あらすじ
「孤独がぼくを押し潰す。ともだちが欲しい。本当のともだちが!」
パリ郊外モンルージュ。主人公のヴィクトールは、まるで冴えない孤独で惨めな貧乏青年。誰もが勤めに出ているはずの時間、彼だけはまだアパートの部屋に居残っている。朝寝坊をして、なにもない貧相な部屋でゆっくりと身繕いをし、陽が高くなってから用もないのに街へと出て行く。誰かともだちになれる人を探し求めて……。
職ナシ、家族ナシ、恋人ナシ。「狂騒の時代」とも呼ばれた1920年代のにぎやかなパリの真ん中で、まったく孤立し無為に過ごす青年のとびきり切なくとびきり笑える〈ともだち探し〉は、90年もの時を経て現代日本の読者に驚くほどストレートに響く。かのベケットが「心に沁み入る細部」と讃えたボーヴの筆による、ダメ男小説の金字塔。 [解説]豊崎由美
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Posted by ブクログ
最初の入りの文と、最後の文の味がある。今までの本で一番好き。
主人公は孤独で友達が欲しいけど、高飛車で変わり者でなかなかうまくいかない。うざいなと読んでて思う時もあるけど、最後の最後に正直になった彼はなんだか可愛らしくも感じる。
寂しくてたまらなくて、紛らわすのに必死になる彼の気持ちには少なからず共感した。
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一つ一つの行動がオチがあって面白い。友達が欲しい淋しさや人への妬みが、それが100%ではなく70%くらいの感じ。あとは自由気ままなポジティブさ!人間関係で失敗した時に読みたい小説。
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愛されたい、特別でありたい、認められたい、感謝されたいという誰しもが多かれ少なかれ持っている欲を固めて具現化したような主人公が空回りし続けて誰にとっての何者にもなれない様子が、ユーモラスに描かれているからこそ余計に辛く哀しかった。最初はいけ好かないと思っていた主人公の事が次第に放っておけなくなって感情移入するようになり、最後は涙ぐんでしまった。また、主人公と自分の間にはそのような欲を上手く隠して社会に適応している(フリをしている)かどうかの差しかないように思い、自分を見つめ直す契機にもなる。
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全て奪い去られてしまったって気分になったことはあるかい?自信も尊厳も全て朽ち果てて、冗談どころか本音すら嘲笑われる状況には?無いのなら残念なことに、この本の魅力を伝えることは叶わないのかもしれない。傷痍軍人手当で食い繋ぎ、「ともだちがほしい」と言いながら本当に望んでいるのは自分よりクズで不幸な人間。ヴィクトールが本当に恐れているのは孤独ではなく近づこうとしてまた遠くなる届かない他人との距離だ。お前は俺か。どん底の人生から生まれるユーモア。最低の人生を描ききることの出来る、最高の人生。クズ野郎文学の大傑作。
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希望がない(結局ともだちをつくることはできない)話で終わってしまうが、主人公の滑稽な行動によるものなのか、読んだ後は暗い気持ちにはならなかった。独りよがりな想像力と行動が、独りから脱却できないのだが、孤独を感じている人には共感できる部分もある。
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貧しく孤独な主人公は愛してくれるものを求めて街をうろうろ。
自業自得だけどとっても切なく感じるのは不思議なユーモアとどこか共感しているから。
「人間失格」や「地下室の手記」もそうだけどこの本もきっと“自分のことのようだ”と思う人がたくさんいるかもしれない。
きっと孤独は自我を大きく膨らませるのだ。
Posted by ブクログ
孤独なフランス人青年の残念な毎日。
1920年代のフランスといえば、ウディ・アレン映画「ミッドナイト・イン・パリ」で描かれた憧れの世界である。
舞台はおおむねブルーワーカーたちが行き交う通りやレストランが多いが、当時を生きた作家によっててらいなく描きとられた街並みは、それでもやっぱり美しい。
生活感あふれる青年の暮らしぶりの描写がなんだか愛しい、日曜日に読むのにぴったりな小説。
Posted by ブクログ
あらすじ:
戦争での負傷、戦後フランスで恩給を収入源に働かずに生きることを選んでいる主人公。
その生活は、贅沢をすることなく慎ましいもの。
そんな彼がただ一つ求めるものは「ともだち」。
それも唯一無二の親友と呼べるような人。
朝から日が沈むまで、思い耽りながら歩き、探し続ける「ともだち」を。
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一度目の読後は率直に、この人嫌い!
