あらすじ
来たるべき自動運転車社会のインパクト、最新技術を丁寧に解説!
ごくありふれた存在だった車が、私たちの生活を一変させようとしている。
移動ロボット工学が急速に進歩し、車は今や、私たちの命を預けられる最初の本格的な自律ロボットになりつつある。
運転を自動化する試みは、1世紀近く前に始まって以来、失敗を繰り返してきた。だが近年になって、ハードウェア技術が進歩し、
「ディープラーニング」と呼ばれる新世代の人工知能(AI)ソフトウェアも生まれた。
それにより車は近い将来、不確かな環境でも、人間並みに安全に移動できる能力を持つようになるだろう。
この車の進化の物語を伝えるために書いたのが本書だ。
・車が知能を持つ輸送ロボットにどのように変わっていくか?
・ドライバーレス・カーは自動車産業にどんな影響を及ぼすのか?
・毎日退屈で危険な運転をしていた状態から、快適かつ自由に移動できる状態になると、街はどう変わるのか?
・過去60年近くに及ぶ自動運転の失敗の歴史とは?
・無人運転を可能にする最新のハードウェアやソフトウェアのテクノロジーとは何か?
こうした疑問を一つひとつ、丁寧に解き明かします。
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Posted by ブクログ
「自動運転」の現在のみにフォーカスをあてず、長年の研究の系譜に置こうとしていることが分かり、バズワードさが消えていて冷静に捉えている印象を受けた。
ようやく自動運転カーを実現するための環境や技術がととのってきた、という論旨になっている。
何が欠けていたのか、というと「物体を認識するための中位制御技術」であり、カメラやセンサーの類いと、それを理解するための人工知能。
生物の進化と重ね合わせている点も面白く、視覚情報を獲得したことにより爆発的に進化が起ったように、自動運転でも「センサー」という視覚とそれを理解する頭脳を得たことで、実現に向けた環境が整い始めている。
著者は(安全な)自動運転の実現に向けては、グーグルと同じアプローチを採ることが良いという認識のようだ。
つまり人間とソフトウェアが混在しない形での自動運転システム。
いわゆる定義されているレベル3からこの状態に入っていくが、確かにグーグルの実験にもあるように、当初は慣れていないこともあり、慎重になるだろうが慣れちゃうと確かに怖い。気を抜けないくらいなら、自分で運転しようか、ともなりかねない。
と、欠点や危険性の指摘もなされている一方で、採用の基準なども提言がされており、体系的な理解に非常に役に立った。
Posted by ブクログ
最近話題の自動運転について
自動運転によるメリットは相当に大きく
・交通事故関係の医療に係るコスト(米国で年間180億ドル)およびそれに関連する賃金(330億ドル)が節約される。そのかわり医療、保険、臓器提供などの産業は大きな収入源を失う。
・ドライバーのコスト(トラック、タクシーなど)を削減する。輸送コストの問題で地方でしか販売できなかった食材などを他地域で売ることができるようになる。
流通業も現在は集荷センターに一旦集めて輸送するというハブ・アンド・スポークの形を取っているとことが多い。これはドライバーのコストが高いためこれを減らそうとしているのだが、走行距離が長くなり、配送も遅くなるなど効率は良くない。自動配送車が普及すれば、店から直接消費者の所に商品を届けるようになるだろう
・運転に費やす時間を削減する。平均的な米国人は1日3時間を運転に費やし、年間63時間渋滞にはまっている。こうした時間を生産的な労働時間やプライベートに当てられる。
・事故の可能性が少ないため車体は小型化、軽量化できる。無人配送車は配送物並みの大きさで事足りる。
現在、交通事故による死亡者は毎年世界中で120万人にのぼる。
米国人が交通事故による怪我で入院する日数は年間述べ100万日になる。
臓器移植の約20%が交通事故の犠牲者からによる。
飲酒運転による犯罪は刑務所の入所者の7%を占めている。
駐車違反などの取締は自治体の財源にとって、大きな比重を占める
・人間が運転しなくなれば道路標識や信号もいらなくなる。デジタル3次元モデルの中に仮想的な「標識」が表示されるだけになる
ただし、実現に向けての課題も多い
・まず部分的な自動運転を実現し、その後段階的に全自動運転を、という考え方は一見自然なのだがうまくいかないだろう。人間と機械が協調することは難しい。運転のように退屈な作業では人間が責任を機械に譲り勝ちになるからだ。一気に完全自動化を目指す方がよい。
・現在の技術もかなりよいところまで来ているが、ソフトウェアに自分の命を預けるためにはその制度を99%ではなく、99.9999%にしなければならない。これはかなりの難題である。
・車同士で通信するという考えもあるがこれは難しい。例えば10%の車に通信機能が普及したとしても相互に情報を伝達し合える車と出会う確率は1%にしかならない。それにこの手の分散型の通信方式は脆弱で、セキュリティ上の問題を抱えている。不正アクセスを防げないだろう。
・事故が不可避であるとき、右側にいる子供と左側にいる老人をそれぞれどのように数値化し、どちらを選ぶのか、という問題も出てくる