あらすじ
「ディア・ドクター」「夢売るふたり」「永い言い訳」など、
濃密な人間関係を題材に作品を生み出し続けてきた映画監督・西川美和氏の小説処女作
田舎を嫌って都会に出た奔放な弟・猛と、田舎に残り実家を継いだ実直な兄。
対照的な二人の関係が、幼馴染みの女性の死をきっかけに、大きく揺らぎはじめる……。
2006年に公開され数々の映画賞を受賞した同名映画を監督自らが初めて小説化。
文学の世界でも第20回三島由紀夫賞の候補になるなど、大きな評価を受けた。解説・梯久美子
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Posted by ブクログ
原作を読んで映像化されたものを観ると物足りなさと自分の中で描いていた俳優と違うこともありなかなか満足できる作品に出逢えていないという話を同級生としていたらこの本と映画を薦められた。原作、脚本、監督を作者一人が作り込むと一体感が生まれるのが納得てきました。shukawabestありがとう。
Posted by ブクログ
2020年現在の、この小説の、刊行されているバージョンを調べましたところ。
2006年 ポプラ社単行本刊行
2008年 ポプラ文庫刊行
2012年 文春文庫刊行
という感じでして、2020年現在、3バージョンが、流通している感じ?みたいですね。
凄い不思議なのが、2008年にポプラ文庫から文庫本が刊行されていて、何故に、2012年に、出版元を変えて、文春文庫からも、文庫版が刊行されているの?ってのが、凄い不思議。なんで?
ポプラ文庫版が、絶版になっている?訳でもないようなのですが、、、凄く不思議だ。何故、ポプラ文庫で文庫化されている作品が、更に、文春文庫で文庫化?ホンマ不思議。どんな理由があったのだ?不思議だ。
文春文庫版では、ノンフィクション作家の梯(かけはし)久美子さんが、解説を書いておられます。お見事な解説です。なのです。が、、、が。
梯さん、マジですみません。ですが。この中で、個人的に断然オススメなのは、ポプラ文庫版、ですね。ポプラ文庫版だけ、香川照之さんの解説が、収録されているんですよ。
小説本編も、まあ途轍もなく素晴らしいんですが、映画で早川稔を演じていた香川さんの書く、解説が。いやもう。めっちゃくちゃ良いんですよ。ちょっと、もう、驚愕するほどに。是非とも、「ゆれる」という作品を愛する一人でも多くの人に、この香川さんの解説を、読んで欲しいなあ!!って、心の底から思います。
本当に素晴らしい解説なのです。早川稔という人物を、あれほどに演じ切った香川照之だからこそ、書くことができた解説。そんな気がしますね。
文春文庫版のレビューなのに、ポプラ文庫版の方を薦めてしまっていて、マジごめんなさい、なのですが。それほどに、あの、香川さんの解説が、、、好きなんや。
なして、この文春文庫版は、ポプラ文庫版の香川さんの解説を併記したうえで、新たに梯さんの解説を増やす、という事をしなかったんや。版権の問題とか、色々あったのか。どうなんだ。でも、、、あの香川さんの解説は、マジで素晴らしいんや。梯さん、そんな事ばっか、しつこく言って、マジすみません。
いやでも、この文春文庫版の梯さんの解説も、凄く良いです。ホンマです。
この作品の比較対象として、太宰治の「駆け込み訴え」を挙げている所とか、マジ慧眼!って思いましたね。うん。ホンマに似ている。感じが。
