あらすじ
本書では「広告が売り上げに影響したのか?」「ある政策を行ったことが本当に良い影響をもたらしたのか?」といった、因果関係分析に焦点を当てたデータ分析の入門を展開していきます。なぜ因果関係に焦点を当てるかというと、因果関係を見極めることは、ビジネスや政策における様々な現場で非常に重要となるためです。また、この「因果関係の考え方」について、数式を使わず、具体例とビジュアルな描写を用いて解説していきます。
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本書は、計量経済学を数式を用いずに分かりやすく記述がされた入門書である。
自分は経済学に疎いため、社会に対するデータ分析手法を用いた効用等を調べる試みが計量経済学や公共経済学に帰着することを全く知らなかった。疑問点や興味が湧いた際に専門的なことを調べようと思う際は該当する学問分野を調べることが必要になるが、その筋道を示してくれることは大変ありがたい。
数学の知識が本来必要になるであろう分野に、オバマ大統領の選挙HPの例を取り上げるなど、具体的で興味を抱きやすいトピックが選ばれているところに初学者への配慮を感じる。
また、本書はグラフが多用されているが、ひとつのグラフに対して数ページを割いて読み方や読み取れる情報の解説があるため、アレルギーがある方にも比較的抵抗なく読み進めることができるだろう。
データを扱う方だけでなく、データ分析を本格的に学ぶ向きのある方が概要を知るのに好適であると思われる。
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一線級の研究者によるデータ分析の手法がとても分かりやすく書かれた良書。
突き詰めると、比較できる状況をいかにして作り出せるかが大切ということだろうか。
本筋とは逸れるけど、「何らかの結果を出さなければらならいのは間違い。データ分析の結果、なんの結果も得られなかったということも、十分立派な研究成果」という記述が印象的でした。
因果関係は大事
第60回日経・経済図書文化賞、第39回サントリー学芸賞受賞。2017のベスト経済書かもしれない。データで因果関係を知るために必要なことが分かる
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会社の推薦図書にあり、データ分析がマイブームであるため読んだ。
物事の因果関係を特定する際の実験に関して書かれた本。
事象Aが起こった時にその事象の原因Bについて予想することはできても断定することは難しい。なぜなら、B以外の原因も考えられるためである。
例えば地球の平均気温が上がっているという事象に対して、二酸化炭素を大量に排出しているからだと予想することはできても、二酸化炭素以外の要素(その他の物質、地球の気温周期、太陽活動の周期)の可能性を排除できないため二酸化炭素が原因と断定することは難しい。
だが、本書だと特定の前提や環境、条件などを置くことにより限定的であるが「BによってAが起こる」ことを検証する手法を紹介している。
面白かったが仕事に活きることはないと思われる
好奇心のみ満たしてくれた。
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データ分析の中でも因果関係に焦点を当てた本書。はじめにデータから因果関係を導き出すことの難しさに触れた後、その因果関係を分析するための方法を紹介していく。紹介される方法は、ランダム化比較試験(RCT)、RDデザイン、集積分析、パネル・データ分析の4つである。
本書が最も特徴である点が、「数式を用いない」点である。著者はあとがきで「中高生からでも十分読み進められる入門書という側面を重視し」(伊藤、2017、p.271)たとしているが、まさにその通りであるように思う。数式を用いないため、完全に理解をするには至らないかもしれない。しかし、データの因果関係について、新たな視座を持つことができる良書である。
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データ分析、すなわち、統計学の本であるが、数学的な説明を最小限にとどめた上で、統計学の基本的な考え方を説明しているもの。説明はとても分かりやすい。特に「因果関係」と「相関関係」を論じた「第1章 なぜデータから因果関係を導くのは難しいのか」が面白かった。
■「因果関係」は、XとYが相互に関連しているだけの「相関関係」とは全く異なる
■しかし、ビジネスや政策評価、新聞やテレビなどの報道において「因果関係」と「相関関係」が混同されている場面は非常に多い
■ビジネスの場でも政策形成の場でも因果関係を見誤ると誤った判断につながり、大きな利益損失や税金の無駄遣いを招いてしまう
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この本でも相関と因果をしっかり区別すべきことを強調した上で各データ分析手法を解説している。
RCT: ランダム化比較試験、自然実験(RDデザイン、集積分析、パネル・データ分析)
本書執筆にあたっては最近メディアへの露出も多い成田悠輔氏も携わっている模様。
