ない。真の敵は誰?
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アイアマンガー三部作の二作目.
一作目は「堆塵館」で,本作は前作のラストでクロッドが金貨にされ,もう一人の主人公であるルーシーも「ボットン」にされてしまった続きから始まる.
人をモノにしてしまったり,人でないものに命を与えたり,アイアマンガーの総帥である「おじいさま」の目的は一体何だ?
ゴミの上に聳える堆塵館が第一作のラストで崩壊し,第二作では月桂樹の館工場を打ち捨てアイアマンガーはロンドンに向かうのだが,第三作ではどうやって話を閉じるのかが楽しみ.
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まさに”怒涛”の展開!
1部の終わりが「ええっ!!!」で終わったので、続きが楽しみな続編です。
第3部の完結まで発行されてから購入、読み始めたので、1部と2部の間隔があまり空いていないからいいものだけど、これ発行当初に読んでいたら待ちくたびれて、狂いそうなレベルです。
2部の主役は、完全に召使の女の子に代わっている。また1部ではそうでもなかったが2部では登場人物で一番好きなキャラになりました。
がんばれ、ルーシー・ペナント!!
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アイアマンガー3部作の2作目…というか、第2巻。
前巻のゴミだらけで煙ってて薄汚いイメージがさらにパワーアップした本作。ゴミの山とロンドンの間にある「穢れの街」を舞台に、10シリング金貨になってしまった(?)前作の主人公を探す、前作のヒロイン(っぽくないが)が大活躍する。
本作で一番気になる人物が「ビナディット」。この男、ゴミの山で生まれ育ち、ゴミを服装どころか皮膚のように身にまとい、身体にうごめく昆虫や小動物を食して生きているというとんでもない汚物人間。ゴミどもに「父」と慕われるこの男がヒロインとキスをするシーンがあるのは圧巻。こんなに萌えないキスシーンは初めてだ!
前作同様、本作もとんでもないところで唐突に話が終わる。こんな終わり方されたら、3作目が待ち遠しくてしゃーないやんけ!
Posted by ブクログ
舞台を移した穢れの町が堆塵館のあるゴミ山とロンドンの間にあって,それが滅ぼされるというすごい展開の中で、再び巡り会うクロードとルーシー.物と人間の謎を秘めた関係が次第に明らかになってきた.新たに登場するロンドンに住む本当の?人間たち.アイアマンガーはどう攻撃を仕掛けるのか,クロードはどうするのか,いよいよ盛り上がる次巻,楽しみだ.
Posted by ブクログ
のめり込んで読んだ。またまた離れ離れになる二人。続きが気になっていても立ってもいられない。
深緑野分さんの解説がすごく的を得ている。相性の良い本との出会い…。この著者の本をもっと読んでみたい。誕生の品と言っていいものがものが私にもあったかな…。色々思考が広がっていく。