あらすじ
「動かない」という選択をした植物のしたたかな戦略が「薬」をもたらした!
モルヒネやキニーネ、ヤナギの成分から作ったアスピリン、生薬を用いる漢方薬など、人間は古代から植物が作る化学成分を薬として使ってきました。また、ポリフェノール、カテキン、フラボノイドなど植物由来の成分が、いまや日常用語として使われています。
しかし、つい最近まで、なぜ、どのように植物が薬を作るのかは解明されていませんでした。その根源的なメカニズムがわかってきたのは最近のことなのです。分子生物学やゲノム科学という先端的な科学の発展によって、植物の巧みな生存戦略に隠された、植物成分を作る意義と、その方法がわかってきました。
土に根を生やして移動しない、という生き方を選択をした植物は、人間も含め、共存する生命との協力関係や敵対関係のある環境のなかで、生き抜いていかねばなりません。たとえば、動物などの捕食者から身を守るため、苦味や渋み、あるいは神経を麻痺させる有毒な化学成分を作るように進化しました。こうして作り出された化学成分が人間の健康に役立つことがあるのです。
植物は、進化という厳粛な自然の審判に耐えながら、きわめて巧に設計され、洗練された方法で、多様な化学成分をつくるという機能を発達させてきました。私たち人間は、それを薬として少しだけお借りして使わせてもらっているにすぎません。
この本は、もの言わぬ植物からの伝言メッセージです。
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Posted by ブクログ
以前読んだ「植物はすごい」という本で、花の仕組みなどを知った。だが今回、薬のお世話になっている身としては「植物は凄い、美しい」だけでなく新しい目が開いた。いや偉い、研究者の方々の努力も忘れていませんが。
何度も繰り返すようですが、3歳から、小学三年まで6年間母の故郷で暮らしたのですが、周りが大人ばかりだったので、野山が友達で、ずいぶん自然に親しんでいました。
46億年といわれる地球の歴史で植物は5億年を生き、ヒト属は200万年前、ホモ・サピエンスが40万年から25万年前の誕生だとすれば、藻類から始まった植物の歴史の長さには驚きます。尊敬です。
私は今更ながら、花々を美しいと眺める以外に、その生き方が独特であったことに感動しました。園芸も好きなので。
「植物は動かないことを選択した生物なのです」
いわれてみればその通り当然目にしていることなのです。
それが自衛のため、子孫を残し繁殖するため巧みな戦術を使って生き延びてきているのです。土に根付き動かないでいるということを知ると何か改めて驚異的なことだと思われます。
生物の共通の属性として
*自らの生存と成長のための物質代謝、エネルギー代謝ができること
*自己を複製した次世代に受けつくこと
と挙げられています。
自衛のため子孫を残すために植物がとる、薬物を作り出すという生き方が人間の歴史にとっては「贈り物、めぐみ」になって今日に至っています。
バイオテクノロジーの急速な進歩はこの2.30年のことだそうです。ハイテク機器と化学知識の進歩によって植物からますます多くの恩恵を受けることができるようになりました。花屋さんで花をよく見ると、あら、コレの原種はの山で見るあの花かもと思うことがよくあります。
古代には医術や薬草の知識は神秘的なものに感じられていました。薬学や医療に精通すれば、ある意味、呪術師や魔術師に似た感覚で受けとめられるような事もあったようです。
いま様々な物質の薬効が解明され、あちこちから声高に、植物由来という言葉も絶え間なく聞こえてきます。
違った道を歩んできた西洋医学と東洋医学が歩み寄りつつあります。
化学物質を合成して作られる化学薬品と、植物の毒性を利用した医療との違い、西洋医学は病んだ細胞や組織を狙って正常に戻すところから進んできました。一方東洋医学は患者の体全体を対象にしたシステムで、それは伝統的に受け継いできた知識を重視することでした。今ではそれぞれに長所短所を全段階で見極めるシステムが進み次第に見直されているようです。
