あらすじ
「男と張り合おうとするな」醜女と呼ばれながら、物書きを志した祖母の言葉の意味は何だったのだろう。心に芽生えた書きたいという衝動を和歌が追い始めたとき、仙太郎の妻になり夫を支える穏やかな未来図は、いびつに形を変えた。母の呪詛、恋人の抑圧、仕事の壁。それでも切実に求めているのだ、大切な何かを。全てに抗いもがきながら、自分の道へ踏み出してゆく、新しい私の物語。
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Posted by ブクログ
現実みがあって丁寧な本だと思います。
日常の出来事1つ1つ丁寧に心情が伝わります。その感情がにハッとさせられ楽しかったです。
大学生から、同棲前、同棲後とバブルを経ながら長い期間の生活がかかれています。
祖母に対する親近感は変わらず、いつもその影が見えます。
読みかけですが、祖母がどのような時代で何を思ったのか、そして和歌がどのように生きるのか、不安まじりで楽しみながら読みたいです。
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少し読んだので追記です。
傷つく出来事があっても辛いと思わないようにしているのが痛々しいく思いました。
男性から傷つくこと、妊娠のこと、賞のこと。
大切に思った何かがうまくいかなくなってしまう。周りの所為にしなさすぎるのは少し違うと感じるのだけど、何かを避けようとしてそう思うことも正しいのだと思います。
過去からの経験や感情がその人を作っていてとても面白い本だと思います。
追
私は年を重ねると嫌な部分もわかるし、理解が深まるのが嫌でした。
故意に傷つける側も傷つけられる側の気持ちもわかってしまう気がします。
おそらくタエも傷つけられたのだと想像して憎く思ったりしましたが、
多分そんなことから抜け出してどう生きるかがスタートラインなのだと、読み終わってみるとどちらかと言うと清々しい気持ちになりました。すこし希望が見えた気がして嬉いです。
普段の何気ないことが組み合わさって歪になるのがとても面白かったです。フィクションのような出来事が出てこなくても感情豊かに創作できるのはすごいと思います。
Posted by ブクログ
恋人の仙太郎を中心にしていたのにいつのまにか仙太郎を置いて自分で歩けるようになっていた。
最初のいい感じ男子仙太郎がどんどんあれ?あれ?と嫌な奴に見えてくるのは元からそういう人なのか和歌の目線なのか、和歌の目線で一緒にひやっとしたり仙太郎の反応にびくつき、いやでも別れるのはつらいなでも一緒にいるとしんどいなの矛盾。
別れて恨みつらみの小説を書くと編集者にそれは違うと言われて、あれ?となるとこ。
私なの?て気づくとこ。
自分のダメさや勝気なとこ、譲れないとこ、変なのかな?て思うとこそういうのがてんこもりに書かれてる。
上手く言えないけど角田光代めちゃくちゃ面白い。すごい。
Posted by ブクログ
はじめての角田光代さん。圧巻。
親に“女”らしく生きることを押しつけられ、仙太郎のリアクションに脅え、しかし自分のやりたいことに人生を賭けている和歌。自分と重ねて読んでいたので、憤り、心をえぐられる部分が多々あった。今でこそ女性の社会進出もだいぶ普通かなと思うけど、仕事を選ぶって、こういうことなのか?と自分の行く末も怖くなった。でも“タエ物語”の辿り着いた先が“愛”だったのには、とても救われた。想像は自分の知っている範疇を超えないだろうから、和歌が“愛”を知ったのだろうと。“タエ物語”が和歌の心境によってだんだん形を変えていくのはおもしろかった。その描写もすごいし、人間の弱さや葛藤も細かく描かれていて、一見矛盾したようなごちゃまぜな感情が、リアルだ、と思った。
“妄想と現実は相反しない”とすると、仙太郎が和歌に言った酷い言葉の数々は、和歌の妄想だったのだろうか?仙太郎はこう思うだろうという仮定が妄想になり、和歌の現実に影響を及ぼした、という解釈をしたが、、。“妄想と現実は相反しない”。何かに当てはめると解るような、でもふわっとしか自分の中に落とし込めない難しい言葉。
Posted by ブクログ
才能を潰すことは本人にしかできない という言葉にふむ〜確かになあと思った。
けど仙太郎は意識してか無意識か和歌ちゃんの自信喪失させようとしたし、酷い言葉でなじっていて腹立たしい。早く別れろ!和歌ちゃん!と思いながら読んでた。
前向きに生きようと思えたわけでもないけど、なぜか読後感が良い小説でした。ちょっと小説家になりたいと思った。
Posted by ブクログ
大きな出来事や、衝撃的な内容が含まれている訳ではないのに、飽きが来ずスラスラと読めてしまった
テーマとして、女性、恋愛、仕事、生活、バブル
が挙げられる。
主人公はバブル時代とバブル崩壊を生きる20代女性
20代特有の、少し心配になるような価値観や考え方とか、20代を経験した女性なら共感できる点が多いなと思った
主人公の恋人である仙太郎は、若くしてクリエイティブな仕事で成功を収め、結婚に際して、現実的な仕事をすると言うリアリティーさがあった
20代前半の、仕事である程度の成功を収めた仙太郎の言動がどんどん業界にかぶれていく感じとか、痛さを感じた。
女としての幸せと、仕事での成功を同時に掴む女なんて居るのかね?と言う疑問が生まれた
Posted by ブクログ
思いがけず面白そうな本見つけた!
