あらすじ
このミス1位ほかミステリー3冠達成の感動大作
過去へ旅することのできる「扉」の存在を知った男はケネディ暗殺阻止に挑む。キングにしか書けない壮大な物語。落涙保証の感動大作!
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Posted by ブクログ
タイムトンネルを潜って60年代のアメリカに行き、ケネディ暗殺の真犯人を突き止めて暗殺を阻止する物語。上巻の時点ではまだそこまではいかず、父親に家族を皆殺しにされた校務員のハリーの過去を変える話と、前任者のアルが変えた誤射で半身不随となったキャロリンの過去を変える話が中心である。中盤にはあの忌まわしき町である「デリー」が出てきて、年代がピタリと付合するのでまさかと思ったら『IT』のルーザーズクラブのリッチーとベティが出てきたことには驚いてしまった。ピエロの恐怖が去った後であるとはいえ、相変わらずデリーの描写とそこに住まう悪徳の影響を受けた人間のおぞましさは読んでいてゾワゾワしてしまう。
まずタイムトンネルの設定が面白く、年代は1958年で固定されており、過去改変はできるものの再びタイムトンネルを潜れば全てリセットされてしまうというのが特徴の一つで、ケネディ暗殺までは5年間の猶予があるというのがポイントである。裏を返せば一度失敗するとまた5年かかるのと、そこに至るまでに変えた過去改変含めて全てやり直しになるため、そう気軽にポンポン変えれるわけでないあたりに「時」のルールの重みを感じる。加えて、過去改変にはそれを押し留める強制力があり、それに対してどう抗うのかも本書の見どころの一つだろう。
キングは稀代のストーリーテラーでありながらも、その真骨頂はやはり微に入り細に穿つような徹底した描写力にあり、キングの愛する60年代の牧歌的なアメリカの情景が読むだけで脳裏に浮かび上がってくる。泡をスプーンで切って提供されるルートビアは非常に美味しそうだった。このキング特有の濃密な描写による楽しみは小説ならではだと思う。
舞台もまた魅力的であり、SNSはおろかインターネットすら覚束ない世界特有の寛容さや人に対する警戒心のなさ、そして人目につかない所で起こる犯罪などの、未知の領域がまだあることによる薄暗さなど、この小説の主役は60年代アメリカそのものと言っても過言ではない。中巻、下巻も楽しみである。
Posted by ブクログ
アメリカ人はリンカーン暗殺とケネディ暗殺について語るのが好きだなあと思う。
まあ、日本人が本能寺について語るようなものか。
ケネディが生きていたら世界は今とは違っていたはずだ。
そう信じている友人アルに、死期が迫っている自分の代わりに過去へ行って、ケネディ暗殺を阻止してほしいと頼まれるジェイク。
ワンアイデアでこれほどの超大作。
けれど、全然無駄な部分がない。
その「穴」は、どういう理屈で過去と繋がっているのかはわからない。
ただ、毎回同じ場所同じ時間に戻されるので、過去に対応すること離れてくると比較的簡単だ。
ただし、一度現代に戻ってから過去に来ると、全てが振出しに戻っていることになるが。
ケネディの暗殺を阻止する前に、本当に過去を変えることができるのかを検証する必要がある。
しかし、過去は変化を望まない。
過去を変えようとする人間に襲いかかる過去の抵抗。
過去には意思があるのだろうか?
毎回必ず同じ場所同じ時間に戻るとアルは言ったが、ジェイクが過去に戻った時、ほんの些細な違いが表れ始める。
それはどういうことなのか?
頭の中は高速で物語世界を理解しようと回転し、ページを繰る手は止まらず、スティーヴン・キングの手のひらで転がされているような気がしてくる。
けれど、キングだよ。
必ずしも勧善懲悪とは限らない。
理不尽に不幸な目に遭っている一家はもっと不幸になるのかもしれないし、そもそもケネディの暗殺は実行されているのだから、ジェイクの苦労は水の泡の可能性の方が高い。
誰一人救うことができずに徒労に終わるのだとしたら、どうやってカタルシスを得たらいいのだ、私は!
だから、キングだよ。
登場人物たちが不幸になるのか幸運をつかむのかはわからないけれど、この本が面白いのは間違いないだろう。
まだ上巻を読み終わっただけだけど、それはもう、はっきりしている。
Posted by ブクログ
ああキングよ君を泣く。
ホラーに生まれしきみならば
恐怖の描写にまさりしも
海外ドラマ監督はSFファンタジーを握らせて
君に書けよとおしへしや。
君もかかんと挑みとて
微妙な長編がうまれしや。
キングの長編(三巻以上にわたる作品)は前からイマイチなのが多かったけど、これはやばい。
っていうか、こんなの昔のキングなら短編だったんじゃない? 特に上中巻がたるい。ひいひい言いながら読んだけど、この文章量でも傑作短編の「しなやかな銃弾のバラード」や「ジョウント」、「浮き台」の充実感にはかなわない。
そして、キングのある意味一番のウリである、「ダサイ(けどやたら輝かしい)青春描写」について、今回は… いつもよりダサイ! ダンスかよ! まあいいけどね… でもそれなら「ジョイランド」のホーキーポーキーのが良かった。
目新しいところもないし、いまいち!