あらすじ
すれ違う子供が泣き出すほどの醜男の、愚直な恋のゆくえ(「甚三郎始末記」)。騙されていると知りながら待ち続ける遊女の哀しき運命(「風を待つ」)。自ら始末をつけるべく散り急ぐ男に、残された妻の覚悟を描く表題作など、心に染み通る5篇。四季の彩り溢れる情景と、男女の一途な愛を細やかに綴る傑作時代小説。解説・大矢博子
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Posted by ブクログ
短編集、とも違うなあ、とある藩のあちこちの、男と女の生き様アンソロジーというか。奥に同じ景色がある粋な設定。
甚三郎始末記/女、ふたり/花散らせる風に/風を待つ/もう一枝あれかし
柚香下川、槙野川の流れるとある小藩、小舞藩、これ架空なんだろうけれど、読み終える頃にはこの藩の景色がなんとなく見える。季節の移ろいも、ひとの暮らしも。それぞれの短編の人間関係はつながってないんだけども、おなじ藩のおなじ時代の出来事で、こういう設定の短編はありそうでなかった。視点は侍であったり武家の妻であったり女郎であったり。立場さまざまで男と女が思いを抱え。ラストの「もう一枝~」は肉付けすれば映画になりそう。秘めたる思いが胸打つストーリー。
光景描写が細やかで、せつなく美しい景色が見える一冊、でした。◎。