あらすじ
日本は世界に誇るべき「近代文明」を有しているのに、なぜ永遠に“敗戦国”のままなのか? ――それは、国際政治の掟(ルール)を形づくる「本当の世界史」を知らなさすぎるからだ。本書は新進気鋭の憲政史家が、古代ヨーロッパから十字軍、ウェストファリア体制、反近代の衝動、第一次・第二次世界大戦の「総力戦」の真相をひもときつつ、日本人に「世界史観」を根本から改める覚悟を迫った一冊。「戦争はなくせないとの思想が『文明』をもたらした」「ヨーロッパ公法にすぎない国際法の実態」「アメリカは国際法を理解できない」「聖戦論に回帰した第一次世界大戦」「終戦記念日はアメリカの総力戦開始の日」――“歴史の本質”が武器であり、支配の道具である事実を説いた、学校では絶対に教えられない「世界史」講義。日本はなぜ、敗戦国の立場を自ら強化し続けるのか? 正しい歴史認識こそ最大の武器である! 『歴史問題は解決しない』を改題。
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外交の武器としての歴史
・歴史問題の解決とは、もう一度戦争に勝たなければ解決できないほどの難題である。
では、歴史とは何か。外交の武器であり、支配の道具なのだ。
「正しい歴史を知っているということは、それだけでその人間を殺す十分な理由になる」
という価値観で諸外国は動いている。
・参政権とは、戦争に参加した義務の見返りである。
婦人参政権が、第一次世界大戦後、各地で実現したのは、
兵器と戦術の発達により、前線と銃後の区別が曖昧になったからである。
戦争は民主制を促進する。そして、民主制は戦争を残酷にする。
民衆の憎悪は、相手の抹殺へと国家を駆り立てる。
民主政体により選出された政治家が、適度な和平など言い出せば即刻落選である。
それゆえ、戦争はますます激化する。
・ヤクザはなぜ仁義を守るのか。
報復の口実にされるのを恐れるからである。
「仁義を破った者」と「国際法を破った国」は同じであり、弱いと思われれば報復される。
逆を言えば、破っても強いと思われれば報復されない。
国際法が法で有り得るのは、軍事力による抑止力のためである。
・国際社会において何物の支配にも属さない主権国家であると証明する資格は、軍事力のみである。
(アレクサンダー・ハミルトン「弱いために侮られる国家は、中立という特権を失う」)
軍事力は外交力の源である。そして、軍事力の源は経済力である。
言わば、鉄と金と紙である。
この三つの総合力が国力であり、国として自立できる力のある者だけが国際社会で生きていける。
それが国際法の適用される国際社会である。
・歴史問題の解決に特効薬はない。
鉄(軍事力)と金(経済力)を蓄える努力は政府が中心になって行わなければならない。
一方、紙(文化力)は国民全体の問題である。
特に、我が国は一部の指導者だけに任せるのではなく、
国民全体の文化力が高かったからこそ、自分の足で立って生きてこられたのである。ここ最近の70年を除いて。