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データをどのように扱えば良いのか?結果だけを過大解釈してしまう弊害など、データを扱うにおいて重要な考え方が数式なしで書かれていて、非常にわかりやすかった。
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【因果関係の証明】
原因と結果のズレに敏感になる。
十分かつ偏りのないサンプル数、同条件が必須
可能なら、介入、比較グループそれぞれで介入前後のデータを見る。
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わかりやすい。計量経済学 ビッグデータからの因果関係のみきえわめの考え方 RCT RDデザイン 集積分析 パネル・データ分析
行政データ経営データ活用紹介
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データ分析を計量経済学の観点で分かりやすく説明してくれている本書。
数学的知識は一切必要なく、電気代の値上げと電気使用量の変化の関係など、我々にとっても身近なテーマにどう答えを出すのかを解説してくれている。
主な手法としては、ランダムに調査サンプルを抽出するRCT、ランダム抽出が難しい場合、擬似的にRCTに近い構造を作り出す、RDデザイン、集積分析、パネルデータ分析が紹介されている。
こうした分析は、対象となる範囲での分析結果としては興味深いものの、例えばそれを日本全土などに適用する政策に落とし込むには大いに難度が高まるなど、現時点での限界にも踏み込んであり、良書と言える。
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データ分析の入門書としては最適。実例が多く掲載されており、データ分析がいかに重要かがよく伝わってくる。特にオバマの選挙戦略は結構面白かった。意思決定1つ変わるだけでこれだけ結果も変わってくるということを知ると、データ分析の可能性を改めて感じる。
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データは存在するだけでは価値はない。そのデータをどう利用するかに価値がある。この広告(X)と今年の売り上げ増(Y)の動きは連動しているが、本当に因果関係は成立しているのか?本当は別の原因が見えないところに存在しているのではないか?本書はデータから物事(XとY)の因果関係を読み解く難しさから始まり、その因果関係を読み解くためにはどういった手法があるかについて順番に紹介している。
本書ではRCT方法をはじめとする約5つの手法を小難しい数式を使わず、単純明快に解説してくれるため、内容がすんなり入ってくる。特にオバマの選挙運動中のウェブサイトにおけるRCTは例が分かりやすく、理解が進んだ。どの方法にも長所や短所があり、使い方はその時々で取りたいデータを元に選べばよい。ただ、XとYについてある因果関係が成立したからと言って、データ分析の対象となる主体よりも広い範囲で同じ理屈が通用するかという「外的妥当性」は別に考えなければならないという点は、気を付けなければならないと思った。1から10という範囲で因果関係が見つかったからと言って、必ずしも1から1000でも同じことが言えるか、それは別問題になる。
また、第6章で紹介しているオバマ政権下で進んだ「エビデンスに基づく政策形成」は興味深かった。単にデータだけに基づくのではなく、データの因果関係に基づいて政策がどのような影響(プラスもマイナスも)を及ぼすのかを検討することがより良い選択につながるのではないかと思った。果たしてトランプ政権時にこの政策がどうなったかはわからないが…
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統計学を実際のビジネスの場で活用した事例が数多く載せられており、非常にわかりやすい。
因果関係と相関関係の違いがわかっただけでもよかった。最後に次のステップの本も紹介されているので読んでみようと思う。
Posted by ブクログ
読書的には、正しくデータを分析して、そこから得られる科学的なエビデンスが、企業や政治のあらゆる取り組みにうまく応用できるということだ。
正しくデータを分析したいとき、外部の要因が調べたい因果関係に影響してくると、そのデータは不十分となる。
データ分析の方法としては、RCT、RD、集積分析、パネルデータ分析が本書では紹介された。
それぞれには、メリットデメリットが存在し、時や状況に応じて使い分ける必要がある。
日本ではまだまだ公的なデータ分析が進んでいないので、国はもっと、専門家の情報へのアクセスを進め、産学官連携し、得られた科学的なエビデンスに基づき、政策を決定していくべきだと述べられている。
Posted by ブクログ
データ分析を用いて因果関係に迫る方法論の入門書。数式を一切用いず、因果関係を見出だすための思考法・アプローチ方法を実例を示しながら、直感的に理解できるように構成されている。基本的な考え方を理解しているだけでもとても有益だと思う。
Posted by ブクログ
数式を使わないでできる因果分析の解説
