【感想・ネタバレ】はじめての福島学のレビュー

あらすじ

「福島難しい・面倒くさい」になってしまったあなたへ─ 福島第一原発事故から4年経つ今も、メディアでは放射線の問題ばかりがクローズアップされている。しかし、福島の現実は今どうなっているのか、そして、福島の何を今語るべきなのか? 『「フクシマ」論』で鮮烈な論壇デビューをはたした社会学者・開沼博が、福島問題を単著で4年ぶりに書き下ろし。人口、農林水産業、観光業、復興政策、雇用、家族、避難指示区域……。福島を通して、日本が抱える「地方」問題をもえぐりだした一冊。

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Posted by ブクログ

ネタバレ

震災当時に福島の原発をめぐる中央と地方の権力構造をテーマにした論文を書籍化して以後、ずっと福島に関する質的・量的研究を続ける社会学者の著者による福島の現実を知るための「福島学」の本棚。

400ページ以上ありながら、大変読みやすい語り口で、手頃な値段で、一般向けに書かれています。

震災からわずか4年にも関わらず、精力的に、実直に福島の問題に向き合いながら、極端な議論や炎上に巻き込まれることなく、多くの知見を提示してこられた著者の研究成果に、まず率直に敬意の念を抱きました。

震災以後、多くのメディアに露出し、正しい理解を求めてきた姿勢がとてもよく伺えるとともに、著者自身、多くの厄介な人たちに散々絡まれてきて、ときには言われもないひどい言葉も投げられたんだろうと思います。

社会学者には、社会を斜に構えてみたり、アウトロー的な面白い視点で語る一方で、どこか浮き世離れしていたり、机上の論理だけで語る者も多いが、著者は地に足を着けた実直な語りを行っています。

著者の問題意識は、まさに福島のこととなるとすぐに過熱しがちになってしまう雰囲気、そして結局「面倒くさい」になってしまい、正しい現実の福島とイメージで語られる福島のギャップが埋まらないことにあるかと思います。

まず、冷静かつハイコンテクストにならない議論を進められるよう、データをみて、福島をビッグワードとの関連だけで片付けない。

福島の特殊性の問題と、一地方の普遍的な問題、その両方の問題を切り分ける。

そうしたことが、そもそも議論をするための前提である、ということが本書から分かります。

本書で語られることは、あくまでもその前提にたどり着くところまでで、実際にどのような手段をもって、今後の福島と付き合っていくかはあまり語られていません。

そのあたり、さまざまな地域のコミュニティデザインや、振興策といった過去事例のあるなかで、福島なりの地域性を活かした進め方をどのようにされるのか、といったところを、今後の活動に期待したいと思っています。

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2015年05月26日

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