あらすじ
「リボンモデル」「不の発見」「価値マネ」「ぐるぐる図」「価値KPI」「型化」……
次々と新しい事業を生み出す「リクルート式」を、
トップコンサルタントが徹底分析!
数々の新規事業を生み出してきたリクルート。
「結局リクルートだからできるのであって、我が社には役立たない」と思い込んでいる人たちは少なくない。
しかし、それは大きな誤りだと著者は言う。
リクルートには、個人のアイデアを拾い上げてブラッシュアップし、
驚異的なスピードと爆発力で展開するしくみを組織全体で共有しているのだ。
昨今話題の「リーン・スタートアップ」「アジャイル」と似た手法を、
シリコンバレーに先駆けて実践していたのがリクルートである。
本書は、第一線の戦略コンサルタントが、その手法を分析し、一般の企業に応用する方法を解説する。
リクルートは自由な発想とユニークな人材の活用が出来ており、やはり組織として、会社として、上手くできているなと思う。
新規事業を成功させるためには「計画に時間をかけるのではなく、未完成の事業でも走りながら修正を加えながらボトムアップしていくということ」「計画できないこと、達成できないこと、実現できないことは計画値の中にいれてはいけないということ」「事業を成功させるためにはとにかくブラッシュアップでおかしいと思うことや、改善した方がよいことは意見を出し合い最大限ブラッシュアップしていくということ」などがわかりやすく書かれている。
また経営陣のありかたとして「決してトップダウンではなく、現場の能力を生かすことに最大限尽力しなければいけないということ」など行動から組織のあり方、新規事業進め方などリクルートのその成功の秘密を丁寧に解説した書である。0→1よりも1→10に強みがあること、リクルートが一般の企業とあきらかに異なるのは、個を尊重し、人を活かす企業文化が徹底されているところだ。
リクルートで必ず言われる言葉「お前はどうしたい?」など、競争しながらも共有し一般企業がどこまでリクルートに近づくことができるか、考えさせらせる書である。
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Posted by ブクログ
事業企画に関する名著。その考え方、設計の仕方は元より、KPIについての考え方についても非常にわかりやすい。
また、一番重要な文化とその醸成に繋がる裏側の仕組みを紐解いてくれているのが印象的であった。
人におすすめできる一冊。
<メモ>
・新規事業の成功には数とスピードが不可欠。
最終的に何がうまくいくかはやってみないければわからないため。
計画に時間をかけすぎる。
・上がったアイデアをブラッシュアップする。
新規事業を創出できる人材を育てるという発想。
クリエイティブな天才が画期的な事業を考案し、
成長する偶然が重ならないと新規事業は生まれないと考えている。
・できるだけ筋のいい新規事業をたくさん市場に出すしか成功の可能性を上げるための方法はない。一つ一つについて言い出しっぺに失敗の責任を取らせて敗者のレッテルを張ると社員が萎縮して事業アイデアを出さないし、うまく行っていない事業の撤退を決断することもできなくなってしまう。
・リクルートの工夫
リボンモデルで業界構造全体を捉え、それを共通認識として社内での議論ができる。
PDSのPではなく、何を検証するかに議論を集中させ、とりあえずテストマーケティングやスモールスタートの形で市場に出してテストマーケティングを行う。
PDSの回転単位は日時であることも
新規事業開発手法・メソッドが確立されている。
たとえ既存領域を脅かすことになっても、ボトムアップによる新規事業開発をやるとトップマネジメントがコミットメントする。一定の段階で予算組みと権限を新規事業開発のトップに渡す
うまくいかない事業はある段階で見切られ、スパッと撤退する。
それをどの事業へも厳格に適用する。
アイデアを出し、チャレンジすることが賞賛される文化。何度でもチャレンジできる。
・リボンモデルの本質。消費者の不の解消のみならず、産業構造全体が持つ不、社会が持つ不へも着目すること。リボンモデルを設計することでビジネスの視野を自然にグッと広げる。既成概念に囚われず、業界全体、社会全体を変えるほどのイノベーションにつながるような斬新なアイデアを生み出すためのツールになる。