分析じゃなくてデータ選択で因果を図る手法の説明が主
因果分析の説明は式が入ると難しいからこういう本でイメージ作るのが良い
介入効果は根本的には観測不可能。平均介入効果として調べられるようにする
ランダム化比較試験では透明性・説得力のある説明が可能
RDデザイン:非連続で分析するRDデザイン、
集積分析:ヒストグラムの偏りを調べる
差分の差分法:平均トレンドの引き算で因果を調べる
専門家:問題把握、問の検証、データの検証、実験のデザイン、分析とプレゼン
外的妥当性と内的妥当性、介入の波及効果
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境界線で非連続に変化する状況に注目する(RDデザイン)
例:ある年齢で制度が変わる
階段状に設定されている制度に対する反応(集積分析)
例:税率、補助金、割引
複数のグループの複数期間のデータを比較する(パネル・データ分析)
例:ある年から特定の対象への制度が変化した場合
電力価格が上昇すると、電力消費量は低下する。モラルに訴えるよりも、価格を変化させる方が効果は高い。
Posted by ブクログ
外部の研究結果のみではなく、筆者が関与した研究について論じられていることがよかった。
計量経済学や因果推論についてなにかしらふんわりと理解があり、より詳しく知りたい方におすすめ。
まったくの初学者には中室さんの書籍をすすめたい。
Posted by ブクログ
仕事上データ分析に触れることもあるので購入。
データ分析の代表的な手法や具体例を交えて分かりやすく書かれている。あとがきにもあるように中高生でも分かる内容になっている。データ分析の重要性を話すことはあるがどのように分析するのか、分析するまでにどのような仮定や準備が必要なのかについては理解出来ていないことを気づかせてくれた。
文系理系に関わらずこれからデータを活用していく(これからはほとんどの人)にとっての入門書になる本
Posted by ブクログ
データサイエンスの入門書として読んだ。
大学とか仕事とかで 本当に触れたことがない人には良書だと思う。もしくは、WEBとかで一定の知識がある人が頭の中を整理するため、とか。
最後に、更に学習を進めるための参考図書をレベル別に紹介してくれてるのがありがたい。
Posted by ブクログ
データ分析の基本を広く扱ってくれる。
因果関係の正しい認識には技術や意識づけが一定必要だと思うが、この本はそれを分かりやすく伝えてくれる。実例もたくさん扱っているため頭に入ってきやすい。
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データ分析の入門書
右も左も分からない私が興味深く読めた1冊です。
因果関係のお話は特に面白いです。情報に溢れた世界で正しいものを見つけるひとつの指標になると思います。
Posted by ブクログ
統計学を学ぶときに「相関関係はわかるが因果関係は分からない」ということを何度も言われる。これを解決するための手法の第一がRCTなわけだが、その他にも因果推論のための統計学に関する話題をよく見かける。
本書はジュディア・パールの「因果推論の科学」があまりに難しかったので、少し予備知識をいれるために一読。なんでもかんでも数学的に因果推論できるわけでなく、やはりそれなりのデザインを組んでからデータ収集をしないと交絡因子を解消できないということか。
Posted by ブクログ
データをベースにしてできることの引き出しを増やせたらと読んでみた1冊。予想と違って、事例より理論の話、それも「どうそのデータを得るか」の手法の話が多く、アンケート関連やデータの取り扱い関連の本でまずはじめに取り上げられる内容が論文形式に近い形で書かれていて「それは知ってます」という感じの1冊でした。どちらかというと、「こういうデータ2つからどう相関関係を見出すか」といった内容を期待していただけに、少しストライクゾーンから外れた印象があった。次行ってみようと思います。
Posted by ブクログ
【感想】
コロナウイルスが猛威を振るい、ワクチンの開発・治験が急ピッチで進められる中、「ランダム化比較試験」という単語をニュースで初めて聞いた人も多いのではないだろうか。
わたしもその一人である。自分にとってデータ比較分析とは、治療薬を開発するステップの1つという認識でしかなく、自分の生活の近くに根差しているという認識は無かった。
しかし、「データ分析」は今後誰でも使う/使わざるをえないスキルである、と本書は述べる。
「データ分析」と名付けるとあたかもデータサイエンティストの専門分野という錯覚を起こしてしまうが、これを「因果関係を探る力」と読み換えれば、どの職種においても必要不可欠なスキルであることは明白だ。
どうして比較の際には2グループが必要なのか、調査対象項目以外を同一条件に置かなければならないのか、実験の参加者に詳細な実験内容を知らせてはいけないのか。そうした分析の際のイロハを0から解説するとともに、ランダム化比較分析が行えない場合の代替手段も丁寧に記されている。
少なくない数のグラフが登場するが、数学の知識は不要であり全く難しくない。まさに初学者にうってつけの本であった。