キリストが兄の稔で、ユダが弟の猛かな?ってイメージに、ぴったり合うんですよね。
あ、そういや、西川さん、NHKのBSの作品で、太宰治の「駆け込み訴え」の映画化、してるやんか。リンクしてるなあ~。おもろいなあ~。
西川さん、多分、太宰治、絶対好きだろうな、って思うんです。「永い言い訳」の小説版も、途中で、まんま「走れメロス」やんかコレ、な箇所、ありましたし。ああいう、西川さんの創作の原点、というか、感動の原点、みたいなんが観られる箇所、すげえ好きですね。
あんま、全然、小説の内容の感想書いてないんですが、すみません。まあ、とりあえず、途轍もなく素晴らしい作品であることは、間違いないです。あくまでも、あくまでも自分の中では、映画版「ゆれる」が最高峰ですが、この小説版も、まあ、コレ単体で読むだけでもホンマに面白いし、映画と補完しながら味わうとしたら、更に面白い。
「あの時のあの場面のあの人物は、内面でこんな事を思っていたのか!?」という事を答え合わせできる幸せさよ。西川監督自身が小説化してるんだもの。本家本元ですやんか。いやもう、、、素晴らしいなあ、ホンマ。
まあ、映画版も小説版も、一生手元に置いておきたい作品であることは、間違いない。それほどに、圧倒的に、大好きですね。
Posted by ブクログ
大学生の時に観て、邦画の面白さを教えてくれた作品。小説が原作ではなく、映画を小説化したものです。
田舎に残った兄と自由奔放な弟。その兄が吊り橋から女性を突き落としてしまう。目撃者は弟とだけ。
果たして本当に兄が突き落としたのか、それとも事故か。
まさしくタイトルの通り、弟を始め登場人物の感情が揺れている。映画よりも小説の方がその変化が饒舌に語られていて、貪るように読んでしまった。
また映画をやるようで楽しみです。
#読書 #読書倶楽部 #読書記録
#ゆれる
#西川美和
#ノベライズ
#2016年88冊目
Posted by ブクログ
やはり西川美和はただ者ではなかった。
あの邦画史上に輝く名作『ゆれる』の小説版である。小説では映画では描かれなかった背景事情や心理が精緻に描写され、他方映画では小説よりも読者に考えさせる余地を多く残し、お互いに補完して一つの世界を作りながら、それぞれ一つの作品として屹立している。
多くは語るまい。が、どちらかと問われれば(彼女の本業である)映画の方に軍配が上がること、映画を先に観ることを勧めることを記しておく。
Posted by ブクログ
家族内の不和は、それまで上手くいってた均衡がひょんなことで崩れることで起きるということを実感した。この話の場合は、誰からも認められるいい人であった稔の変化。話が進むに連れ、登場人物達の独白が問題の核心に触れ始め、見ているこちらまで揺さぶられるものがある。
Posted by ブクログ
古い作品だけど、映画を観て本を読んだ。
映画だけでは分からない登場人物の心理描写が本を読んだら良く分かるから、映画を観ても本を読むことをお勧めします。
地味でいい人のお兄さんと、派手で好きに生きている弟。お兄さんはいろんなことを我慢していい人になっていた。
でも、1回のきっかけで爆発してしまった。
お兄さんは自由に生きるために行ってしまったんだと思いたい。
Posted by ブクログ
あなたは、兄弟姉妹の間に『わだかまり』はないでしょうか?