・新規事業には3つのステージがある。世の中の不をアイデアにする段階、勝ち筋を見つける段階、爆発的な拡大再生産を行う段階。
不の発見、テストマーケティング、NEW RINGで1段階目をサポート
マネタイズ設計、価値KPI設定、ぐるぐる図で2段階目を
価値マネ、型化とナレッジ共有、小さなS字を積み重ねるで3段階目をサポートしている。
・不の発見。あるべき社会実現につながる潜在的な不を探す。不を産んでいる産業構造の暗黙のルールを突き止める。不を解決するための新たなお金の流れを見つけ出す
・テストマーケティング。本当に人の心を動かす事業アイデアなのかを検証する。顧客がお金を払ってでも解決したい課題なのかを検証する。検証を段階的に設計し、規模を拡大しながら次へ進める。リソースをどれだけ与えるのか、いつまでに結果を出す必要があるのか、何を達成すれば次の段階に進めるのかを明確にしておかなければならない。
・New RING。ボトムアップによる新規事業の起案を賞賛する。アイデアを事業へとブラッシュアップし、軌道に乗せる。起案者の志を尊重し、実現への覚悟を問い続ける。
・リクルートの不は誰も目をつけていなかったもの、既存の産業構造を変えるもの、収益につながるものと、所謂ニーズより深い概念。
・アイデアが集まったとしても、そのアイデアをどのように事業化に繋げるか、道筋が仕組み化、構造化されていなければ、新規事業は生まれない。
いいアイデアがあれば応募するではなく、応募すると決めてからアイデアを練るケースも。
・NEW RING最初の審査で問われる基準。市場規模、ユニークかどうか、志の3つ。
市場規模。リクルートは数億ー数十億の規模では小さすぎると判断されてしまう。100億以上の市場と市場の圧倒的シェア確保が必須。
ユニークかどうかはなんとなくではなく、国内初、世界初レベルを求める
志はあるべき社会の姿に照らし合わせて、真に解決すべき不が存在しているのだということを説得力を持って伝えられるか。自分自身がその解消に向けて取り組む覚悟を持っているか。
・マネタイズ設計。誰がなぜ、いくらで、どの予算で買ってくれるかを突き止める。ユーザーの行動、顧客の売上、自社の活動を方程式でつなぎこむ。市場を継続的に成長させることができるお金の流れを作り出す。
・価値KPI。事業の価値を上げる鍵となる指標を顧客評価から探し出す。価値 KPIへの因果関係の高い実際の行動を探り出す。全員での高速なPDSによって指標と行動の仮説を変更し続ける。
・ぐるぐる図。現場からの市場変化の兆しを経営へとつなぎ、タテの知恵を回す。
異なる役割の人材が並行して洞察を加え合い、ヨコの知恵を回す。現場に価値筋への兆しがなければ潔く撤退の決断を下す。
・マネタイズ設計の3つのポイント1クライアントが明確であること2お財布までが見えていること(前提条件まで明確に)3利益を生むオペレーションモデルが確立できること。
・勝ち筋とは事業化して本格展開するための構造づくり。
・リクルートの多くの撤退事例については、撤退後もその過程が詳細に記録、分析され、一部は事例化されて研修の教材に使われたりしているほど。
・KPI設定ではきちんと価値につながるものかどうかを真摯に検証し続けること。ロジックは通っているが、オペレーションにまで落とし込めるのか、実行段階までを見据えてしつこく見直す。
・KPIに必要な条件
1 整合性 最終的な目標に向かってロジックが通っていること。
2 安定性 指標が安定的・継続的に取れること。検証できること
3 単純性 指標が少なく覚えやすいかどうか(運用にあたり非常に重要)
・価値は自然に生まれるのではなく、意識的に生み出すもの。能動的かつ積極的にマネージし、最大化、最適化を測るもの。という意識。事業に本質的な価値を与える要素は何かを見極め、事業に関わる社員が共通認識できるわかりやすい数値目標に落とし込む。売上ばかりに目を向けず、顧客への提供価値について意識合わせすること
・新規事業創造に向けてリクルート経営陣が行なっていること。人を活かす。若さを保つ。器を揃える。