「『ドラえもん』の(アカン時の)のび太を見ているようで辛い」という感想でした。
二度目は読書会にて。
読書会のなかで皆さんから当時の世相や背景を教わったり読み深めるうちに距離感がうまくとれていく。
「なんだか面白いな」とユーモアにも気付くことができました。
だが、やはり好かない主人公。
そして現在。
職場の後輩ちゃんたちに本のエピソードを語っていくうちに、主人公への愛が芽生えていたことに気付く。
「ほんとうに困った子」という距離感で愛でてる!
読み深めて何かが芽生えたのか。
共感する部分はもちろんあります。
大きさは違えど自分も過去に通過したことのある感情だなと感じるから、主人公の心情や描写に対してわかる気持ちもある、けれど。
『わかる。わかるよ。わかるけど、それ、やったらあかんやん!』となり、主人公の珍妙な行動の末に己が身に降りかかる報いの痛々しさに読み疲れてしまう。
でも。
人に語るとき、この本の魅力を語らずには居られない。
そのユーモア、また主人公に対してもどこか憎めない愛らしさを含ませて話してしまってる。
やはり好きなのか?否…
☆第一印象がナシ!であっても、
そこで「NO!」を突き付けず読み返せば、不思議と愛らしい一冊になる、かも、しれません!
Posted by ブクログ
「ぼく」は戦争で傷を負い、職もなく、年金で暮らしている。家族も彼女も、友達も、いない。孤独が僕を押し潰すというぼくは、毎日本当の友達を探してアクティブに街を散歩する。
けれど、彼は何とも残念な人で、自意識過剰でプライドも高く、女好き…。すぐ通りがかりの女の人を好きになったり、逆にこの女の人はぼくのことを好きなんだ…なんて妄想し始める。
ストーカーまがいのことも軽くやってのける。
人の気を引くために、川沿いで今にも自殺しそうな演技までして、逆に他の人の自殺のお供をさせられそうになったり…
個人的にはかなり気持ち悪い人だと思った。だけど、多くの人の感想を読んでみると、彼のことを憎めない、とか、この本今までで一番好き、とか書いてある。うーん、私がシビア過ぎるんだろうか??
何だかやることなす事、直ぐ変な方に行ってしまう「ぼく」。面白い人だなぁって笑っていいのかな?これってちょっと病的なんじゃ?なんて複雑な気持ちになったりもしてきて…
ただ、こんな状態でも引きこもらず、失敗しても、あー僕は孤独だ、友達が欲しいと果敢に毎日外に出ていく主人公の逞しさは、かなりすごいと思う。
妙に気にかかる一冊でした。
Posted by ブクログ
……思い当たる。
ひきこもりニート経験のある者は共感するだろう。
空虚を詩的なことばで埋めるかんじ。
実際やってることはしょーもないのだが。
タイトルは傑作。
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自意識過剰で自分勝手で妄想癖もあり、すぐにストーカーになりそうな男の話。
最後は根性をみせるのかと思って読み進めたが、最後までダメだった。ダメ男の金字塔。
Posted by ブクログ
自己憐憫、自意識過剰、自己中心、そら友達できんわと鼻で笑いたくもなるが、自分にもこんなところあるよなという自覚から目を背けているだけかもしれない。それに比べたらバトンは潔く清々しい。
Posted by ブクログ
うーーん、私はこれはどうもアカン…と思いつつ、最後まで1日で読み切ってしまったのはこのダメすぎる主人公が最後までずーっとダメダメなままで妄想炸裂で、あまりにも痛々しかったからなのかもしれないが。
帯の豊崎由美さんの惹句を見て買ってみたのだけれど、そして小説としては確かに先が気になる、ある種うまい話ではあるのだけれど。小さないくつかが起きる他は主人公の身の上にはほとんど何も起こらない。いや起きるんだけど主人公がいつも変わらない調子なので何も起きてないように見えてしまう。んで、自分の問題を省みることなく(反省するときはとっても的外れ)最後までそのまま。こういう人ってある意味強いよなと思うけど、悪いが私はこの人と“ともだち”にはなりたくないなあ。たぶん数分でイライラして終わる気が。