兄弟姉妹がいた方が良いのか?いない方が良いのか?それはなかなかに難しい問題です。一人っ子な方には兄弟姉妹がいる本当の感覚はわからないでしょうし、その逆だって同じです。両親の愛情を一手に受けられることを幸せと感じるか重荷と感じるか、それは年齢によっても異なってくるでしょうし、ひと言で言い表せるものでもないと思います。
また、表面上は仲良く接しているように見えてもその本当のところは分かりません。兄弟姉妹という血の繋がりの強さが故に仲の良さがひとしおであれば、一方で一度できた『わだかまり』はなかなか消えないようにも思います。古の世から血生臭い結末が見え隠れもする兄弟姉妹、人の繋がりというのは兎にも角にも複雑です。
さてここに、故郷を後にして、カメラマンとしての成功を掴んだ弟と、父の仕事を継いだ兄の久々の再会を見る物語があります。オダギリジョーさん、香川照之さん主演で映画化された後に小説として書き下ろされたこの作品。兄と弟という関係の難しさを見るこの作品。そしてそれは、『僕は決して兄のことを出し抜こうとか、おとしめようと思ってきたわけではな』かったという「ゆれる」弟の思いの先にまさかの選択を見る物語です。
『昨日の撮影は結局明け方までかかって、徹夜明けの目がフロントガラスからまともに差し込んでくる光に耐えられない』と思いつつ、『高速を降りて生まれ育った町』へと車を走らせるのは早川猛。『六四年製のフォードのステーションワゴン』の『ガソリンメーターの針が落ち』、『いやな所で切れてくれたもんだ』と『家にたどり着くまでのこの一本道に、スタンドは一つだけ』という『父の苗字』のスタンドに車を入れた猛は、制服姿の女性を目にします。『智恵子 ー』と思い、『サングラスを反射的にかけ直して、目を伏せた』猛は、『金髪のアルバイトにさっさと会計を済ませ』店を後にしました。『この町を出てから十年余り、あの子のことを思い出したことなんか、ろくになかった』と思う猛。実家に到着した猛が家に入ると、『座敷に並んだ黒い背中が、一斉にこちらを振り返』ります。『あたしがここの不埒な息子です。親の葬式にも帰らずに、一周忌の席にさえ、まっ赤な服なんかで遅刻して来る、厚顔無恥な次男です』と思いつつ座敷へと上がった猛。そんな猛は『父さんだって、気にしてるんだよ。もし時間が作れれば、帰ってきてよ』と兄から電話を受けた時のことを思い出します。『僕の仕事が立て込んでるのを気遣って、たっぷりと余裕を持って法事の予定を知らせてきた』兄の稔。そして、宴席となりましたが、『ヒートアップしたおじさんが『いやお義兄さん、立派!猛君は!』と話を振ってしまいます。『ふるさとと決別し、「親不孝」と「身勝手」の果てに手にした僕の成功は、父の目には悪魔との取引としか映らない』ことを理解している猛の想像通り、父親の感情が登りつめていきます。『うちの奴の遺影。首から下は、葬儀屋に頼んで合成した貧相なもんですよ。息子はカメラぶら下げた商売してて、その母親がまともな写真一枚ないんだから、可哀想だ』、『何がそんなに忙しいんだか。親の葬式にも来ないで撮るような写真なんか…』と止まらない父親。それに、『あんたでも撮ってやれただろうがよ、写真の一枚くらい』と『勝手にものを言う』猛の口。それを、『まぁまぁまぁまぁ!お父さん、抑えて。猛、もういい、わかった』と仲裁に入る兄。そして、来客も帰り後片付けをしている中に車を出して欲しいと頼まれた猛は兄を乗せて『何かトラブルが起きた様子』の店へと向かいます。そんな中で『川端の智恵子ちゃん』、『スタンドで働いてくれてるんだ。もう四年になる』と語る兄に生返事する猛。『よく働いてくれてる』と言う兄に『兄ちゃんも嫁さん貰わないといけねえってやつだろ』と猛が言うと『耳が熱を持ったみたいに赤くな』ります。