あらすじ
私たちの行動をコントロールしているのは「自分の意識」ではなかった! 例えば衝突の危険をはっきり認識する前に、足は車のブレーキを踏んでいる。脳はたいてい自動操縦で動いており、意識は遠いはずれから脳の活動を傍観しているにすぎないのだ。だが、自覚的に制御することができないのなら、人間の行動の責任はどこにあるのか? 意識と脳の驚くべき働きを明かす最新脳科学読本。『意識は傍観者である』改題文庫化。
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Posted by ブクログ
私たちは意識に基づいて、意思決定していると思い込んでいる。しかし、実際には意識というのは、脳が超高速で複雑な処理をして出力された結果に過ぎない。
脳は五感に基づいて経験を豊かにする。しかし、その一つが欠けたとすると、その瞬間に世界は今までより豊かでなくなる。そこで、感覚代行というものがあり、視覚が失われた人が触覚を通じて世界を理解することが可能になる。途方もない腦の学習が必要になるが、言語感覚で理解できるようなるらしい。
私たちの営みにはアクセスできない。理性と本能という二つの背反するグループが私たちの意思決定に大きく関わっている。どちらの意見が取り入れられるかはその時々の状況による。神経脳科学を駆使して私たちの脳を解明していくが、最近では法学にも関係性が出てきた。
Posted by ブクログ
10年前と少し前の書籍だからか既知の事実もいくつかあったが、内容は面白かった。
基本的には脳はリソースなどを効率よく、その人間にとって都合の良いように無意識が働いているという話だ。
本の中で興味をひく話がいくつかあった。
一つは人間の脳は進化によって賢くなっているのではなく、社会に適した方に進化しているという話だ。本質が同じ問題を出されても、実社会に絡めた文章にするだけで理解度が大きく跳ね上がる、という実験が紹介されている。本書ではこれは人間の心理は社会的問題を解決する方に進化しているとされていたが、社会的問題の方が普段触れる機会が多いため脳にそれを処理するプロセスが焼き付いているのではないかと思う。実際本書の中でも何回も繰り返すことで脳にプロセスを焼き付かせて無意識に実行できるようになるという話がある。社会的に関心のあるものの方が脳にインプットされやすいように進化している、という意味では筆者の意見にも賛同できるものである。
また、人を決定付けるのはその人の遺伝、環境、神経回路であってその人の意志ではないと本書では主張されている。犯罪を犯したとき、その人は非難に値するのかを問題とする章が存在する。私も同じような考えを持っていて、犯罪を犯した人は周りから非難されるが、自分自身がその犯人と同じような経験、環境で育っても罪を犯さないとなぜ言い切れるのだろう? 人間の心理というのはその人の環境、遺伝で大きく変わってしまう。自身が犯罪者の立場になることができないのに、なぜ人はそう傲慢になれるのか。昨今の社会的制裁や私刑を見ていてそう思わざるを得ない。犯罪を憎しみ報復をしたいという衝動は自分にもあるので気持ちは理解できるが、今後その者をどうやって更生させるかということ、そして同じような犯罪が起きないためにどうすればいいかを考えていきたい。
中にはいくつか眉唾なものもあった。例えば名前がJから始まる人は同じく名前がJから始まる人と結婚する確率が高いというものだ。日本ではそんな話を聞いたことがない。山田さんは山田さんと結婚する確率はJのそれよりはるかに高いということになってしまうがそんな事実はない。これを潜在的自己中心性と述べられているが、これには他の要因が入っているのではないかと想像する。
色々と長く書いてしまったが、内容としては脳の無意識についてまとめられた良い本だったと思う。
Posted by ブクログ
生成AI活用をする際に「意識」の理解は大切。本書はこれをさまざまな事例で分かり易く詳しく解説している。まずは手にとって読んでほしい。
