あらすじ
不治の病を宣告された母が愛する娘のために選び取った行動をつづる表題作、明治時代の満州にやってきた熊狩り探検隊一行の思いがけない運命を描いた「烏蘇里羆(ウスリーひぐま)」など、あたたかな幻想と鋭い知性の交錯を透徹な眼差しで描いた16篇を収録した、待望の第二短篇集
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Posted by ブクログ
ケン・リュウ第2短編集。
ショートショートのようなワンアイデアで切れ味勝負のような作品から、中編と読んでもいいようなちょい長手作品まで、飽きることなく捨て作品なしの良質なSF宝箱である。上下2段組み500Pのボリュームはさすがにズシンときたが、これも掲載作の密度が濃いからで、決して水増しじゃないということの証明。
どの作品もそうだが、オリエントっぽいテイストが漂うのがよい。チャイニーズアメリカンである作者ならではの作風が強みになっている。時には郷愁が漂い、時には生命力を感じる。
どの国にもどの民族にも歴史や物語があり、誰にだって人生がある。あの国はダメだとか、あの民族は劣っているとか、あいつらはワルいとか、安易に国家や民族や集団にネガティブなレッテルを貼るのは怖いことである。差別につながることは勿論のこと、硬直した非寛容な思考は自らの成長すら阻害する要因になる。勿論「犯罪者集団」とか「危険な思想団体」はあるし線引きは必要なんだけど。
所謂中国や韓国を無意味に差別するだけの「レイシスト」であったら、この本の魅力は伝わらないだろうし、分かろうとしないんだろうな。自省を込めて思うんだが、ストレッチで稼働域を広げることはフィジカルだけでなくメンタルにも必要なことなんだろうな。
この本は、メンタルをほぐしてくれる効果も抜群にあります。
Posted by ブクログ
著者の実力が判る短編集。様々なSF的素材を上手いとうならせる料理法で絶妙な作品に仕上げている。それぞれに味があり面白かったが、題材はありがちだが残されし者が心に残った。人としての尊厳と子供たちの未来の天秤。以外に早くその時は訪れるのでは?
以下 覚書
・ウスリー羆:バンパイヤ
・草を結びて環を銜えん:揚州大虐殺
・重荷は常に汝と共に:異世界の税金
・母の記憶に:ウラシマ効果
・プレゼンス(存在):遠隔介護
・シミュラクラ:3次元カメラ?の発展版
・レギュラー:ハードボイルド探偵
・ループの中で:遠隔戦争
・状態変化:魂が氷だったら
・パーフェクトマッチ:ビッグデータ=ビッグママが支配する世界
・カサンドラ:スーパーマンの相手役
・残されし者:電脳化を拒否した人の末路
・上級読者のための比較認知科学絵本:様々な生命形態
・訴訟師と猿の王:揚州大虐殺の記録を守ろうとした人
・軍神関羽のアメリカでの物語:1800年代後半のアイダホ中国人入植
・輸送年報より長距離貨物輸送飛行船:飛行船で甘粛州からラスベガスまで荷物をお届け