『親父はそういう目算だね』言う猛に、『お前そういうこと、言わないでよ智恵ちゃんに』と返す兄。そして、店へ着くも『智恵子は』猛『に気付いても、愛想笑い一つよこ』しません。トラブルに対応する中に『智恵ちゃん、もう上がりなよ』と言う兄。そんな智恵子を送っていくことになった猛は、その後、『十年以上も前に放り出した女と寝たからって、焼けぼっくいに火、なんてわけはないだろう、と思ってはいたけれど、その予感は悲しいほどに的中した』という感覚の中にいました。そんな猛に『あした行くの?蓮美渓谷』と訊く智恵子は、『ねえ行こうよ。その方が、変に思われないと思う』と続けます。そして、実家へと戻った猛は兄が帰っているのを見ます。『今までのこと、今日のこと、全てをここで兄に話して、謝ってしまいたかった。許しを請いたかった』と思う猛。そんな翌日、猛は、兄と智恵子とともに『蓮美渓谷』を訪れます。そして、そこに起こるまさかの智恵子の死の先に、「ゆれる」という書名の意味を深く感じる運命の物語が描かれていきます。
“故郷の田舎町を嫌い都会へと飛び出した勝ち気な弟・猛と、実家にとどまり家業を継いだ温厚な兄・稔。対照的な二人の関わりは、猛の幼なじみである智恵子の死をきっかけに大きく揺らぎはじめる”と内容紹介にうたわれるこの作品。2006年にオダギリジョーさん、香川照之さん主演、西川美和さんご自身が監督された同名映画のノベライズというのがこの作品の位置付けです。第59回カンヌ国際映画祭の監督週間部門に正式出品されたというこの映画は数々の賞も受賞した話題作です。小説がまず存在してそれを原作に映画が作られるということは多々ありますが、この作品は映画が先であり、そんな映画を元に監督ご自身が小説にしたというのが特徴です。そういった経緯を踏まえると、映画を先に観た方が良いようにも思いますが、私は先に小説を手にしました。そして、読み終えて、小説だけでも十分に楽しめるのがこの作品であるという感想の中にいます。映画をご覧になられていない方も安心して手にしていただければと思います。
私は読書&レビューの日々の中で同じ作家さんの作品を三冊ワンセットで読むようにしています。今回、西川美和さんの作品の三冊を選びましたが、バス事故で妻を亡くした作家を描く「永い言い訳」、終戦を少し早く知った青年兵を描く「その日東京駅五時二十五分発」、そしてこの作品とバラエティに富んでいます。そんな西川さんの文章は映像が見えてくるような描写と、文そのものの美しさを併せ持っていると感じています。この作品でも巧みな表現が散見されます。まずは抜き出してみましょう。
『羊のように大人しく説教を聞く客たちを、すすけた鴨居の上からぼんやりしたまなざしで母が見下ろしていた』。
母親の法事の場面に帰ってきた猛が描かれる場面ですが、『羊のように大人しく』という表現と、鴨居にかけられている母親の遺影を上手く表しています。そこには、そのまま映像が浮かび上がります。
『子供のようにはしゃぐおじさんの受け応えにしばし耐えながらも、父の感情がなだらかなスロープを登りつめていく』
こちらは、文章自体の工夫で魅せてくれます。父親の怒りが高まっていく様を『父の感情がなだらかなスロープを登りつめ』と表現するのは絶妙です。そして、この表現は次の一文に見事に繋がります。
『ご先祖様たちの写真に並んで、へんなところに居るな、と思った。ああ、母さんはもう、居ないのか』。
母親の葬儀に出席できなかった猛は、母親の死をどこか実感できない中にいました。それを遺影を使ってこんな風に表現します。これも映像が浮かび上がってきます。