## 『意識は傍観者である』読書メモ - 高校生向け要約版
### 1. 本の基本情報
- **タイトル**:『意識は傍観者である』(文庫版『あなたの知らない脳』)
- **著者**:デイヴィッド・イーグルマン(脳科学者)
- **テーマ**:脳の95%は無意識で動いている!意識は「後付け説明係」
(例)スマホの通知→手が勝手に触る→後から「自分が触ろうとした」と錯覚する状態
### 2. 脳の驚きの仕組み
#### (1) 時間差の謎
- **実験結果**:指を動かす「意識」より0.3秒早く脳が活動開始
- **現実**:脳が決断→後から意識が「私が決めた!」と勘違い
(例)テストで迷った問題にチェック→後から「直感で選んだ」と記憶が修正される
#### (2) 脳内会議説
- **比喩**:脳を「国会」に例える
- 無意識:各議員(神経細胞集団)の議論
- 意識:首相官邸の広報官(結果だけ報告)
(例)「アイス食べたい」という衝動は、甘味・体温・記憶など複数の脳領域の調整結果
### 3. 赤ちゃんの脳発達
#### 学習のゴールデンタイム
- **0-2歳**:神経回路が毎秒180万個形成
- **「高い高い」の効果**:
- 視覚(上下移動)+体感(重力)+聴覚(笑い声)を統合
- 1回で5,000個の神経接続強化
(例)積み木遊び:形の認識+手指の制御+重力予測が同時学習
#### 危険なケース
- **刺激不足の影響**:
- 言語理解エリアが30%未発達
- 感情制御が困難(キレやすい等)
(具体例)従兄弟のケース:要求しない赤ちゃん→神経の「飢餓状態」→認知機能が育たず
### 4. 意識のトリック
#### (1) 時間編集機能
- **脳のズル**:出来事の順番を後から変更
- 例:野球のバッティング時、実際より0.5秒早く「ボールを見た」と錯覚
#### (2) パターン過剰認識
- **生存戦略**:曖昧な状況ですぐ「敵の策略」と判断
- メリット:危険回避優先
- デメリット:誤解が生じやすい
(例)森で物音→「熊かも」と即判断(実際は風の場合が多い)
### 5. 面白い症例集
#### (1) トゥレット症候群
- **特徴**:意思と無関係な動き(まばたき過多等)が出る
- **脳の原因**:運動制御回路のショート状態
(例)「ドアノブ触りたい」衝動→手が勝手に動く→後から「触ろうと思った」と解釈
#### (2) 盲視現象
- **不思議**:目が見えなくても障害物を避けられる
- **仕組み**:無意識の視覚回路が活動
(例)暗闇で物にぶつかりそう→無意識に体が反応
### 6. 意識の本当の役割
#### 3つの主要機能
1. **社会対応**:他人との協調行動
(例)空気を読んで発言を調整)
2. **物語作成**:バラバラな情報をストーリー化
(例)夢の内容を後から整合性付ける)
3. **学習支援**:重要な経験を選別
(例)テストの失敗を強く記憶)
### 7. 実生活への活用法
#### (1) 学習のコツ
- **無意識活用**:睡眠前の復習→脳が整理しやすい
- **運動連動**:英単語を書きながら発音→複数感覚で記憶強化
#### (2) ストレス対策
- 「悩みの90%は無意識の自動思考」と理解
- 具体例:試験前の不安→「脳の予測機能が暴走中」と客観視
### 8. 考えるべき問題
- 自由意志は存在する?
- ロボットに意識は必要?
- 脳の操作技術が進んだら人間はどう変わる?
(自分の意見を書くスペース)___________
### 9. 重要キーワード
- 無意識処理
- 神経可塑性
- 予測脳
- ミラーニューロン
- 時間的結合窓
※用語解説:神経可塑性=脳が経験で変化する性質(例:ピアノ練習で手指の領域が拡大)
★POINT★
・意識は「脳の広報部長」
・赤ちゃんの遊びは最高の脳トレ
・「自分らしさ」は無意識の産物
・誤解が生存に役立つという逆説