あらすじ
なぜ彼女は、『枕草子』を書いたのか――。28歳の清少納言は、帝の妃である17歳の中宮定子様に仕え始めた。華やかな宮中の雰囲気になじめずにいたが、定子様に導かれ、その才能を開花させていく。機転をもって知識を披露し、清少納言はやがて、宮中での存在感を強める。しかし幸福なときは長くは続かず、権力を掌握せんとする藤原道長と定子様の政争に巻き込まれて……。清少納言の心ふるわす生涯を描く、珠玉の歴史小説!
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Posted by ブクログ
清少納言が『枕草子』を書くまでのお話。中宮定子に仕えた時から始まり、都を去るまで。
中宮定子に才能を見出され、その時代では少し異端であるが雅な趣を追い求めている姿が描かれていた。
最後の解説まで面白かった。
Posted by ブクログ
清少納言の物語であるが、あ、平安時代の枕草子のアレね、と思って読むと全く違う。解説にかいてある通り、「平安時代のキャリアウーマン小説」と表現するのがぴったりな作品だ。
平安時代という時代の違いこそあれ、主君、中宮に中忠誠を誓った、働く女が、その繁栄と陥落(に近い)の苦しみの中で、どのような気持ちで生きてきたのか。
働く女性にこそ読んでほしい作品である。
私こそ働く女として、行き詰まりを感じているときにこの本を読んだ。
序盤は、あんまり面白くなかったのだが、途中からぐいぐい引き込まれ、最後は少し泣いた。
読む人を選ぶだろうが、私には本当に心に刺さる作品でした。
Posted by ブクログ
オーディブルで聴いた
清少納言のの目を通した物語
同じ冲方丁さんの『月と日の后』はいろんな人物の語りがあったがずっと清少納言目線
定子への思いと枕草子が出来たストーリーがよくわかった
Posted by ブクログ
この作品は清少納言のひとり語りという形で進みます。
最初の夫である橘則光との別れから始まります。
則光の母親が花山天皇の乳母だったために、将来を期待されていたがたった二年で出家するとは思わなかったことでしょう。
彼女は長男を連れて父の清原元輔の元へ戻った彼女。けれども、父である元輔は七十九歳で肥後守になり、彼女とはそれが永遠の別れとなります。仕官をした則光の元へ長男も行ってしまい……。
二十八歳になった時に清少納言は宮中へ、しかも中宮定子に仕えることになります。定子の年齢は十七歳。
若く美しいその華に清少納言はその生涯と一冊の書物を捧げることになるのです。
身分、美しくないわが身への引け目。そうしたことから、宮中は決して清少納言にとって居心地が良い場所ではなく、それを変えてくれたのが、だれでもない最も尊い女性である中宮。
ふさわしくありたいという気持ちが彼女を変えていく。それでも、宮中に恐れを感じる彼女に定子は上質な紙を与えるのです、いつか彼女が描く『枕』のために。
そして、定子の父である藤原道隆の死後、道長と伊周との政局争いに巻き込まれて、定子は髪を切り、清少納言は口さがない人々のうわさ話に疲れ果てて、定子の元から離れてしまい、そこで様々な思い出を書き綴り始まるのです。それはかつて定子が『枕』と呼んだもの、のちの世に『枕草紙』として歴史に残る書物になるのです。
道長と定子との政治的な争いは続き、結果として道長が勝利を収めたかのようにも思えるのですが、その後、定子をモデルにした『源氏物語』を書いていた紫式部を宮中に招いたり、彼女が彰子の漢文を教授したりということを考えると、あくまでも彰子は定子のコピーでしかなかったと思われて、切ないですね。
宮中で多くの人が続きを待ち望んだ『源氏物語』
定子が読み、苦しい生活の中で笑みを浮かべたと言われる『枕草子』
どちらにも価値があり、どちらの妃も辛い日々を送っていたと読み終えたときに思っていました。
この作品では淡々と、静かに語られていく日々が愛おしいと思わせてくれるものでした。だからこそ、歴史に翻弄された一人の女性の生涯が胸を打つのでしょう。
Posted by ブクログ
苦手だった時代小説のイメージを著者である冲方丁「天地明察」で変えられ、読んでみようと手にした一冊。
清少納言「枕草子」の物語であるが、読後の感想としては実に深い物語であった。
読め始めてからは私自身の無知さ故に時代小説特有の言葉遣いや登場人物の名前、相関関係等、やはりとっつきにくさもあり世界観に引き込まれるまでに3日を要した。
清少納言が生きた平安時代中期(藤原氏全盛の時代)に帝位にあった一条天皇とそのきさき中宮定子の愛の物語なくして「枕草子」が誕生する事はなかった事に気づき、定子の人生をかけた愛の物語が本作により深みを与え、一途なまでに定子に仕え、時代に翻弄され続けた清少納言の存在を際立たせている。
私自身、本作ではもっと「枕草子」について深く掘り下げた内容になっているものだと思い込み読み進めたが、あくまでも個人の感想としては時代に翻弄されながらも愛に生きた2人の女性(中宮定子と清少納言)の物語であった。
説明
内容紹介
なぜ彼女は、『枕草子』を書いたのか――。28歳の清少納言は、帝の妃である17歳の中宮定子様に仕え始めた。華やかな宮中の雰囲気になじめずにいたが、定子様に導かれ、その才能を開花させていく。機転をもって知識を披露し、清少納言はやがて、宮中での存在感を強める。しかし幸福なときは長くは続かず、権力を掌握せんとする藤原道長と定子様の政争に巻き込まれて……。清少納言の心ふるわす生涯を描く、珠玉の歴史小説!