「脚をルの字に折って」って、今まで本読んできて初めて見つけた表現!確かにあの座り方名前ないよね
「分からない」と言う主人公を見て、前まで読んでたのが登場人物みなえらく察しの良すぎるミステリーだったこともあって、理解力の低い人を主人公にして話を書くのはなぜだろうと思った
作者の頭のレベルと主人公の頭のレベルを同じにしなかったら、分からない人の視点に立って書くのってめっちゃ難しいんじゃないのか
主人公の性格によって事象は同じでも感じ方は全然変わってくるし、無数の主人公のお話があると思ったら、作者たちはどうやって主人公を決めてるんだろう〜って頭おかしくなりそう
こんなお話描きたい、だけじゃなくてどの視点で話を進めるかって問題まで出てくるのか…大変すぎる
彼女の振る舞い見て君はこうだからこうした方がいいよってアドバイスくれたり、就活しないのに痺れ切らして会社紹介してくれたりって積極的に優しくて彼女にちゃんと興味を持ってるいい彼氏じゃんって思ったけど、別の言い方すればこうすべきって自分の考えを他人にも求めて干渉してくる男であり、彼女にこうあってほしいって理想があったり見返りを求めている男ってことでもあるんだなと思った
この人がいい人かどうかって、著者が意図的にどちらか(主人公の味方か否か)に描こうとしてても、たとえ小説の中であっても私が図ろうとしない方がいいなって思った
津村記久子さんのあとがきより「仙太郎が何を考えているのかについては〜、一見肯定的であったり、鷹揚であったり、正論であったりしながら、その下に触れたら切れる紙を忍ばせるような未必の故意がある。」
未必の故意!!まじでやっかいよな
「終盤での仙太郎の振る舞いには、毒気を抜かれると同時に、その場限りで言葉を発する人の空恐ろしさを感じる。」
難しい話だった
自分の人生生きてるのえらいなあ
Posted by ブクログ
仙太郎の言動一つ一つが残酷だった。
ただ、最後に、仙太郎が「何言ってんの。きみが仕事をとったんじゃないか。ぼくじゃなくて」と言ったとき、仙太郎はもちろんひどいけれど、もしかしたら彼も寂しかったのかもしれないと思った。
一人で逞しく生きることだけが強いというわけではないけれど、自分の価値を他人に決めさせない、そのための「軸」を持っておくことは大事だと思った。
自分はどう感じるのか、に自信を持ちたい。
Posted by ブクログ
面白かった…!