藤井保文・尾原和啓著『アフターデジタル』では、ビッグデータを収集する際に陥りがちな「罠」について説明されている。データの利活用方法を検討せずにビッグデータを集めるだけでは、ただ個人情報を含んだ数字の羅列がストックされるだけで、何の付加価値ももたらさないということだ。
そして、「データの扱い、分析、解釈」を行うのは人間である。不明瞭な情報群に対してどのような実験を行い、得られた結果にどんな意味付けを行うか。そして、実験結果をいかにして現場に活用していくか。
これらは全て「因果関係を読み解く力」という一本の線で繋がっているのだ。
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【本書のまとめ】
0 あらすじ
データ分析の力が、これまで以上に多岐に渡る職種において要求されるようになってきている。
本書では、データ分析の考え方で最も基本になる「因果関係の見極め方」について解説する。
1 因果関係の立証は難しい
「ある要素(X)が結果(Y)に影響を与えた」という「X→Y」の因果関係を立証するのは難しい。それは、
①他の要因が影響していた可能性がある(ZがXとYに影響を与えている)
②逆の因果関係であった可能性がある
からだ。
因果関係と相関関係(XとYが相互に関係しているだけ)をごっちゃにして語られることがあまりにも多い。ビジネスの場でも政策形成の場でも、因果関係を見誤ると誤った判断につながり、大きな利益損失や税金の無駄遣いを招く。しかも、因果関係の立証の難しさは、データの観測数が増えることだけでは解消しないのである。
2 ランダム化比較試験
因果関係をデータ分析によって明らかにする最良の方法は、「RCT(ランダム化比較試験)」である。
RCTでは、介入グループと比較グループ(介入が起こらなかったグループ)の平均値の差を求めることで、効果測定を行う。
●RCT実施の際の鉄則
・適切なグループ分けをする
・グループ分けは完全にランダムに行い、参加者の意思を介入させない
・各グループには十分なサンプル数を振り分け、平均値計算の際の標準誤差を小さくする
●RCTの利点
・因果関係が科学的に示せる
・分析手法や結果に透明性がある
グループ分けの際のランダム化の方法としては、「単純ランダム化法(乱数で割り振る)」を使えばよいが、サンプル数が少ないとどちらかに偏る可能性があるため、「ブロック・ランダム化法(同じ特性を持つ参加者をブロックに分け、その後乱数で割り振る)」を行う。
●RCTの弱み
実験に当たって費用・労力・各機関の協力が必要になる
3 自然実験
RCTが実施できない場合は、「自然実験」という手法を用いることができる。自然実験とは、あたかも実験が起こったかのような状況を用いて因果関係を分析する手法だ。自然実験の代表的な手法の一つとして、「RDデザイン」が挙げられる。
●RDデザイン
世の中に存在する「境界線」を上手く使い、因果関係に迫る自然実験手法。
(例)日本では、69歳から70歳になると、外来患者が非連続的に10%上昇する。まるで境界線のようにいきなり患者数が増加するのだ。
→医療費負担が3割から1割に減るので、70歳になった途端に医者にかかる人が増えるから
RCTと異なる点は、「実際には起こらなかった潜在的結果」――医療費で言えば、70歳になっても自己負担額が3割のままであり続けること――が「観測できない」ことである。RCTは違って、RDデザインは仮定のまま比較グループとの差を語らなければならない。
では、どうやってRDデザインの信用性を担保するのかといえば、「非連続的にジャンプしているか」、要は「自然状態と比べて、不自然な増加をしていないか」を検証しているのだ。
●RDデザインの鉄則
・境界線を境に一つの要素(X)のみが「非連続的に変化する状態」を見つけ出す
・境界線付近で、X以外の要素が非連続的に変化していないかのチェックを行う
●RDデザインの強み
・過程が成り立てば、境界線付近であたかもRCTが起こっているかのような状況を利用できる
・RCTが実施できないときに有効な分析手法となる
●RDデザインの弱み
・RDデザインに必要な仮定は、成り立つであろう根拠を示すことはできるが、成り立つことを立証はできない
・境界線付近のデータに対しての因果関係しか主張できない。そのため、実験参加者全体への因果関係を主張できるRCTに比べて有用性に欠ける場合がある
4 集積分析
集積分析とは、階段状の変化を上手く使い因果関係に迫る手法。
何らかのインセンティブが階段状に変化する(例:所得税の税率)を利用し、インセンティブが大きく変わる境界点でのデータの集積を分析することで、人々や企業がインセンティブの変化に反応した因果関係を検証する。
●集積分析の強み
・過程が成り立てば、境界線付近であたかもRCTが起こっているかのような状況を利用できる
・RCTが実施できないときに有効な分析手法となる
●集積分析の弱み
・分析に必要な仮定は、成り立つであろう根拠を示すことはできるが、成り立つことを立証はできない
・境界線付近のデータに対しての因果関係しか主張できない。そのため、実験参加者全体への因果関係を主張できるRCTに比べて有用性に欠ける場合がある
5 パネル・データ分析
RDデザインや集積分析のように、境界線が用意できない場合にはどうすればいいか?