内容(「BOOK」データベースより)
なぜ彼女は、『枕草子』を書いたのか―。28歳の清少納言は、帝の妃である17歳の中宮定子様に仕え始めた。華やかな宮中の雰囲気になじめずにいたが、定子様に導かれ、その才能を開花させていく。機転をもって知識を披露し、清少納言はやがて、宮中での存在感を強める。しかし幸福なときは長くは続かず、権力を掌握せんとする藤原道長と定子様の政争に巻き込まれて…。清少納言の心ふるわす生涯を描く、珠玉の歴史小説!
Posted by ブクログ
中宮と清小納言の関係と枕草子誕生までの話。清少納言は気が強そうな才女というイメージだったけど、最初の頃緊張してたなんて意外。添い遂げるような純粋さで仕えたいと思う人がいるなんてすごいなあ。
Posted by ブクログ
清少納言のはなし。
彼女の他の人と違うところは、歌を詠む際に、ふつうは詠まれないような、微妙な、あや、を詠むことであった。誰も面白いとは思わないような、白黒さだかでない、うっすらと、ほのかなもの、花の色の濃淡、そういう例えようもないものに心が引かれるのである。
清少納言が仕えた一条帝の中宮定子様は一条帝の妻であり、恋人であり、おもてなしをする座の主ともなり、ときに舞台の演出を司り、教師として導き、そして、興味を共にする学友として交流する、そういう存在だった。そんな、中宮定子に仕え、また、気に入られた清少納言は、機転の利く歌を詠むことにたけており、中宮もたよりにするのであった。
清少納言は、一乗の法って感じった。法華経こそただひとつの真理であるという考えである。つまり、絶対的な恋愛を信じる、ガンコナ一夫一婦の信仰者ということだ。当時、妾という慣習は普通のことであったにしろ、妻となる方はただ諦めていただけであり、気持ち的には納得はしていなかっただろう。清少納言は、それを平然と口にし、歌にし、態度にもした。
して、信頼する中宮定子から、下賜された真っ白な紙の束に献上のための歌を詠むこととなった。それは、天然痘で他界した夫の子供を身籠っていた清少納言が実家に出産のため里帰りしていたときに作っていった。
清少納言は、ずば抜けた歌才があるわけではなく、漢籍の達人でもない。ただ、機転でもって相手の意表を突くことにかけては、右に出るものはいなかった。ときには、炭櫃の消し炭で相手に返歌するといったように。
そんな中、宮中の政争から、清少納言の仕える中宮定子にかかわる一族が都を追われることとなった。道長が追いやったのだ。清少納言は、道長に荷担したと疑われ、里へかえる。これほどまでに、定子に尽くしてきたのに、嫌疑をかけられ、どうにでもなってしまえ、という思いと、定子様に明るい話を、という思いと、宮中の華やかさへの思いと、がないまぜになり、そんな心境を枕に語ったのだ。それが、都で様々な人の目に触れることになろうとは思いもよらず。
中宮定子は、3人の御子に恵まれたが、三人目が難産で出産後に亡くなる。それを期に清少納言も表舞台から姿を消したが、枕草子だけは永遠と世に残る傑作となった。