・人を活かすはリボンモデルを組織に刷り込み、自主性を解放させること
悩んでいてもお前はどうしたいに答えることをひたすら求められる。
共通の理念を徹底的に刷り込み、個人を追い込むことでその潜在力を引き出さなければならない
・大企業病に陥らずに組織の若さを保つためには、常に内部での競争を奨励し、成功者を称え、全員がそこから学べる仕組みを埋め込んでおくことが有効。
・未来を予測し、必要になるであろうケイパビリティを磨く。大きな成長機会や自社にとっての脅威となりうる存在を取り込む。
Posted by ブクログ
■感想
本書冒頭でも書かれていますが、リクルートは真似できないと思われがちですが、ある意味真似できるよ、というのを言語化してくれているので、何が行われているか分かります。
リクルートの強さの秘訣は、経験上得られ、ものすごく練られている戦略があって、それが同じ方向で明確な厳格化している。これが社員に腹落ちしていて、個々が個々の頭の中で進化させているのです。
■要諦
・リボンモデル
・9つのメソッド
ステージ1 0→1
①不の発見 ニーズとは違う。不は、誰もが目をつけていなくて、既存の産業構造を変えるほど大きくて、収益に繋がるもの。
②テストマーケティング
③New RING
志は本人の心の中からしか生まれない
ステージ2 1→10前半
④マネタイズ設計 勝ち筋を見つける。つまり、勝ち筋を見つけるとは、クライアントが明確で、支払うお財布が見えていること、利益を生むオペレーションモデルが確立すること。
⑤価値KPI 良いKPIとは、全てのメンバーが答えられるものかどうか。良いKPIには、最終目標との整合性、KPIとしての安定性、単純性の3つが必要。ゼクシィの例は、資料請求葉書数ではなく、ブライダルフェア来場者数とした。何を磨けばリボンの端から中央にステークホルダーが動くか見極める。良いKPIが見つかればメンバー自身、やるべきこと、やるべきでないことが明確判断できる。必ずしも最後のステップがKPIではなく、本質ではない。
⑥ぐるぐる図
なぜ成功したか、なぜ失敗したか。縦ぐるぐると横ぐるぐる。縦ぐるぐるはホウレンソウではない。縦ぐるぐるはボトムアップ。横ぐるぐるは部門を超えたもの。
ステージ3 1→10後半
⑦価値マネ 顧客価値の認識を統一することは大事。そして、価値KPIを磨きながらPDSサイクルを回していく。なぜをマネジメントする。その結果を型化して、改善に活かす。
⑧型化とナレッジ共有 価値マネを実践するためのもの。型化して、横展開。型化は均一化が目的ではなく、型を、超えた次元のためのもの。
⑨小さなSの積み重ね 衰退しないために。持続的成長のために、現場から次の成長の兆しを捉えること。ホットペッパー、情報誌から予約サービスへ。
→不確実性の高い市場環境(アダプティブ型環境)で生き残ることに効いてくる。
そうした環境下での罠。自分自身の考えを過信する、反対意見を封じる、計画できないことを計画する、硬直した方向性、行動の遅れ、社運を賭ける、失敗を罰する、流行によって戦略を選択する。※最後の流行によって〜はよくあるのでは。
・10から先
-競争軸にスピードを加えるタイムベース競争。コスト×品質×タイムスピード。これが競争を決める要素。
-0.05-5の法則(価値を生んでいる時間は全体の0.05-5%に過ぎない)、3分の3の法則(価値を生んでない時間は、前の工程の待ち・手直し・次の工程への待ちに3分割できる)、4分の1と2と20の法則(デリバリーの時間を1/4に減らすと、資本、労働の生産性が2倍、コストが20%減る)、3×2の法則(タイムベース競争により業界平均の3倍の成長率と2倍の利益率を実現できる)
-マネタイズポイント じゃらん、GEの航空機ビジネス、ベンツのトラックリース
-自走するアジャイル Alignment(一致団結)とAutonomy(自律)の両立。
・マネジメントによる環境整備
現場の能力を最大限に伸ばすために何をすべきく考え、必要なリソースを投入することが、リクルートの経営層の一番のミッション。
人を生かす 個の尊重、お前ならどうするで抑圧から解放。高次の視点を植え付ける
若さを保つ 称賛と成功原因の飽くなき追求
器を作る ディスラプターも取り込む