一つの可能性が「パネル・データ分析」である。「パネル・データ分析」とは、観察対象を複数の期間において観察し、別のグループと比較することである。
●パネル・データ分析の鉄則
・介入が起こった時期の前後のデータが、介入グループと比較グループの両方について入手できるか確認する
・平行トレンドの仮定が成り立つか確認する
「平行トレンド」→もし介入が起こらなかった場合、介入グループの平均的結果と比較グループの平均的結果は平行に推移する。
・平行トレンドの仮定が成り立つと断言できた場合、2つのグループの平均値の推移をグラフ化し、介入効果の平均値の測定を行う
●パネル・データ分析の強み
介入グループに属する全ての主体に対して介入効果の分析が可能であり、分析できる対象の範囲が狭いRDデザインや集積分析に比べて優れた点である。
●パネル・データ分析の弱み
仮定が非常に難しい。X以外の要因が重なれば、たちまち平行推移が成り立たなくなってしまう。
また、複数機関のデータを介入グループと比較グループの両方について収集する必要がある。
6 実践編
どうすればデータ分析をビジネス戦略や政策形成に生かせるのだろうか?
①データ分析専門家との協力関係を築く
データ分析とは、ただデータを取ってそれをエビデンスとして示せばいいというものではない。収集すべきデータは何なのかといった、「コンピュータにデータが上がって来る前の段階も含めたスキルや経験」が重要になる。そのため、データ分析の結果を利用する「現場の人間」とデータ分析官の協力が必要である。
②データへのアクセスをひらく
なるべく多くの団体・企業が、行政データ・経営データを利用できるような環境を整える。
7 データ分析の限界
①データ自体に問題がある(数値が正しく記録されていない、大量の欠損値がある、サンプルが偏っている)ときは、優れた分析手法でも解決できない。
②実験や自然実験で得られた分析結果が、分析で使われたサンプル以外にも適用できるかわからない→「外的妥当性」の問題。データの取得範囲に依存する。
③データ分析者やデータ分析のパートナーの意に沿わない結果は世の中に出てきにくい。
④介入グループに施した介入が比較グループにも「波及効果」を持つ可能性がある。
⑤小規模の実験の結果と大規模な政策の結果がズレる場合がありうる。
Posted by ブクログ
入門書。優しく入ってくるが、抜けてしまうのも早いかも。
データ分析は、比較対象をしっかり選ぶことでより有益かつ正確性が増す。が、身近なデータで何に適用できるのか、わからない。
Posted by ブクログ
データ分析のお勉強。
因果関係をデータ分析によって明らかにする最良の方法はRCT(ランダム化比較試験)
RCTの弱み:実験の実施にあたって費用・労力・時間・各機関の協力が必要なこと。
RCTが実施できない場合「自然実験」という手法を用いることができる
「RDデザイン」は世の中に存在する「境界線」を上手く使い因果関係に迫る自然実験手法
RDデザインの弱み1:必要な仮定は、成り立つであろう根拠を示すことはできるが、成り立つことを立証はできない
RDデザインの弱み2:境界線付近のデータに対しての因果関係しか主張できないため、実験参加者全体への因果関係を主張できるRCTに比べて有用性に欠ける場合がある
「集積分析」は、階段状の変化を上手く使い因果関係に迫る手法
集積分析の弱み2:あくまでも階段状に変化するインセンティブに反応した主体に対しての因果関係しか分析できない。
複数のグループに対し、複数期間のデータが入手できる場合、パネル・データ分析を利用できる可能性がある
パネル・データ分析の弱み2:RDデザインや集積分析における仮定に比べ「平行トレンドの仮定」は非常に難しい仮定であり、実際には成り立たない状況も多い
データ分析の結果が分析で対象とされた主体以外へも適用可能なのか、という「外的妥当性」の問題は非常に重要であり、外的妥当性と内的妥当性の両方を加味した場合、どの分析手法が優れているかは状況によって異なってくる