あらすじ
深夜のブタペストで監禁された初対面の男女。見世物として「愛し合う」ことを強いられた彼らは、その後、悲劇の記憶を「真の愛」で上書きしようと懸命に互いを求め合う。その意外な顛末は……。表題作「透明な迷宮」のほか、事故で恋人を失い、九死に一生を得た劇作家の奇妙な時間体験を描いた「Re:依田氏からの依頼」など、孤独な現代人の悲喜劇を官能的な筆致で結晶化した傑作短編集。
...続きを読む感情タグBEST3
このページにはネタバレを含むレビューが表示されています
Posted by ブクログ
表題作を含む、6編の短編が収められています。
どれもちょっと不思議で、背中をぞわぞわ感が這いあがってくる平野氏らしい物語。「火色の琥珀」は、火に性的興奮を覚える(?)いわゆる火フェチな男性の話。リアルで怖い。本当に変態的な(失礼)フェチの人とかに取材して書くのかなぁこういうの。想像力のたまものかなぁ。
「透明な迷宮」は海外で変な集団につかまってしまった男女のその後…。これも最後が怖い。AをBと思って行動していたら実はBはAだった、それで今度こそ本当にBをAと思って行動しようと思ったら今度はAがBだった、みたいな。結局どこからどこまでが自分の真実の感情なのかわからない、どうすりゃよかったのかもわからない~。こわーい!
「Re:依田氏からの手紙」は時間感覚に異常をきたした男性の物語。1時間が1分に感じられたり、逆に1分が1時間に感じられたりする。退屈な授業が長く感じられて、楽しいことをしていると時が経つのがあっという間に感じられる…という経験は誰でもある。それがすごぉく極端になって、日常生活に支障が出てくる。これも描写がリアルでぞぞぞぞっとする。小説の構造も、本人になりかわって、その体験を小説風に仕立てた人物が、最後に本人に「ところで、いまの一、二分のやりとりはどれくらいに感じられるのか?」と聞くと、さらりと恐ろしい答えが返ってくる、という展開でスゴイ。
Posted by ブクログ
⚫︎受け取ったメッセージ
奇妙、官能的、美しい短編集。
⚫︎あらすじ(本概要より転載)
深夜のブタペストで監禁された初対面の男女。見世物として「愛し合う」ことを強いられた彼らは、その後、悲劇の記憶を「真の愛」で上書きしようと懸命に互いを求め合う。その意外な顛末は……。表題作「透明な迷宮」のほか、事故で恋人を失い、九死に一生を得た劇作家の奇妙な時間体験を描いた「Re:依田氏からの依頼」など、孤独な現代人の悲喜劇を官能的な筆致で結晶化した傑作短編集。
⚫︎感想(ネタバレ)
平野啓一郎さんの作品は、静かで美しい空気が感じられて好き。
1.消えた蜂蜜 レアな特技、ハガキ全写し。
2.ハワイにさがしに来た男 毎日自分を探している男
3.透明な迷宮 双子
4.family affair 拳銃
5.緋色の琥珀 火への性的興奮
6.Re:依田氏からの依頼 時間が遅く流れる
Posted by ブクログ
人間のアイデンティティと愛の形をいろいろな視点から実験的に考察した短編集。
私の定義とは?
私は誰かに代替しうるのか?
愛も代替しうるのか?
私は他人や映像を通しても私そのものなのか?あるいは別の私が映るのか?
独立した短編作品の中で問われるのは、このように
私をいろいろな切り口、視点で見たときに、
何が見えるか、どうなるのか?
またそこに愛が存在しうるか?という問題だ。
他者の前で見知らぬ男女が性交する時に他者が見る私達。映像を通してもう一人の自分を観る恋人や私。近しい誰かと入れ代わる私。他人を真似るある行為が得意な人、、。
非日常的なエピソードもあるが、結局その人を特定するもの、またアイデンティティとはなんなのか?を問い続けている作品のようだった。
個人的には絵画に例えると、これらの短編はそれぞれはデッサンや習作で、最終的には大きな作品(絵)に繋がるイメージ。
そして、その大きな絵が「ある男」等の作品ではないかと。
最初に読んだ時はここまでの感想はなかったけど、「ある男」が発表された後にこのような感想を持ったので書き留めたい。
Posted by ブクログ
不思議な話だったな。
非現実的でふわふわした感じが村上春樹っぽいなと思った。
「消えた蜜蜂」
人間は自分が気にな物事の確証や反証を得るために、
人生をかけるところがある。それを感じる話だった。
Kは実家の養蜂場が廃業して、兄が出て行っちゃったことが悲しかったんじゃないのかなと思った。
証拠不十分で敗訴になったこと、それ以降近隣住民が同情的だったこと全てが納得いかなくて、
ずっと怒っていたんじゃないかな。
はがきを真似して書いて、「クレームがこない」という事を体験することで、敗訴にした世間だったり同情的だった住民の無知を確認して自分を納得させているように感じた。