何がとか、どう、とか問われると難しいのだけど
本田和歌の祖母タエは何者なのか
恋人の仙太郎は何者なのか
そもそも本田和歌は何者なのか
何かが隠されているようで
入り込んでしまう何かがあった
そんなことはっきりとは分からないままで、
それが人生だよなと
なんとなく思わされた
有川浩さんのストーリーセラーを読んだ後に
読んだから書く側の人間の作品が続いてソワソワする。
いや、まぁ、書けないのだけれども。
Posted by ブクログ
様々な場面で強く心を揺さぶられた。最後まで恋人への執着がすごかった。常に意識の根底に恋人の存在があって、主人公はずっと振り回されているけど、だんだん実像ではなく、自分の中の恋人像に振り回されていったような気もした。大切にしていたものと、小さなズレを感じて(いつもの感じじゃない)少しずつ不安になっていくところと、自分の衝動との葛藤が読んでいてとてもどきどきした。
主人公の執着もすごいけど、恋人のつけ離し方も恐ろしい。安心していた存在から、牙をむかれる感覚が恐ろしかった。「あんな汚い生活してるから」には鳥肌が立った。
強い淋しさを、静かな怒りで返していたのかもしれないけど、受け入れられないものを傷つける人間にはなりたくないと思った。
母の「醜女」とまで呼んだ祖母に対する軽蔑のような思いも、執着なように感じた。自分は絶対に母のようにはならない、という思いが読んでいて苦しかった。
人は受け入れられないことがあると、何かのせいにして、自分を守ろうとするのかもしれない。手放せた方がきっと楽なのに。端から見るとそう思ってしまう。自分の中にも手放せないものたくさんありそう。
母や恋人に何度も言葉で傷つけられても、”ただしい”と思うのは、打ちのめされすぎて立ち上がれないから?自分を責めることでしか自分を守れなかったのかな。
怒りは、人の心を守るものなのだと思った。
書きたい衝動を猛獣と表現しているところが好き。振り回されながらも追いかけずにはいられない。そんな体験してみたい。
術後のシーンでは何度も心が揺さぶられた。手術して初めて「1人じゃなかった」と感じること、なんとしても賞をとらなければという思い、全てから解放されたのに感じるむなしさ、自分の本音に耳をふさぎたくなる思い。どれも痛いほど伝わってきた。
Posted by ブクログ
昭和から平成になる頃の時代。
有名になっていく彼
元は作家だった?祖母
その二人をすごく意識してる主人公。
自分もそこから作家を選ぶけど
なんだか全部中途半端で。
彼に対して劣等感とかあったり
彼が不在の部屋を楽しんでるのに
結局彼が離れていくと
ずっとなぜなぜに囚われて苦しそう。
自分という価値を求めすぎて
終始生き辛いよと思いながら読んだ
Posted by ブクログ
田舎から出てきた平凡な大学生の和歌。1つ年上の仙太郎という初彼氏がいる。仙太郎は都会っ子で、バブルの趨勢も手伝って、在学中にイラストレーターとしてブレイク。和歌には物書きをしていたと考えられる祖母がいた。母はその祖母を嫌い、和歌に普通の女性の幸せを望む。就活もしないでいた仙太郎に勧められ、ひとまず就活し、仙太郎と祖母の影響を受けて、小説を書き、ブレイクする。本人には言わないものの就活前後は仙太郎との結婚を望み、ブレイクしたら同棲を誘われ始める。書くことに夢中になると家内は荒み、妊娠、流産。
和歌より先にブレイクし、同じようなことを経験し、生活リズムもしっかりしている仙太郎。長い仙太郎との生活は終わりを迎え、仙太郎は別の人と結婚し子供が2人。
和歌視点で書かれているので、仙太郎の気持ちは読者の想像となる。
和歌は仙太郎から大きく影響を受け、無意識にも後を追いかけるように頑張ってたんだと思う。仙太郎に甘えていた部分もあったとは思うけど、タイミングは合ってないし、それを素直に言わないから、尚更ズレていったんだと思う。言えない性格なんだろうとは思うけど。
ストーリーはありきたりに思われるかもしれないけど、続きが気になった。モヤモヤした気持ちを文章にできるのが凄いと思う。
Posted by ブクログ
10代からの長い付き合いである彼氏の影響って本当に強い。
私も10代で初めて付き合った人と10年近く続いたけど、そこが自分の常識だった。
別れた後は何もかもが驚きであった。
和歌にとっての仙太郎は永遠のライバルであり物事の基準的存在。
恋人というより仙太郎が全ての目盛りだったのかも。
仙太郎は言うほど悪い人では無いと思った。
和歌と普通に向き合って人生を共にしていきたかっただけでしかない。
和歌が思うほど仙太郎は特別な人間では無かっただけ。どこにでもいる、あたたかい家庭の幸せを求める普通の人だったのだと思う。
攻められてる気持ちになるのは、和歌自身が自分の足りない部分への劣等感が強かったんじゃないかな。
和歌は自分の為に生きる人。
ある意味ワガママ。
仙太郎は周りを気にしながら気を遣い生きる人。
だから、相手の行動も目につくのかなと思う。
子供が本当に楽しみだったのが伝わってきたから、そこはとても悲しかった。
和歌が家族にも話していなかった事を知った時の仙太郎の気持ちはなんとなくわかった。
仙太郎の気持ちが離れたきっかけにもなったと思う。