植物はなぜ薬を作るか。植物が生きのびるための巧妙な仕組みなのですが、それが自然や環境の変化に連れ、時を経てますます多くの薬を提供することになりました。また利用する人間側、化学の世界では遺伝子研究が進み、そのゲノム構成が少しずつ明らかになり、DNAを組み替え、利用価値の高いものが人工的に作られ市場に出回るようになってきています。
たとえとして、今まで自然界でみられなかった青いバラやパープル・トマトの例まで上がっています。
新しい世界が開けること、抗がん剤の研究が進むこと、ニコチンやアルカロイド系の麻薬の功罪など、化学式を用いて組織図を著し、効力のわけ(なぜ効くのか)また習慣性について、一冊の新書にはマダマダ収まり切れないほど植物の持つ力について学ぶことができました。
解明されていない多くの可能性について何年か後には新しい本が出るかもしれないと、楽しみにしています。
子供の頃に見た花を探して歩いた経験が、珍しいクララやシャボンの木、塩っ辛い実のなるヌルデなどのことを思い出し、おまけに煎じて飲まされたゲンノショウコやセンブリの苦さまで思い出し「君たちは美しいうえに偉いのだね」と、山で見かけたら声をかけようと思っています。
分子式は化学式というし亀の甲の名称はベンゼン環という、光合成って化学式で書くと難しいのね、なんて苦手科目を思い出したり、この本はどこを読んでもおもしろかった。
Posted by ブクログ
とても良かった。
植物といかにして相互共存して生きていくかという言説そのものがおこがましい。人間は植物に生かされている。それは薬だけでなく食物として、建築の素材として、我々人類の同類というよりも、地球の先輩として敬意を払う。
Posted by ブクログ
全く知らないことばかりで、植物って本当にすごいなというのが正直な感想。
チンパンジーも生薬を使うというのも驚きで、世代を超えて受け継がれる知恵のようなものは人間以外にもあるのかな、と思った。
Posted by ブクログ
薬や健康増進のサプリメントなど植物は私たちにとって有用な成分を作ってくれる。
では、なぜ植物がこのような人間に有用な成分を作るのか? その答えがわかる一冊
本書では植物から得られる有用な成分が紹介された後、主題である「なぜ」「どのようにして」植物はそのような成分を作るのか?が網羅的に解説されている良書。
ただし、誰でも読めるように平易な表現で丁寧に解説されているが、一部の内容は化学や生化学などの知識がなければ理解するのが難しいと思われる。
結論として、植物がさまざまな成分を作る理由は自身の生存のためであり、決して人間ためではなく、
そのおこぼれを頂戴しているに過ぎない。
現在、その一部でも生物活性が調べられている成分は全体の内10%程度とのこと。その中から、まだまだ新たな薬の有効成分が見つかることに期待。
Posted by ブクログ
薬と植物について、これらの薬としての関係性について述べた本。よく耳にする言葉として、抗がん剤やアヘン、ポリフェノールだろう。これらの成分は、植物から作られており、植物の二次代謝によるものがほとんどである。
植物は薬として古来から利用されており、チンパンジーですら薬として用いる。その歴史は生薬から始まっている。それが近年、薬学として確立され、東洋医学や西洋医学として発展していった。本書では、薬の起源、薬となったもの、生成経路などがまとめられている。自然環境の機能は、興味深いことが多く、それらを体系化して薬としてデータを集めるのは、よほどたくさんのデータが必要な道筋であったことが容易に想像できる。
Posted by ブクログ
「植物由来で身体に良い」その意味と、そこに潜む誤解
こういう本を読むと植物も動物も同じ生き物なのだと痛感する
たかだか40万年の歴史しかないホモ・サピエンスは、5億年かけて進化してきた陸上植物のことをまだごく一部しか知らないのだ!