そんなこの作品は、八つの章から構成されていますが、すべての章が〈○○のかたり〉とつけられている通り、それはそれぞれの登場人物視点で語られるように描かれていきます。では、そんな八つの章題をご紹介しておきましょう。
・〈第一章 早川猛のかたり〉
→ 実質的な主人公、著名なカメラマン
・〈第二章 川端智恵子のかたり〉
→ 猛がかつて付き合っていた女性であり、『蓮美渓谷』で「ゆれる」中に死す
・〈第三章 早川勇のかたり〉
→ 猛の父親
・〈第四章 早川修のかたり〉
→ 猛の伯父、弁護士
・〈第五章 早川猛のかたり〉
→ 実質的な主人公、著名なカメラマン
・〈第六章 早川稔のかたり〉
→ 猛の兄
・〈第七章 早川猛のかたり〉
→ 実質的な主人公、著名なカメラマン
・〈第八章 岡島洋平のかたり〉
→ スタンドの店員
八つの章のうち、三つの章で視点の主となること、また映画でオダギリジョーさんが主演を務めることからも早川猛が実質的な主人公と言って良いでしょう。そして、視点の主はいずれもそんな猛の近親者であり、彼らの語りの中で物語が展開していきます。主人公の猛は『ふるさとと決別し、「親不孝」と「身勝手」の果てに』カメラマンとしての成功を手にしますが、その過程には父親との葛藤がありました。高校生だった猛に、スタンドを手伝うよう指示した父親に『俺にはやりたいことが決まっている』と抵抗した先に『東京の写真学校』へと進学した猛。そんな猛に怒り狂う父親の元に残ったのが兄の稔でした。一方で、『全ての煩わしさを背負』い、父のスタンドを継いだ兄という兄弟の構図がこの作品のベースに存在するものです。そこに、もう一人関わってくるのが〈第二章〉で視点の主となる川端智恵子です。猛が高校時代に関係のあった猛と智恵子でしたが、猛の写真学校への進学により関係は一旦終了します。そんな智恵子は稔とともにスタンドで働く今を生きていました。そんな智恵子の話をすると『耳が熱を持ったみたいに赤くなる』という兄を見て、『僕と智恵子のこと、何にも知らずに雇ってるんだ』と思う猛。物語は、そんな猛と稔の兄弟が智恵子を連れて『蓮美渓谷』へと赴く先に大きく展開していきます。まさかの智恵子の死、それが事故なのか、事件なのか、この作品は裁判の様子を描きながらその真相に、そして稔と猛という兄弟の関係性を描いていきます。そんな物語の〈解説〉で、作家の梯久美子さんはこの作品をこんな風に語られます。
“「ゆれる」は、見てはならないものを見、言ってはならないことを口にする人たちの物語である”。
これはこの作品の本質を上手く表現していると思います。猛が三つの章で、稔が一つの章で視点の主を務めるこの作品ではそこにそれぞれの心の内を垣間見ることが本来的にはできるはずです。実際、兄と弟、それぞれの複雑な思いも垣間見えます。そんな思いの結実の先に大きく動く物語、それは兄と弟、それぞれの行動の結果でもあります。それを、”愛と支配をめぐる闘争のドラマ”とも評される梯さん。そんな作品は結末に向けて人の心の奥深い部分を描いていきます。視点が切り替わっているのに制御不可能に動き出す主人公たち。そんな主人公たちが登場する作品に「ゆれる」と名づけられた西川さん。まさしくゆれに揺れ動く主人公たちの心のありように圧倒される物語がここにはありました。
『今までのこと、今日のこと、全てをここで兄に話して、謝ってしまいたかった。許しを請いたかった』。
多くの映画賞を受賞した同名映画を監督の西川さん自身がノベライズしたこの作品。そこには、登場人物たちのかたりによって展開する物語の姿がありました。映像が浮かび上がってくるかのような表現の数々に魅せられるこの作品。兄と弟それぞれの複雑な心の闇を垣間見るこの作品。
「ゆれる」という書名の絶妙さに感じ入る読後に、映画も是非観てみたいと思う、そんな作品でした。
