あらすじ
ロストフ伯爵家とボルコンスキイ公爵家の人びとの交際。また、旺盛な実行力に富むアンドレイと、繊細な感受性で自己の内面に没頭し人生の永遠の真理を探究するピエール。二人の若い貴族に仮託してトルストイの深淵な人間観が吐露され、彼らの生活を通してロシアの実態があざやかに写し出される。本巻は、全編の中でもっとも詩的な部分であり、多くの美しい印象的場面が展開される。
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Posted by ブクログ
第一巻で整えられた舞台と、大きな大きな予感とが交錯し、絡み合って、目にも綾な物語が織りなされる第二巻。
本当にどれも素晴らしいエピソードばかりで、何から、そして誰から言えばいいのかわからない。
だがあえて言えば、前半がピエールで後半がナターシャ、だと思う。
ピエールがフリーメーソン会員になるのには本当に驚いてしまった。一体彼はどうなってしまうのだろう、宗教的なものに目覚め、彼と言う人間は変わってしまうのだろうか、ととても心配した。
しかし、ピエールはやはりピエールのままだった! 彼は苦悩し、求め、そして行いをするが、それは彼にとって結果を生まない。物事は常に彼の思い込みを嘲笑うかのように、彼に自身の無力さを突きつける。
けれど、ピエールはそれでも理想を捨てないし、善意を尊いものと考え、そして人を愛そうとするのだ。そして、わかる人にはそれがわかっている。わからない人が大半だけれど、そういう人たちは彼を滑稽な人間だと思いまたそう扱うけれど、それでもピエールのその温かい気持ちと人柄は必ず伝わる人には伝わっている。
彼は不器用で全然実際的な物事には向かないけれど、それでも彼という人間にしかできないことを感じさせてくれる。彼が唯一の人物であると。
そして、ナターシャである!
いやはや、びっくりしてしまった。第一巻を読んだ時から、「この子は絶対美人になるだろうなぁ」とは思っていたが、まさかここまで美しくなるとは思わなかった。
彼女がアンドレイ公爵と踊る場面の、なんと美しいことだろう……
それだからこそ、この巻の最後のエピソードで全く筆を滑らせなかったトルストイに驚嘆する。
ナターシャがアナトーリに見つめられ、そして話しただけで良心の呵責を感じるということの、この説得力……どうしてトルストイはそんなことがわかるのか? どうして美しい女性の葛藤、それも輝かんばかりの、この上なく魅力的で、しかも若い(!)ナターシャの気持ちが、こんなにもわかるのか?……
誰もが自分の気持ちのために笑い、話し、愛し、そして葛藤する。けれどもそれは決して利己的なものではなく、それが生きるということ、それこそが生きる原動力であるということ。私達は自分の感情のために動く、そしてそれが世界を作る。
素晴らしいものを読んでいるなぁ、という幸福感を抱きながら、第三巻へ。
Posted by ブクログ
「過ちをおかした女を許してやるべきだとぼくは言った、しかし、ぼくが許すことができるとは、言わなかった。」
ナターシャの恋愛事情。
戦争前の平和なロシアでの社交界。