あらすじ
一介のKGB職員から「皇帝」となった男が望むものとは? 今も謎に包まれるロシア大統領の“正体”を米研究機関の第一人者が6つの側面──「国家主義者」「歴史家」「サバイバリスト」「アウトサイダー」「自由経済主義者」「ケース・オフィサー(工作員)」から徹底分析。計り知れない男プーチンを正しく恐れるための決定版。 ※単行本に掲載の写真の一部は、電子版には収録しておりません。
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Posted by ブクログ
プーチンのペルソナを国家主義者、歴史家、サバイバリスト、アウトサイダー、自由経済主義者、ケースオフィサーの組み合わせとして分析。筆者はプーチンを現実主義者としているが、今般のウクライナ侵略はペルソナの変化(パラノイア的歴史家)なのかもしれない。本文中の興味深い点は以下のとおり。
・プーチンにとって重要なのは情報が真実かどうかよりも周りの反応。
・プーチンは副市長時代の失敗により、天然資源の備蓄が不可欠で、民間企業は当てにならないことを学んだ。
・プーチンは96年、オリガルヒの掌握という明確な目的のもとに、アウトサイダーとしてモスクワに呼び寄せられた。
・ドレスデン勤務のために80年代後半のゴルバチョフ主導の楽観主義時代の経験がすっぽり抜けている。
・プーチンが大統領として優先したのはウクライナを迂回した欧州の新しいパイプラインを敷設すること。
・プーチンが米に否定的な感情を持ち脅威を認識するようになったのは2000年代。2006年にはパリクラブへの国際債務返済。2008年には「ウクライナは国家ですらない」とブッシュに言明。
・2011年の抗議デモは情報空間の力を甘くみすぎていた。
・56年にハンガリー介入や68年のプラハ介入を反露感情を引き起こした大きな過ちと認識。
Posted by ブクログ
[多様な顔,統合された人格]世界で最も影響力のある人物とも言われるロシアのプーチン大統領を,6つのペルソナ(人格・仮面の意)を持つ人物として読み解こうと試みた大作。現代ロシアを考察する上で,欧米においては非常に高く評価されている作品でもあります。著者は,トランプ政権下で米NSCのロシア・欧州上級部長に任命されたフィオナ・ヒルとブルッキングス研究所のシニア・フェローを務めたクリフォード・G・ガディ。訳者は,濱野大道と千葉敏生。原題は,『Mr. Putin: Operative in the Kremlin』。
非常に実証的かつ体系的にまとめられているプーチン大統領理解のための必読書といった感のある一冊でした。プーチン大統領を一刀両断的に捉えることなく,その複雑さを受け入れながら解説を進めていく筆に,真摯かつ高度な学究姿勢が伺えるかと。解説書的な記述ではないため,読んでいて面白い点も高評価のポイントです。
〜本書の執筆を通してわかったのは,ウラジーミル・プーチンにとって大事なのは,情報が真実かどうかではなく,彼の言動を相手がどうとらえるかである,ということだ。プーチンにとって興味があるのは,特定の現実を伝えることよりも,その情報に対する周りの反応を確かめることなのだ。〜
分厚いですがロシア入門書としても実は良いのかも☆5つ
Posted by ブクログ
ロシアのプーチン大統領がなぜウクライナを侵攻したのか?その理由の一端を説明している本。
しかし、プーチン大統領個人を分析するだけでは、現在のロシアの行動をすべて説明はできまい。実際には、ロシアがいくら独裁国家といえど、プーチン大統領個人だけで重要な政策決定を勝手に下せるとは思えないので、この本だけでウクライナ侵攻含めたロシアの行動の背景すべては説明できないだろう。
だからといって、最高権力者である大統領の頭の中を理解することの重要性はもちろん薄れない。
筆者はハーバード大で博士号を取得する程の明晰な頭脳を持つ、フィオナ・ヒル女史。本書の刊行は2024年2月24日以前のことである。今回の侵攻も踏まえた続編の刊行が楽しみである。
Posted by ブクログ
プーチンは、西側の指導者との接触が少なく、その動機や思惑を理解できてない。欧米がロシアを封じ込めようとしており、その手段は軍事以外の方法(民主化運動の支援等)で行われていると考えている。プーチンはロシアの国益のためには、欧米の弱点を探し、欧米のリーダーや市民を脅すことをやる。
プーチンのこれまでやってきた事は、この本の見方でほぼ説明できると思う。また、トランプのロシアゲートについても、いかにもやりそうと言え、ますます疑念が深まった。今更だが、エリツィンの頃に支援の手を差し伸べて、もっとうまく西側に取り込んでいればこんな事にはならなかったのではと思う。