Posted by ブクログ
生まれ故郷を飛び出し写真家として成功をおさめる弟。実家のガソリンスタンドを父親に望まれるまま引き継いだ兄。自分の感情を表現する弟。鈍いふりを続けた兄。
二人に関わる幼馴染の女性は、若い頃、弟と関係を持ち、現在は、兄に望まれている。二人の関係は、その女性の死の真相をめぐり逆転していく。家族の支配者が変わった時、そして不在となった時、ギリギリの家庭は、崩壊を迎えてしまう。
兄弟の支配と嫉妬は、終わりを迎えても、次の関係を築く事ができなかった。
ご自身の映画のノベライズとのことで、田舎を行く道、法事の親戚の集まり、ひなびた渓谷と、読み始めから、知っているような情景のイメージに入り込めました。兄弟の隠していた感情の描写が印象的で、苦しさが伝わってきました。
Posted by ブクログ
6人の視点で語られる内容は饒舌で内容を理解するには集中が必要だった。人間の色々な思いが交錯して理解するのが難しい。2人の父親もまた兄弟で弟という立場。兄と弟の幼少時期からの複雑な関係性。そしてへ互いの本当の気持ちが裁判の法廷で明らかになっていく。
Posted by ブクログ
映画を何回か観ているにも関わらず結末を思い出せないのだが確実に面白かった記憶があったので原作本を読む。
→要検討な余韻を残すオチであった。そうそう確か映画もそうだったことを思い出す。個人的には兄は冤罪だったと思うが兄自身はもう虫も殺さぬような平凡で退屈な自分自身に嫌気がさしており、弟に対する愛憎も踏まえて犯罪者になりたかったんだろうと考察。
女性が書く文章とは思えずとはいえ男性的でもないというか、監督文才もすごいな。
Posted by ブクログ
人は内にどんなものを秘めているのか。
それは誰にもわからない。もしかしたら自分自身でさえわかっていないのかもしれない。
同じものを見ても人それぞれ捉え方は違ってくる。
隣の芝生は青いとは言うけれど、どんなに近い存在でも同じなのだろう。
いや、近い存在だからこそ羨む気持ちはもっともっと大きくなってしまうのかも。
人とは多面体で出来ている。
一方から見ただけでは理解することは出来ないし、ときには他者から見た自分に身動きがとれなくなってしまうこともある。
傷つけられた心は、どうすれば癒されるのだろう。
傷つけ返したとしても何も得るものはないような気がするのだけれど。
心理描写が素晴らしかった。
繊細に、丁寧に、物語に乗せて痛みが伝わってくる。
読んでよかった。素直にそう思える物語だった。
Posted by ブクログ
自身が脚本・監督をした映画のノベライズ作品。
語り手を替え、時系列も多少前後する八つの章でできています。映画は見ていないのですが、この構成では映像化は難しいと思うので、おそらく描き方が違うのでしょうね。
読み始めてすぐに「うまいな」と思わせます。語り尽くすことなく、虚ろな部分を残し、それがかえって読むという行為に集中させてくれます。
田舎に残った誠実な兄と都会で華やかに働く弟の心の裏での確執。映画では香川照之とオダギリジョーですか。非常に良い配役でしょうね。
Posted by ブクログ
一人称が変わりながら時系列が進んでいく作品なので、それぞれの場面について語る時の距離感が皆違うのが面白かった。
お互いや自分自身についての認識にも、微妙に差があるのが絶妙だった。
外から見た人の印象と内実がまるで違ったり、実は正反対だったりする、という事が、違う視点からのアプローチで判明するという作品は小説に限らず世の中にたくさんあるけれど、これはそういうものともまた違う気がした。
事実も内実もほぼ間違いなく、誰からの視点でも一致しているのに、それぞれの認識が少しずつずれている。これが本当に絶妙!
