あらすじ
本も結婚します。出産だって、します。小学四年生の夏、土井博は祖父母の住む深井家の屋敷に預けられた。ある晩、博は祖父・與次郎の定めた掟「書物の位置を変えるべからず」を破ってしまう。すると翌朝、信じられない光景が――。長じて一児の父となった博は、亡き祖父の日記から一族の歴史を遡ってゆく。そこに隠されていたのは、時代を超えた〈秘密〉だった。仰天必至の長編小説!
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Posted by ブクログ
これは…なんと言ったらいいのだろう。
たぶんタイトルを見てなんらかの物語を想像したとしても、多分違っています。
本に雄と雌があって、増殖していく話ではあるけれど、それがメインじゃないんだな。
語り手の祖父・與次郎が繰り広げる怒涛の大阪弁。
嘘か真かやっぱりデタラメか!?
最後まで読めば、本好きの人だったらうっとりするか涙をこぼすかはわからないけど、きっと心を動かされるはず。
でもだけど、前半部分が冗漫なのが、もう辛い。
必要なのはわかる。
後半の感動の種は、ダジャレと駄法螺と繰り返しの中にしっかりと埋め込まれているのだから。
でも、辛いんだなあ、読んでいて。
次回はぜひ、テンポとリズムの良い文章をお願いします。
ボケの連続でツッコミがないと、脳内で私がツッコんでいかないといけないので疲れるのよ。
“「申し遅れました。プロペラさんこと亀山金吾の悪友、深井與次郎と申します」
「深いよ、次郎?」
「浅いよ、太郎。いや、そこで切るんやないんです」”
ほら、合いの手があった方が読みやすい。
“本いうんはな、読めば読むほど知らんことが増えていくんや。どいつもこいつもおのれの脳味噌を肥やそう思て知識を喰らうんやろうけど、ほんまは書物のほうが人間の脳味噌を喰らうんや。いや、脳味噌だけやないで、魂ごと喰らうんや。”
本好き、読書好きなら「わからうわかる」とうなづくエピソード満載のこの本は、実は夫婦の愛の物語であり、一族の謎(もしかしたら本によって仕掛けられた呪い?)に充ちた歴史なのだ。
散々文句も書いたけれど、私は面白く読みました。
“たった一行の文章を書くのでも、たった一つの言葉を選ぶのでも、それを裏から支えるなんらかの精神がなければならない。いっさいの言葉はなんらかの形で書き記す者の精神に根を張っていなければならない。それを積み重ねて、ようやく一冊の本ができあがるのだ。”
ところで我が家の本は雄も雌もなくて、無性生殖をしているらしい。
だって同じ本がいつの間にか家のあっちとこっちにあったりするもの。
たぶん細胞分裂で増えているんだね。
そんなことがこの本によって科学的に証明されて、よかったよかった。