あらすじ
十五世紀末イタリア。群立する都市国家を統一し、自らの王国とする野望を抱いた一人の若者がいた。その名はチェーザレ・ボルジア。法王の庶子として教会勢力を操り、政略結婚によって得たフランス王の援助を背景に、ヨーロッパを騒乱の渦に巻き込んだ。目的のためなら手段を選ばず、ルネサンス期を生き急ぐように駆け抜けた青春は、いかなる結末をみたのか。塩野文学初期の傑作。 ※当電子版は新潮文庫『チェーザレ・ボルジアあるいは優雅なる冷酷』を元に制作しています。地図・年表なども含みます。
...続きを読む感情タグBEST3
このページにはネタバレを含むレビューが表示されています
Posted by ブクログ
ルネサンス期の武将、チェーザレ・ボルジアを主人公とする歴史小説。
序章のチェーザレの剣のくだり、チェーザレとダ・ヴィンチとの出会いのシーン、そしてダ・ヴィンチのデッサンと一緒に発見されたマントのエピソードなど、極力抑えた筆致の中から、それでも情感が零れ落ちるような名文が多い。
大長編でもハッピーエンドでもないけれど、贅沢な読書を堪能できる豊かな小説。
Posted by ブクログ
小説ですが、歴史書を読破したような濃密な体験でした。敵だか味方だかナポリだかミラノだかこんがらがりつつ(あほ)次の展開が気になって、どんどん読み進めてしまった。チェーザレとレオナルドダヴィンチの共通点について触れた一節が、とても印象に残りました。
『彼らは、自己の感覚に合わないものは、そして自己が必要としないものは絶対に受け入れない。この自己を絶対視する精神は、完全な自由に通ずる。宗教からも、倫理道徳からも、彼らは自由である。ただ、窮極的にはニヒリズムに通ずるこの精神を、その極限で維持し、しかも、積極的に生きていくためには、強烈な意志の力を持たねばならない。二人にはそれがあった。』
チェーザレの魅力は、この意志の強さにあるんだろうな。ただ、チェーザレ・ボルジアのような強靭な意志の持ち主でさえ、人生をコントロールすることはできなかった。意志の力の前に立ちふがる何かを、運命と呼ぶのだろうか。意志の力で道を切り拓く人間の強さと、運命に翻弄される人間の脆さが同時に描かれていると感じました。
Posted by ブクログ
チェーザレ・ボルジア。目的のためには手段を択ばない。非常で残酷なことも厭わない。
武将であるが、実際の戦闘は少ないように思う。戦闘の前に戦いを決している。
自前の軍隊を持たないところから始まり、わずかの期間でイタリアの中央部を支配した。あと何年かあればイタリアの多くを手にしたに違いない。あるいは、さらに領土を広げたかもしれない。
父の死とともに一気に凋落する。あっけないほどの逆転。最期が謀略によるものではなく、戦死であったところが救いのように感じる。
Posted by ブクログ
中世ヨーロッパ(イタリア)の織田信長みたいな人。領主の家系でもないのにかかわらず、父であるローマ法王の後ろ盾を最大限活かして中部イタリアを制覇するも、イタリア統一という志半ばにして不幸にもマラリア(?)に罹患し、そのために父法王が死去するとともに自分もしばらく病床に伏したために抵抗勢力の激しい反撃を受けて無念のうちに短い一生を終わることになるチェーザレ・ボルジア。日本で知っている人はほとんどいないと思われるが、西欧ではどうなのだろう?カトリック的にはカトリックの敵(父が法王だが、法王が死去した後は反ボルジアが法王となったためカトリックの敵になった)として扱われているようなので、否定的な評価が多いようだが、塩野七生は肯定的に描いている。時代と地域によって人の評価は変わるので、一面的な判断はできないが、中世ヨーロッパの信長と言うのが最も適していると感じた。