【感想・ネタバレ】新・リーダー論 大格差時代のインテリジェンスのレビュー

あらすじ

『新・戦争論』『大世界史』に続く人気シリーズ第3弾!
今回のテーマはリーダー論。
「優れたリーダーが出にくくなった現代だからこそ、私たちは
新たなリーダーの到来を待ち望んでしまう」(池上 彰)

【おもな目次】
●第1章 リーダー不在の時代--新自由主義とポピュリズム●
リーダー論が成り立たない時代/エリートの責任放棄/左右に共通するエリートのナルシズム など
●第2章 独裁者たちのリーダー論--プーチン・エルドアン・金正恩●
リーダーに対する国民感情/国家に不可欠な暴力装置/北朝鮮のリーダー論 など
●第3章 トランプを生み出したもの--米国大統領選1●
ドナルド・トランプと橋下徹/トランプの共和党乗っ取り作戦/民衆の破壊願望に乗るリーダー など
●第4章 エリートVS大衆--米国大統領選2●
トランプ大統領で日本はどうなる?/教育が格差をつくりだす など
●第5章 世界最古の民主主義国のポピュリズム--英国EU離脱●
国民投票が招いた国家統合の危機/アイルランドのパスポートを求める英国人 など
●第6章 国家VS資本●
パナマ文書の情報源はどこか?/税率の高い日本から逃亡するエリート など
●第7章 格差解消の経済学●
1%の増税で「教育の無償化」は可能/タンス預金の非合理性/静かなる取り付け騒ぎ ほか
●第8章 核をめぐるリーダーの言葉と決断--核拡散の恐怖●
オバマと被爆者の対面に思わず泣いてしまった/オバマ広島訪問に冷ややかだった沖縄 ほか
●第9章 リーダーはいかに育つか?●
伊勢志摩サミットの内情/角栄ブームをどう見るか?/リーダーは段階を経てつくられる ほか

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Posted by ブクログ

ネタバレ

新・リーダー論 大格差時代のインテリジェンス (文春新書) 2016/10/20

トランプは、実はものすごい潔癖症です。自分専用のトイレしか使えない
2016年12月31日記述

池上彰氏と佐藤優氏による対談本の第三弾。
2016年(平成28年)10月20日第一刷発行。
この書籍発行の一ヶ月後にはアメリカ大統領選挙で
ドナルド・トランプが勝利するという。
ある種、既存エリートが力を失いつつあるという本書の指摘がいきなり当たってしまった感がある。

印象に残った文章を引用してみたい。

どの先進国でも、大衆迎合型のポピュリズムが勢いづいています。(池上)
それぞれの時代、それぞれの地域、それぞれの環境によって、リーダーに求められる役割は違ってきます(池上)

強いリーダーを育成しようとしても、これだけ個人がアトム化(原子のようにバラバラになること)
している所では、リーダーはでてきようもありません。
どの先進国もそういうジレンマに陥っています。(佐藤)

エリートは自分自身に対する自信を喪失する一方で、社会に対する責任も放棄しています。
日本の裁判員制度がその典型です。(佐藤)
⇒個人的には国民の感覚を司法判断に影響させることは良いと思う。
ただ村瀬均などの死刑判決を覆すクソ裁判官が一番国民も裁判員制度も裏切る国賊だと思う。

組織には個人を強制的に鍛え、能力を身に付けさせる仕組みがある。(池上)
警視庁捜査一課担当の2年間は、事件現場での聞き込みや深夜早朝の捜査員への取材など
休みが一切ない「この世の地獄」を体験しました。
それ以降、世の中にはつらい仕事などなくなりました。
「組織が人を育てる」という点は、若い人たちにも、ぜひ知ってほしいところです。(池上)

どんな企業でも、どんな組織でも「現場に任せる、ただし何かあったら俺が責任を取る」
というのが、理想のリーダーですね(池上)

課長も経験していないような霞が関のキャリア官僚など、何の使い物にもなりません。
少なくとも官僚としてのキャリアに何の意味もありません。
組織を見渡すという修練を欠いているからです(佐藤)
若手官僚の自己全能感には驚かされます(池上)

