あらすじ
恋人の家を訪ねた青年が、海からの風が吹いて初めて鳴る〈鳴鱗琴(メイリンキン)〉について、一晩彼女の弟と語り合う表題作、言葉を失った少女と孤独なドアマンの交流を綴る「ひよこトラック」、思い出に題名をつけるという老人と観光ガイドの少年の話「ガイド」など、静謐で妖しくちょっと奇妙な七編。「今は失われてしまった何か」をずっと見続ける小川洋子の真髄。 ※新潮文庫に掲載の「著者インタビュー」は、電子版には収録しておりません。
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Posted by ブクログ
小川洋子さんの本、大好きなんだけど、きちんと受け止めることができないときに、自分にとってもガッカリするので、読み始めるのに勇気がいるのだが、この短編集はどのお話もそれそのものにもどっぷり浸かれるし、その奥にあるものを手にできそうな感覚がたまらなく良かった。
Posted by ブクログ
短編5つ掌編2つ、184頁。この長さ、気負わず楽しめた。
2006年単行本発行。もう少しで20年経つというのに古さがない。スマホはなくても違和感皆無の小川ワールド。
一人ホテルステイのために数冊持参した中でホテルのカフェエリアで読むのに最適な一冊でした。ゆるゆるとした思考の波に漂いながら読み終えました。
「海」
なさそうでありそうな楽器、鳴鱗琴(メイリンキン)、欲しい。
「風薫るウィーンの旅六日間」
「こんな旅の同行者は嫌だ」が穏やかに描かれている…。
「バタフライ和文タイプ事務所」
本書の個人的No.1。タイプライターってパソコンにはない哀愁を備えているなぁ。ひんやりした感じが良い。小川さんの文字に対するこだわりも見えて面白かった。
「銀色のかぎ針」
「缶入りドロップ」
どちらもほんわかした。
「ひよこトラック」
ひよこが積まれたトラック、虫の抜け殻、ドアマンの男と6歳の女の子。慣れ合わない2人の距離感、お互いを尊重している交流の方法はとても居心地が良さそう。
「ガイド」
ママの仕事を手伝う良い息子。『博士の愛した数式』を思い出しました。
著者へのインタビュー
「誰が書いたかなんてこともだんだん分からなくなって、最後に言葉だけが残る。」(P168)という小川さんの理想、その姿勢、潔さがたまらなく好きです。
『ことり』や『博士の愛した数式』が好きな人にはぜひお勧めしたいです
Posted by ブクログ
不思議な雰囲気の話が続く。
特に気に入ったのは
「銀色のかぎ針」と「ガイド」
特にガイドの題名屋のおじいさん。
名もない出来事や思い出に名前をつけることで、そのことをより鮮明に覚えることができる。
楽しかったり切なかったり辛かったことも、知らない間に通り過ぎて過去になってしまうから。
覚えたいことには名前をつけると、綺麗に思い出の引き出しにしまっておけて、取り出したい時に取り出して浸ることができるんだろうなぁ。
ただの日常でもそれは振り返れば幸せな思い出なのかもしれない。わたしも日常から、幸せを見つけてたくさん覚えていたいな。 おじいさんと少年のやりとりにとても心が温かくなった。