Posted by ブクログ
薬品や健康に良い成分は植物由来のものが多い。それらは植物がよりよく生きるために作ったもので、決して人のために作ったものではない。人はあくまで、地球の同居人の生産物を使っているに過ぎない。
そう思えば、人々は自然にとても支えられていて、感謝の気持ちが湧いてきた。
Posted by ブクログ
植物学、薬学の基礎解説本。ぎりぎり啓蒙書レベルであるが、高校生物学程度の知識が必要で、どちらかというと難易度は高い。
現在、ほとんどの穀物が遺伝子組み換えになっている事実。遺伝子組み換えよりも気候による変化などの方が大きいこと。薬は植物由来が6割、化学由来が4割であること。抗がん剤、抗生物質などの作用機序。毒である物質になぜ生物自身は侵されないか=無毒化の仕組み。など。
タイトルはあまり深く掘り下げられていない。
Posted by ブクログ
〈本から〉
アレロパシー
コーヒーの木のカフェインのように、植物が特異的成分を放出して他の植物の生長(主に植物個体が伸び育つこと。それに対して「成長」は主に人や動物が育って大きくなること)を抑えたり、微生物や昆虫、動物から身を守ったり、あるいは引き寄せたりすることを「アレロパシー」あるいは「他感作用」と言います。
植物からの万能薬ーポリフェノール
ポリフェノールが代わりに酸化されることで、活性酸素の毒素から身体を守る
乾燥と紫外線を防ぐフラボノイドとアントシニアン
タンニンの渋み戦略
口の中には食べ物のカスやさまざまな雑菌があり、口臭や虫歯の原因となっています。タンニンはおうした食物や雑菌のタンパク質とくっつくと、それらを凝縮させて固める働きがあります。
動けない植物の巧みな生存戦略
陸上植物には私たち人間の約1000~2000倍の長い生命の歴史があります。
(略)
植物はこのような長い歴史を生き抜くために、戦略を立てて、実行して、トライアル・アンド・エラーを繰り返しながら進化する必要がありました。
生命が持つべき属性
(1)自らの生存と成長のために物質代謝、
エネルギー代謝がができること
(2)自己を複製して次世代に受け継ぐこと
同化代謝戦略ー太陽エネルギーと土からの栄養による光合成
人間などの動物は、細胞の構成成分やエネルギーの元になる有機化合物を、食物から取っています。そして摂取した食物を代謝(消化や変換、分解)して単純な化合物に戻し、その変換の過程でエネルギーを取り出しています(これを「異化代謝」と呼びます。)これは動物が、自ら動いて食物を獲得することが出来る、という性質から可能になったことです。
しかし、動けない植物は、動物のように動いて食物を獲得することができません。そこで、空気中の二酸化炭素と、土壌から根によって吸い上げた単純な無機塩類(窒素塩、硫酸塩、リン酸塩など)を使い、エネルギーを与えてアミノ酸や糖などの有機化合物を作る気嚢これを「同化代謝」と呼びます)を発達させました。この同化代謝は前述の異化代謝には逆方向の反応です。同化代謝を行うにはエネルギーを与えることが必要ですが、そのために太陽からのエネルギーを使って行う同化代謝が「光合成」っです。これは動物にはない、植物だけが持っている生きるための戦略です。
酵素とは、生体内で物質の化学反応を助けて、反応を速やかに進める触媒の役割を持つタンパク質のことです。
植物は自然を汚さない精密化学工場
地球という閉じられた世界の中で、植物などの光合成生物は太陽エネルギーを利用できるとう植物独自の機能によって、エネルギー・燃料・工業原料は食料・薬となる有用物質の生産や二酸化炭素の循環に貢献し、地球上の生命の根本を支えているのです。従って、宇宙船地球号に同乗している人類は、実はその生存が全面的に植物に支えられているのです。
植物は、厳しい進化の歴史の中で、極めて巧みに設計された精密化学工場によって、多様な化学成分を作るという機能を発達させて、進化の歴史の厳粛な審判に耐えてきたのです。
Posted by ブクログ
生物も化学もしっかり勉強していたら書いてあること全部わかって更に面白さを感じられただろうなと思うくらい専門用語がたくさんで読むのが大変だった。
植物は動物のように動くことができず、その場の環境で生き、次世代に繋げる。そのために自分の身を守るために毒や保護する物質を作る。それがたまたま人類にとって薬になっている。漢方も西洋の薬も元は一緒で、全体からアプローチするか悪いところを狙い撃ちするか考え方の違い。チンパンジーも調子悪い時は特定の植物のエキスを取っていた。初めて知ることがたくさんあり、どれも興味深かったし、植物の生き残り戦略が巧みでタフだと感じた。
植物達から得るものが多いと気づかされ、植物達への見方が変わる一冊だった。
Posted by ブクログ