アメリカに比べれば、現時点では日本の選挙の方が品性はまだ保たれているのかもしれません。
少なくとも自民党総裁選で殴り合いにはならないし、総裁候補夫人のヌード写真が問題になることもない(佐藤)
ネット動画でも酷いものが流れた。テッド・クルーズのマシンガンベーコンという政治性、思想性の欠片もない内容。
YouTubeでmachine gun bacon と検索すれば視聴可能。
予備選挙中、クルーズの政治集会で彼の演説を聞いたのですが、トランプの方がまだましだと思いました(池上)

仮にプーチンがロシアの国情に合った強いリーダーだとしても、
プーチンがいなくなった後のことが心配だ。(池上)
北朝鮮の正式名称は「朝鮮民主主義人民共和国」。
国名に「人民」と「民主主義」という言葉が入っていますが、皮肉なのは
コンゴ民主共和国やアルジェリア民主人民共和国と同様に、わざわざ国名にこの言葉を入れている国はたいていそうなってはいないことです(池上)

トランプは「これは口には出さない方がいい」と皆が思うような問題に敢えて触れることで
質の悪い連中を駆り立てて、結局、共和党を乗っ取ってしまった。(池上)

トランプと橋本徹は、似ている部分がある。
橋本は、大阪の子供たちの学力が低いのは学校の先生のせいだ、教育委員会のせいだと言ってバッシングする。
そうやって、わかりやすい敵をつくる。実はその背後には貧困の問題があるのに、そこには目を向けず、「先生が悪いんだ」と非難する。(池上)

トランプは「有能なビジネスマン」と言われていますが、かなり疑問です(池上)
会社を4度も倒産させています。(佐藤)
どうも経営者としてのマネジメント能力を持っているわけではない。
「経営」というより「取引(ディール)」が好きなんですね(池上]

またトランプは、実はものすごい潔癖症です。
自分専用のトイレしか使えない。
出張に出かけても、現地のホテルに泊まることはできるだけ避けて、
ニューヨークへ専用機で戻ったりする。
イベントをなるだけ自分が経営するホテルで
行うのは、そのためなのです。(池上)

民主党のヒラリー・クリントンやバーニー・サンダース上院議員の集会では
支持者はたいていスマートな体形をしていましたが、共和党のドナルド・トランプの
集会では、赤ら顔の肥満体の白人が多かった(池上)

産業革命以来、格差を減らすことができる力というのは世界大戦だけだった(トマ・ピケティ)

ハーバード大学に通った所、10ヶ月で7万ドルかかったそうです。
ロースクールを出るまでに6年かかるとすると5000万円程度かかることになります。(佐藤)
ヒラリーが出たウェルズリー大学(女子大)は全寮制で食事代込みで年間4万5千ドル(450万円)程度。
州立大学では州出身者はかなり安くなる。
それでも日本円で200万円くらい。
それ以外は年間400万円くらいはかかるでしょう。(池上)

日本学生支援機構は「闇金ウシジマくん」に限りなく近いことをやっている(佐藤)

伊勢志摩サミットではメルケル首相など牧師の子に対して異教の神を拝ませるなど
一神教の人間ならどう受け止めるかということが全く想像出来ていなかった。

「ローマは一日にして成らず」と言われるように、理想的なリーダーも、突如、単独で
現れることなどありません。
促成栽培できるようなものではない。
組織内で一つずつ経験を積んで、その組織にふさわしいリーダーが徐々に育っていく(池上)

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2021年12月12日

Posted by ブクログ

ネタバレ

このコンビの本はいつも面白く読ませてもらっている。佐藤優の類いまれな分析力を基に展開されるやや小難しい話を、池上彰がうまく大衆レベルに落とし込んでくれる。池上彰がただのニュース解説おじさんではないことがよくわかる。今回のテーマは「リーダー」について。フランスのサルコジから始まり、プーチン、トランプ、橋元徹まで、現代のリーダーを鋭く分析し、なぜかパナマ文書、教育無償化の話に飛び火して、最後はリーダー論でまとめている。面白く読めたが、せっかくなので過去の偉大なリーダーたちをもっと引き合いに出すなどして、リーダー論的な部分をさらに深く聞かせてほしかった。

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2017年04月19日

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