すごく丁寧に作られている作品だと感じた。
Posted by ブクログ
二日に分けて読んだ。どうなるかは大体わかっているのだけれど、兄の動向がまったく読めず、不気味で早く読みたいと手が進んだ。人間の誰しもがもっているような汚い部分、生身の部分がむき出しになっていく恐怖を感じる。ふたつの兄弟が出てくるが、血の繋がりって逃げられないし見て見ぬふりもできないし、肯定的に受け取れるものばかりではないな、と感じた。
Posted by ブクログ
以前から気になってた映画の小説版。聞けばこれが原作ではなく、映画後のノベライズだとか。
ノベライズということで期待はしていなかったのだけど、これは衝撃だった。それぞれ登場人物による語り、少しずつ明らかになる真実、兄弟関係。ぞくぞくした。
映画を見てみたくなりました。
西川美和は監督も脚本も自身で行い、しかも小説まで書けるとは何て多才な人なんだと思ったら、解説を読むと努力の人と言うのが分かる。すごいなあ。
Posted by ブクログ
人間の情けなさや憎悪など、暗い感情の動きがシンプルな言葉のなかで上手く読者に想像させる。登場人物一人一人が語る描写の仕方により、ひとつの事実がどんどん浮かび上がり、そこにあった人間模様も同時にわかっていく。その様が面白く、ちょっぴり切ない。
Posted by ブクログ
思わず唸ってしまった本。面白い。映画はまだみたことないんだけど、これは見ずに読んでしまって正解だと思った。
小説が面白いので、ついYoutubeで映画の予告編を途中で覗いたのだけど、映画と役者の印象が強過ぎて、そのあとに小説に戻る時にイメージを払拭するのに苦労した。
こんな話だったんだなぁ。
人類最初の殺人事件がアインとカベルのように、兄弟ってやつはどうにも近過ぎて厄介な関係になるのかもしれない。
この小説を読むと、作者の西川さんの映画作品にもすごく興味をもってしまう。
こんな人の描く映画に出てみたいなぁ。
Posted by ブクログ
つり橋から落ちて一人の女が死んだ。事故か殺人か。
人物の語りで物語が進み、お互いの「妬み」「愛情」が引き出される。
「どうしてお前と俺はこんなに違うの?」どこの家にもありそうで胸が痛い。
Posted by ブクログ
数年前に映画を観て、衝撃的で印象的な、心に深く残る作品だった。
読んでいる間、ずっと眉間を寄せていた。
切なくて、痛くて、悲しくて悔しくて、ゆれて。
家族という、何よりも誰よりも、
身近でありながら、遠い、
唯一無二の存在。
どうか、お兄ちゃんも弟も、幸せになって。
Posted by ブクログ
映画とは異なる味わい。これはこれで成立するが、細かすぎる描写が、文章としては、ややくどいかも…とは言え、脚本、ノベライス、映画化をすべてこなせるのは凄い!恐るべし才能、西川監督。個人的には映像作品の方が好き。
Posted by ブクログ
映画の方は何回か観ていて好きな作品だったので小説も読んでみました。
文章だと映画とはまた違った味わいがあるように感じましたね。
上手くいえないけど、終盤の展開はグッとくるんですよね。
Posted by ブクログ
兄弟って
血が繋がってて同じ所で育ってきたから
ある程度何を考えとるか分かるし、
でもそれぞれプライドとか嫉妬とかもあって
素直な気持ちも大人になるにつれて
伝えにくくなっていって
ある意味1番複雑やなと思う
自分が思い描いていたこととは
大きくかけ離れたことが起きる度に
それぞれの登場人物の気持ちがゆれていくのが分かった
Posted by ブクログ
同著者の「永い言い訳」からこちらに戻る形で読んだ。
芥川龍之介の「藪の中」形式そのまんまで語られる内容は、誰が本当の事を言っているのか、読み手は惑わされながらサクサク読み進められるが、最後だけは「?」な感じ。どんでん返しを期待してたが、そのまんま終わってしまった。
Posted by ブクログ
兄が突き落としたのか。智恵子の死をきっかけに兄弟が近づき揺れ動かされ壊れていく。はじめは、よそよそしい文章で馴染めなかったが、それがこの関係性からきているんだろうな。一番近い存在だからこそ、思う気持ちを伝えられず、複雑な思いが絡みあい、嫉妬や憎しみに変わる。家族のことを思うからこそ、家族のためにいろんなことを我慢してきた、その苦しみは深いと思う。
「実はいちどだけ、母の様子を見に行ったんだ。そのことは誰も知らない。」
Posted by ブクログ
なんでこんな本読もうと思ったのか。
きっと映画の宣伝か何かでみて気になったんだろうな。
同じ兄弟ものなら間宮兄弟の方がよかったな。あまり覚えてないけど。
とにかくみんな暗いよ。。。。