化学の知識があまりない中で読んだので、ストーリーしか理解しなかったけど、タンパク質の生成の偉大さや、いかに人間が植物に助けられているかを考えるきっかけになって良かった
Posted by ブクログ
タイトル通りの内容で新書らしい一冊でした。
植物から得る薬にも毒にもなる効用。その成分。ではなぜ薬を作るのか。どのようにその物質を作るのか。薬にも毒にもなるその成分に植物自身は耐えれるのか。
細かい話は流し読みしてしまいましたが、知識として面白く、十分楽しめました。
ただ分かりやすくを意識して、書いて頂いているのは感じましたが、カタカナも多くなり後半は眠くなってしまった…。
Posted by ブクログ
生命の定義
①自らの生存と成長の為に物質代謝、エネルギー代謝が出来ること。
②自己を複製して次世代に受け継ぐこと
この2つの属性を有し、生命として成り立つために動かないことを選択した植物は独自の生存戦略を発達させた。それが結果的に多くの薬をもたらす事に繋がった。
地球上で1番多いタンパク質はルビスコ。空気中の二酸化炭素を最終的ブドウ糖などに至る有機化合物に固定できる。温暖化防止に役立つ。
現在では医師の9割が漢方を使っている。
ミトコンドリアのゲノムが母親にしか由来しないのは人間も植物も同じ。
アレロパシー、他感作用。
薬用成分は植物の二次代謝によってできる。
一次代謝は生命維持の活動。
地球上にある種子植物あるいは顕花植物の総数は22万から26万種あると考えられている。その内ゲノム配列が解明されたのは100種程度。
Posted by ブクログ
アスピリンは、ヤナギの樹皮に含まれる鎮痛作用のあるサリシンをアセチル化したもの。爪楊枝にはヤナギの枝が使われる。植物体が病原菌の攻撃を受けると、サリチル酸は揮発性の高いサリチル酸メチルに変換され、植物の体全体にすばやく伝える。サリチル酸メチルはよい香りで、サロメチールとして使われている。
タバコの葉が捕食者にかじられると、ジャスモン酸メチルという信号伝達物質が産生され、根のニコチン生合成をつかさどる遺伝子が活発に活動する。
他の植物の生長を抑えたり、微生物や昆虫、動物から身を守ったり、引き寄せたりすることをアレロパシー(多感作用)という。セイタカアワダチソウは、シスデヒドロマトリカリアエステルを放出して、ススキなどを駆逐して繁殖した。マリーゴールドは、土壌中の線虫の発生を抑える。
漢方処方の7割に配合されている甘草の主成分はグリチルリチンで、砂糖の30〜150倍甘い。スナック菓子、佃煮、漬物、飲料などに多く用いられている。
ポリフェノールとは、ベンゼン環などの芳香環に水酸基(OH)がついた化合物群で、水酸基が活性酸素分子を捕捉する抗酸化作用を持つ。柿の渋みはタンニンで、種子が成熟するまで食べられないようにする働きを持つ。
フラボノイド:フラボノール、フラボン、カテキン類、アントシアニン、イソフラボン
スチルベノイド
フェニルプロパノイド
タンニン
代謝経路には、どの生物種にも共通して存在する一次代謝経路と、特定の種やグループに存在する二次代謝経路がある。二次代謝経路によって作られる物質は主に5つある。
ポリケチド:大黄、アロエ
フラボノイド:ソバ、ブルーベリー
フェニルプロパノイド:シナモン、アニス
テルペノイド:柑橘類、ハッカ、甘草
アルカロイド:ケシ、タバコ
新薬の6割は、天然から得られた成分、主要部分が天然物由来、天然物の生合成経路を真似て合成されたものなど。
Posted by ブクログ
<目次>
第1章 植物から作る薬
第2章 薬になった植物成分
第3章 植物はなぜ薬を作るのか?
第4章 植物はどのように薬になる物質を作るのか?
第5章 植物の二次代謝と進化のしくみ
第6章 バイオテクノロジーと植物成分
第7章 人類は植物とどのように相互共存してくべきか?
<内容>
植物の生合成のしくみからさまざまな化学成分の抽出(これがいわゆる漢方)、さらには化学的に生成、さらに遺伝子配列の分析からいわゆるバイオテクノロジーと研究を進めてきた著者の、こうした分野での解説書。わかりやすい書き方で、高校程度の生物・化学の知識があれば読める内容である。そして、逆に薬や味、匂い(これは食べ物として)、たばこや麻薬などの嗜好品(麻薬を嗜好品というのは…)、これらの多くは植物由来であり、さらに言えば彼ら植物が光合成をしてくれているからこそ、我々がこの地球上に生かされていられる訳だし、太古の植物の死骸などが石炭、石油となっていることを考えると、もっと植物のことを考えねばならない。
また、バイオテクノロジーに関しても、「怖い」イメージがあったが、こうした啓蒙を受けると今やなくてはならない技術であり、もう身近に恩恵を受けている。こうした研究者の方の働きかけも弱いと感じたが、反対派のヒステリックな反応もどうかと感じた。