あらすじ
お上の目をかいくぐり、世の男どもにあらゆる享楽の手管を提供する、これすなわち「エロ事師」の生業なり――享楽と猥雑の真っ只中で、したたかに棲息する主人公・スブやん。他人を勃たせるのはお手のものだが、彼を取り巻く男たちの性は、どこかいびつで滑稽で苛烈で、そして切ない……正常なる男女の美しきまぐわいやオーガズムなんぞどこ吹く風、ニッポン文学に永遠に屹立する傑作。
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Posted by ブクログ
わたし、先月末で67歳になりました。いえ、おめでとうはいりません。なぜこんな事を言うかと申しますと、こんな歳になってもこの本の感想を書くのははずかしくて、読んでも知らん顔しようかと思ってしまう、そのかまととぶってるいくじなさにあきれてしまうからです。
題からも想像がつくように、文面を引用したらきっとネットの規制が入ってしまう文字が踊っております。でもちっともいやらしくないんです。読んでいるとふきださずにいられません、そういう自分が「おとな」になったなーと思うのです。えっ、やっぱりかまととぶってて気持ち悪い?それがこっぱずかしいのです!
直木賞の『火垂の墓』『アメリカひじき』もいいけれど、やっぱりこれが野坂昭如の一番の傑作ではないかと思います。おとこのどうしょうもないエロ好みをおもしろおかしく書いています。イロじゃないんです。エロなんです。
スブやん。主人公です。「酢豚の略。肥ってはいても、どこやらはかなく悲しげな風情に由来」からついたあだな。哀しげ、酸いような顔を思い描き、これだけでも笑いました。
仲間のエロ事師たちと法の網目をくぐり、あぶない写真を作り販売、ブルーフィルム作成し映写会、女との仲立ち...のビジネス。そう、今ならネット出会い系サイトなのでしょうかね。
ビジネスはビジネスでいろいろ苦労するのが見ものです。でも、そこから見えてくる「おとことおんなのとんちんかん」がおもしろいです。「男と女のさが(性)」じゃなくてです。むしろ「おとこの思いこみ」みたいなものがおかしいです。
ほんと「おとこ」ってあわれですねー。って書くのがこっぱずかしいです。そんなに知りもしないくせに…。
Posted by ブクログ
野坂昭如氏 訃報を受けて、一年の積読を了。 卑猥だが、猥雑ではない。 下品だが、いやらしさはない。 この題材でユーモアと悲哀に昇華させる筆はさすが。 関西弁のリズムが掴めれば、もっと早く読み終えて居たとは思う。