あらすじ
フランスの暴政を嫌って渡英した亡命貴族のチャールズ・ダーネイ、人生に絶望した放蕩無頼の弁護士シドニー・カートン。二人の青年はともに、無実の罪で長年バスティーユに投獄されていたマネット医師の娘ルーシーに思いを寄せる。折りしも、パリでは革命の炎が燃え上がろうとしていた。時代の荒波に翻弄される三人の運命やいかに? 壮大な歴史ロマン、永遠の名作を新訳で贈る。
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Posted by ブクログ
私の最も好きな物語、今後更新されるとしても3番以内に君臨し続けること請け負いの作品である。
ミステリー小説の原点とも言われる『月長石』を書いたウィルキー・コリンズと実は仲が良かったというのは、後からロンドン旅行でチャールズ・ディケンズ博物館(ディケンズの生家)を訪れた際に知ったのだが、ディケンズもまたミステリーの伏線を張るのが得意なようだ。
本作はミステリーの要素(伏線の要素)、つまり、マネット医師がバスティーユ牢獄に囚われていて記憶が朦朧としているという設定、ダーネイがフランスから亡命してきた元貴族であるという設定、カートンとダーネイが異国人であるにも関わらず瓜二つであるという設定、カートンがルーシーに振られながらも一生の献身を誓う設定、どれもが最後の美しく悲しい結末に必要不可欠な要素だった。
舞台設定が1789年よりちょっと手前から始まっているのがまた良い。というのも、物語の途中になって1789年(フランス革命)に差しかかることで物語の流れを簡単に変える起爆剤にできる。
マネット医師は健全な市民でありながら王党派(国・貴族)の敵として被害を受けたが、フランス革命後は健全な元貴族ダーネイがマネット医師と立場逆転となる構造も美しい。
自分の娘の夫となったダーネイを救おうと尽力したのに、かつての自分が獄中で書いた手記がダーネイの処刑を決定づけるという残酷な展開もとんでもない。
カートンと同じ状況で、カートンと同じ行動を起こす人間が果たして存在するだろうか。
自分の愛した女性が、すでに人妻になっており、一生自分のものにならないことはわかってる。自分は死んでしまうからみんなが自分に感謝し、悲しんでくれるシーンは見ることができない。そもそも自分は全く関係のない罪でギロチン処刑されるという事実に耐えられるだろうか?どれだけ愛した女性でも、命と引き換えにそれを証明できる人間がいるだろうか?
カートンがダメ人間であるという描写が多いがゆえに、最後のカートンのこの美徳が輝く。
今でも覚えているが、初めて『二都物語』を読んでいた私は終盤の終盤まで結末を予想できず、カートンがダーネイと衣服交換するあたりでようやく事態を理解し、混乱と感動が許容量をオーバーし、涙が溢れた。
そして今回、再読した私は結末を知っているが故に、カートンの一挙手一投足が愛おしく思え、カートンがパリにやってきたあたりからもう泣きそうだった。結末を知っていても涙を抑えられなかった。
Posted by ブクログ
フランス革命前夜から革命に至るまでの人間ドラマを描いたディケンズの感動巨篇。フランス・パリとイギリス・ロンドンの二都を舞台として、バスティーユから釈放された老医師の家族を中心に物語が進んでいく
フランスへのスパイ行為で告発された青年ダーネイと、人生に絶望した無頼の弁護士カートンが、医師の娘ルーシーに恋心を寄せていく
結局ダーネイがルーシーと結婚し、暫しの間ソーホーのこだまが響く家で幸せな生活を送る
しかしフランス革命が起き、物語は急速に展開していく…
中盤の、精気を取り戻したマネット医師がルーシーを愛し幸せに暮らしているところや、「家族の親愛なる友人」であるローリー氏と家族の絡みなど、心温まる描写が多かった。
一方で、ダーネイ裁判の弁護士であったストライヴァー氏の同僚・カートンが、これまでの落ちぶれた人生から再起するための「魂がすがりつく最後の夢」であったルーシーに自らの胸の内をさらけ出し、ルーシー家族のために全てを捧げると誓うシーンなどは大変心動かされた
終盤、どうしようもなくなったかのように思えた中での「彼」の行動はとてつもなく感動した
登場人物それぞれがそれぞれの信念・想いをもって真剣に自らの人生を生きているところが、「最良の時代であり、最悪の時代」でもあった当時の状況を思わされ、私の人生にもある種の活気が与えられたような気がする
Posted by ブクログ
こういう作風に慣れていないので、ハマるまで時間がかかったが、ハマってからははらはらしながら読んだ。
フランス革命時のパリ市民の様子は授業ではよくわからなかったが、こんな感じの印象だったんだなぁ、と歴史の勉強もできた気がする笑
まさかダーネイとカートンの顔が似てることが最後の最後でそうなるとは…!!
カートンが全部持ってった……
自らの死と引き換えに永遠に愛する者の中で生き続けることを選んだんたね……!
自己犠牲の愛を貫いて、聖書の一節のように彼は永遠の命を得たんだろう。
Posted by ブクログ
古典読書。タイトル以外は予備知識なしで読み始めた。ロンドンとパリを舞台にした歴史小説で、本人の言葉からは歴史考証もこだわったと思われる。フランス革命が起こったときの実際の雰囲気を味わえる。教科書ではただの暗記になることも小説で読むと登場人物に寄り添った疑似体験になるため今までとは違った視点を得られた。ただ前半散りばめられた登場人物の経歴が終盤に次々ときれいにハマっていくミステリ的な要素が強いので、純粋な歴史小説とは言えない面もある。ただそれがドラマチックな展開を引き出しているので、本書はフィクションとノンフィクションどちらの側面でも読み応えのあるものになっている。