【感想・ネタバレ】カエアンの聖衣〔新訳版〕のレビュー

あらすじ

服は人なり、という衣装哲学を具現したカエアン製の衣装は、敵対しているザイオード人らをも魅了し、高額で闇取引されていた。衣装を満載したカエアンの宇宙船が難破したという情報をつかんだザイオードの密貿易業者の一団は衣装奪取に向かう。しかし、彼らが回収した衣装には、想像を超える能力を秘めたスーツが含まれていた……後世のクリエイターに多くの影響を遺した英SF界の奇才による傑作の新訳版。星雲賞受賞作。解説/中島かずき

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Posted by ブクログ

ネタバレ

人類が宇宙の星々へ飛び出し、新たな文明を切り開いた時代の話。カアエン人という服飾文化を奉る人々がいた。彼らの存在を異端および脅威とみなしたザイオード星団の人間は、カエアン人を仮想敵とみなし、弱点を探るべく調査団を送る。そのいっぽうで、高価格で闇取引されるカエアン製の衣装を密輸するザイオード人の悪党。彼らの陰謀に巻き込まれ、さらにカエアン製の衣装の秘密にせまることになるひとりの「服飾家」。

衣装が人を操るという発想だけでも面白いのに、さらに踏み込んで衣装の材料となるとある植物に知性があって、彼らが人類の制覇を狙っているという設定がぶっ飛びすぎている。

アイデアの面白さはそれだけではない。カエアン製の衣装を満載した船が墜落したという惑星は「インフラソニック」恐竜(強力な低周波で敵を粉砕する)がいるため、専用の防護服が必要だとか、一生をロボットスーツの中で過ごし、ロボットのボディを本物の体だと認識するソヴィヤ人、彼らの敵として登場する、肉体を改造してサイボーグ化することで宇宙に適応した種族。他にも使い捨ての面白すぎる小ネタ満載で、湯水のようにネタを使い捨てにしながら力強く本筋が展開してゆく。この手の小説を「ワイドスクリーン・バロック」と呼ぶという。

アイデアの展開が主眼になっているせいか、キャラクターはあまり作りこまれていない。主役級の服飾家ペデルにしても、社会学者のアマラにしても、話をすすめるための駒のような扱いだ。あたかもフラショナール・スーツに操られた人々のように。
かろうじて人間臭さがにじみ出ているキャラクターといえば、悪党の頭のマストと、これはある意味皮肉かもしれないが、ロボットスーツの肉体を持つソヴィヤ人のアレクセイぐらいだったりする。

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2016年08月28日

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