あらすじ
「その本を見つけてくれなけりゃ、死ぬに死ねないよ」、病床のおばあちゃんに頼まれた一冊を求め奔走した少女の日を描く「さがしもの」。初めて売った古本と思わぬ再会を果たす「旅する本」。持ち主不明の詩集に挟まれた別れの言葉「手紙」など九つの本の物語。無限に広がる書物の宇宙で偶然出会ったことばの魔法はあなたの人生も動かし始める。『この本が、世界に存在することに』改題。
...続きを読む感情タグBEST3
このページにはネタバレを含むレビューが表示されています
Posted by ブクログ
読み終わって、言葉を越えた共感を持つことが出来たときが、読書の楽しみと言うのだろうか。
昨日読みかけた本に、文章について書いてあった。単語というレンガを積み上げたかたち、それが文章である。確かに日本語の文章はそういう構成で出来ている。そして一編の作品はその集合体で出来ている。
無数にある単語の中から作者が選んだ、一つ一つの言葉が好きで、出来上がった文章が好きで、そして一編の物語になった時、それがぴったり合った好きな作品になる。
好きな言葉があり好きな文章になっていて、それを読み終わると何かすっと腑に落ちた気持ちがする、その上作品に溶け込む感じがする。優れた作品からは作者の言いたかった、作品に託した心が、選ばれた言葉のつながりから立ち上って、迫ってくる。
読み終わって言葉を越えた共感を持つことが出来たときが読書の楽しみと言うのだろう。
「さがしもの」はそういった作品だった。
一冊の本が、手に取った人たが手放した(売ってしまった)後、人の手から手に渡り、旅をする話、偶然に、旅先でめぐり合う話、一緒に暮らしていた間本棚にあった本を、別々の箱につめて別れていく話。
本に愛着を持つ人たちの、本に寄せる思いに、自分の特別な本を思い浮かべる、本とともにあった時間を思い出す、それぞれの形が、9編の短編になって結実している。
久し振りに本を読むことを考えさせられた良書だった。
角田さんは、長編を何冊か読んで、どうも世界が合わない気持ちがしていたが、初めて本質に触れることが出来たような気がした。次からは新しい気持ちで作品が読めるだろう。いい本を読んだ。
目次
旅する本
だれか
手紙
彼と私の本棚
不幸の種
引き出しの奥
ミツザワ書店
さがしもの
初バレンタイン
中でも
「旅する本」
日本で売った本と何度か海外の本屋で再会する。
「彼と私の本棚」
年下の彼に好きな人が出来て別れることになった。本の趣味が似ているところもあって二冊あるものもあった。二つに分けて新しい生活が始まった。私は彼と共有した時間を彼も新しい本棚の本の中に見つけつづけるだろう。二人で買った続き物の漫画は、途中で切れたり抜けたりしてしまったけれど。
「ミツザワ書店」
本が出版されたら書店のおばあさんの店に行き、昔盗んだ本の代金を返したいと思っていた。だが
「さがしもの」
入院している祖母が、本を探せといった。どこにもないというと「探し方が甘い」と怒った。遠い街の古本屋にもなかった。おばあちゃんは亡くなったが、幽霊になって催促に来た。大学生になって学生街にある古書店でよばれた気がした、そこに探していた本があった。でももうおばあちゃんは出てこない。読んでみてなぜその本だったのか、わかった気がした。
「初バレンタイン」
初めてバレンタインの贈り物を探した。チョコレート屋では殺気だった人たちに押し出され、考えあぐねて本に決めた。気に入ってもらえるだろうか。心の揺れが瑞々しい。
本が好き、読書が好き、読んで入り込んでいく魔法のような世界が好き。あとがきエッセイにはそういった角田さんの思いが詰まっている。
Posted by ブクログ
手が、震えています。
本と人との繋がりを描いた短編集。
私の話ではないのに、どこかむず痒い気持ちになるような思い出の数々に頁を捲る手が止まらず一気読みしました。
私も幼稚園の頃から一人で本を読むことを好んでいた人間だったので、あとがきで角田さんの話に共感しながら読んでいました。すると突然知っている名前が出てきてびっくり。鳥肌が立ちました。某書店の名前が出てきたからです。最初は私も本が大好きで、本とお客様を繋げる仕事がしたくて――。
私にとっては何気ない職場。でもそこが、誰かにとっての大切な場所だとしたら。
忘れかけていた大切なものを思い出すことができました。
本好きには堪らない作品だと思います。
Posted by ブクログ
旅する本
古本屋の主人
私
古本を売る。
だれか
私
二十四歳。タイの小さな島でマラリアにかかる。
私の恋人
バンガローの主人
医者
手紙
私
私の恋人
彼と私の本棚
私
ハナケン
一番の友達
不幸の種
私
キミちゃん。
近藤みなみ
大学に入っていた番最初に仲良くなった女の子。
恋人
語学のクラスがいっしょだった男の子。大学二年になって振られた。みなみを好きになった。
引き出しの奥
わたし
男好き、やりまん、公衆便所と呼ばれている。しのちゃん。
りっちゃん
上垣
クラスメイトの男の子。
塚田
わたしのアルバイト先の中古CD屋によくくる男の人。
サカイテツヤ
語学のクラスが同じ男の子。
ミツザワ書店
ゆう子
ぼくの恋人。
背中のまあるいおばあさん
ミツザワ書店のおばあさん。
ぼく
文芸雑誌の新人賞を受賞。二十七歳。
ミツザワ書店のおばあさんの孫
さがしもの
私
羊子。
母
美穂子。
おばあちゃん
母の母。
菜穂子
沙知穂
亀山寛子
羊子の友達。
初バレンタイン
中原千絵子
二カ月前に田宮と交際をはじめた。
田宮滋
千絵子の大学の一学年下。
藤咲健二
千絵子の結婚相手。